『サクヤ』
頭が、ぼんやりする。
今、ぼくは何をしてるんだろう?
眩しい光に照らされ、ベッドに寝かされている。手足を動かそうとしても、何かに縛られてるみたいだ。
「人造英雄計画、実験体ナンバー398。人工魔臓器の移植手術から今日で七日目。依然として拒絶反応なし」
ボーッと天井を見上げていると、声が聞こえた。
体に力が入らず、どうにか首を動かして周りを見てみると、白衣を着た人たちがぼくを取り囲むように見つめている。
その中の一人が今、ぼくの名前を呼んでいた。実験体ナンバー398、って。
あれ? 本当にそれが、ぼくの名前?
「二回目の適合確認実験を始める。強制魔力注入装置、起動」
周りの人たちが、ぼくの腕や体に何かを貼り付けてきた。
ちょっと冷たい。今から何をするんだろう?
「魔力充填完了。実験体が暴走する可能性があるので、気を付けたまえ。この二回目の実験が成功すれば、人工魔臓器から音属性の魔力反応があるはずだ」
あ、思い出した。この人、ドクターって呼ばれてる人だ。
たしか、ぼくがここに来た時に出迎えてくれた人のはず。ぼくがここに来てから、どのぐらい経ったんだろう。
あれ、そういえば前にもこんなことをした気がする。
あの時は__ッ!
「魔力注入、開始」
そうだ、思い出した、ダメだ、あの時もすごくすごく痛くて苦しくて血が出るぐらい叫んだはず。
お願い、やめて、いい子にするから、お願いしま__ッ!?
「__ああぁあぁあぁあぁぁァァァアァアァァァァッ!」
熱い、熱い熱いあついイタイイタイいたい苦シイクル、シイ__ッ!
「ふむ、魔力をさらに増やせ。さらに暴れるだろうが、拘束具の強度を上げているから壊れることはないだろう。だが、一応は注意するんだ」
アツイ、イタイ、クルシイ、ヤメテ__ッ!
「並のモンスターなら簡単に捕まえられるほどの拘束具だというのに……まったく、さすがはダークエルフ族と言ったところか」
逃げたい、逃げたいのに逃げられない。助けて、助けて助けて。
熱くて、痛くて、苦しい。
喉が裂けて血が出てる、息が出来ない、お願い、もうやめて。
「……む、音属性の魔力反応! いいぞ、もっと魔力を注入するんだ!」
__バチン。
頭の奥で、音がした。
もう、何も、考えられない。熱さも、痛いのも、苦しいのも、どこかに行っちゃった。
ぼくの中で、何かが、壊れた?
「よし、よし! とうとう成功だ! 新たな英雄の誕生だ!」
声が、遠く聞こえる。
何を言ってるのか、わからない。
誰か、助けて。
お父さん、お母さん……。
__バチン。
「おめでとう、ナンバー398。キミは、人造英雄計画の最初の成功事例だよ」
……誰かが、何か言ってる。よく、分かんない。でも、嬉しそう。
……さっき、何か考えてた気がする。オトウサン、オカアサン?
……思い出せないから、いいか。
明けましておめでとうございます。長らくお待たせしました。本日より、投稿を再開します。
今回より、サクヤ編開始です。サクヤ視点で進むので、ご了承下さい。




