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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第二章『ロックバンド、セルト大森林でライブをする』

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十九曲目『襲撃』

「__な、なんだ!?」


 集落中に響き渡るカンッカンッとした鐘の音。これは、もしかして……警鐘か?

 それにさっきの咆哮は、聞き覚えがある。


「何事じゃ!」


 慌ただしく動き回るエルフ族の一人に険しい顔をしたユグドさんが声をかける。すると、そのエルフ族は慌てながら答えた。


「も、モンスターの襲撃です! おそらく、クリムフォーレルです!」

「なッ!? まさか……ッ!」


 クリムフォーレル。真紅の外殻に包まれたドラゴン……それは、俺たちがこの森に入る前に襲われたモンスターだ。それが今、このエルフ族の集落を襲ってきている。

 そこで、エルフ族の女性が息を切らしながら近寄ってきた。


「た、大変です! 子供たちが……子供たちがドラゴンに!」


 瞬間、俺は走り出した。その後をやよいたちが追いかけてくる。

 走りながら魔装を展開し、剣を握る。子供たちがいつもいる遊び場は、集落の中央広場から少し離れたところ。

 逃げてくるエルフ族とは逆方向に走っていくと、徐々に悲鳴と咆哮が近くなってくる。

 そして、ようやくその場所にたどり着いた。


「__グルォォォォォォォォォォ!」


 空中をホバリングし、雄叫びを上げるクリムフォーレル。その下には、恐怖でその場で尻餅を着いている子供と、空に向かって魔法を放っている大人のエルフ族の姿があった。


「ひ、ひぃ!」


 怯えている女の子に向かって、クリムフォーレルが急降下していた。それを見た俺は、反射的に飛び込んだ。


「<アレグロ!>」


 魔法を唱えて走る速度を急激に上げ、そのまま女の子を抱きしめて地面を転がった。

 その直後、クリムフォーレルの両足がさっきまで女の子がいた場所を踏み砕く。

 爆音を後ろに感じながら、足を地面に着けてブレーキをかける。どうにか女の子を助けることが出来た。


「__大丈夫か?」


 声をかけると、女の子は安心したのか涙をポロポロとこぼしながら何度も頷いていた。怪我もなさそうだ。

 女の子を下ろしてから、すぐに近くにいたエルフ族の男性を呼んだ。


「この子をお願いします!」

「あ、あぁ、分かった!」


 エルフ族の男性が女の子を保護したのを確認してから、空中を飛び回っているクリムフォーレルに向かって剣を構える。


「やよい! お前は子供たちの救助! ウォレスは怪我している人を運び出せ!」

「うん! みんな、こっちだよ!」

「オッケー! ヘイ、大丈夫か!? 動けるか!?」


 まず最初にやよいとウォレスに指示を出し、子供と怪我人をこの場から離れさせた。


「真紅郎! 空中にいるあいつに攻撃してくれ! 俺とサクヤは真紅郎の援護だ!」

「やってみる!」

「……うん」


 真紅郎はベース型の魔装を構え、銃口があるネックの先端をクリムフォーレルに向ける。サクヤは頷き、俺の隣で拳を握りしめた。


「きゅ! きゅきゅ!」

「キュウちゃんは子供たちと一緒にいるんだ! 少しでも元気づけてやってくれ!」

「きゅー!」


 この場でキュウちゃんが出来ることはない。だったら、怯えている子供たちと安全な場所にいて貰った方がいいだろう。

 全員に指示を出し終わると、上空を飛んでいたクリムフォーレルが口から炎を吐き出してきた。


「『我放つは龍神の一撃』__『アクア・スラッシュ』!」


 その炎に向かってエルフ族は手から水を放ち、水と炎がぶつかり合うと爆発して相殺される。

 熱された水蒸気を肌で感じていると、真紅郎が弦を弾き鳴らして魔力弾を射出した。

 放たれた魔力弾は真上を飛ぶクリムフォーレルに向かっていくけど、ヒラリと身を翻して避けられてしまった。


「やっぱり遠い……ッ!」


 顔をしかめながら呟いた真紅郎は、諦めずに何発も魔力弾を放った。

 だけどクリムフォーレルに全然当たらない。射程距離が離れすぎてるせいか、狙いが定まっていなかった。

 どうするか。チラッと周囲を見渡せば、とりあえず子供や怪我人の姿はない。だけど、ここで戦いを続けるのは得策じゃないな。

 少しでも集落から遠ざからないと。

 

「真紅郎! お前は射撃を続けろ! 当たらなくてもいい、とにかくあいつの気を引いてくれ!」

「__うん、分かったよ!」

「サクヤ! どうにかしてあいつをこの場から遠ざけるぞ!」

「……了解」


 返事をした真紅郎は魔力弾を放ち続ける。避けるクリムフォーレルは、いい加減煩わしくなってきたのか咆哮し、真紅郎に向かって急降下してきた。

 そこを狙ったサクヤが、木を蹴って跳び上がる。


「__てあッ!」


 空中で拳に魔力を纏わせたサクヤは、気合いと共にクリムフォーレルに殴りかかった。

 サクヤの拳はクリムフォーレルの横っ面にぶつかり、鈍い音が響く。

 殴られ、少しだけ動きを止めたクリムフォーレルだったが、すぐにまだ空中にいるサクヤを噛み砕こうと口を大きく開いていた。

 サクヤが噛み砕かれる前に、真紅郎は正確にその大きく開いた口に魔力弾を曲げて撃ち込む。


「__グルゥオウ!?」


 口の中で魔力が爆発し、クリムフォーレルが仰け反った。チャンスだ!


「__サクヤ!」


 俺も同じように木を蹴り、跳び上がりながらサクヤの名前を叫ぶ。視線が合い、アイコンタクトで俺の考えを察したサクヤは小さく頷いた。

 空中で身を翻し、右足を振り上げる。その振り上げた右足に、サクヤは上手く着地した。


「行けぇぇぇぇ!」


 叫び、オーバーヘッドで思い切り右足を振り抜く。同時に俺の右足を踏み台にしたサクヤは、勢いよくクリムフォーレルに向かうと右腕を振りかぶった。

 サクヤはいつもの眠そうな目をつり上がらせ、右拳に音属性の魔力を纏わせた一撃を仰け反っているクリムフォーレルの腹部に打ち込んだ。


「__グルゥ!?」


 強力な音の衝撃波を受けたクリムフォーレルは苦悶の表情を浮かべながら吹き飛び、集落の外に出た。

 よし、このままもっと集落から離れさせよう。


「タケル!」

「ヘイ! こっちは避難完了だぜ!」


 ここで子供と怪我人たちを避難させ終わったやよいとウォレスが合流した。


「どうにかしてもっと集落から離れさせるぞ!」


 俺の指示に全員同時に返事をする。

 今の俺たちは、最初にあいつに追いかけ回された時とは違う。魔力は充分に残ってるし、体力も問題ない。

 だけど俺たちの実力じゃ、あいつを倒すことは難しいだろう。だったら、どうにか撃退するしかない。

 俺たちはクリムフォーレルが吹き飛んでいった方向に向かって走り出した。


「__グルゥオォォォォォォォォ!」


 クリムフォーレルは口から炎を漏らしながら吼える。その表情は外殻と同じく真紅に燃え上がった怒りのものだった。

 翼を羽ばたかせ、突風を巻き起こしながらクリムフォーレルは俺たちに向かって突撃してくる。その巨体からは考えられないほど、速い。


「__散開!」


 すぐに俺たちはバラバラに移動して避ける。通り過ぎていくクリムフォーレルはすぐに旋回し、次は口から炎を吐こうとしていた。


「オレに任せろぉぉぉぉ!」


 そこでウォレスは大声で叫ぶと、おもむろに近くに生えていた木に抱きつく。何をするつもりなのか、と思っているとウォレスは「ぐ、お、おぉぉぉぉぉぉ!」と必死な形相で雄叫びを上げていた。


「<エネルジコ!>__んんん、マッスルぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 筋力強化の魔法を唱えたウォレスは、勢いよく木を引っこ抜いた。

 

「って、えぇ!? ひ、引っこ抜いたぁ!?」


 いきなりのウォレスの奇行に驚いていると、ウォレスは引っこ抜いた勢いのまま体を半回転させ、遠心力を使ってその木をクリムフォーレルに向かって投げつけた。

 同時に、クリムフォーレルから炎が吐き出される。炎により木は燃やされ、当たることはなかったけど炎を防ぐことが出来た。


「ハッハッハァ! どうよオレの筋肉(マッスル)!」


 自慢するように自身の腕を叩くウォレス。魔法で強化されているとは言え、まさか生えている木を引っこ抜いてそのまま投げるとは……。

 呆れていいやら誉めていいやら迷っていると、ボソッとやよいが呟いた。


「……木を斬ってから投げればよかったんじゃない?」


 ウォレスがピタリと動きを止める。

 頑張って木を引っこ抜かなくても、そっちの方がたしかに簡単だよな。


「……ハッハッハ! おら、来るぞ!」


 強引に誤魔化しやがった。

 いや、もう気にしないでおこう。それよりもクリムフォーレルをどうにかしないと。

 でも、どうする? このままじゃ撃退するのも難しい。空中にいるから攻撃が届かないし、決定打に欠ける。

 どうすればいいか頭を働かせていると、クリムフォーレルの体にどこからか飛んできた矢が当たった。


「ど、どこから……?」


 矢が飛んできた方に顔を向ける。そこは、ケンタウロス族の領域の方向だ。気付けば俺たちは境界線となる川の近くまで来ていたらしい。

 川の向こう側にはケンさんとタウさん、ロスさん……他にも数名のケンタウロス族の姿があった。

 


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