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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第二章『ロックバンド、セルト大森林でライブをする』

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一曲目『最終手段』

 マーゼナル王国から逃げ出した俺たちは、隣国<ヤークト商業国>に向かっていた。

 王国からの追っ手は今のところないけど、いつ来るか分からないから少しでも距離を稼ごうと歩き続けて早二時間。

 日没にはまだ早いけど、そろそろ野営する所を決めようと探している最中、俺は呟いた。

 

「それにしても、その見た目で六十歳(・・・)って……詐欺だよなぁ」 


 新しく俺たちの仲間入りした、何を考えているのか分かり辛いほど表情の変化が乏しく、どこか眠そうな半開きの目が特徴の白髪褐色肌の少年__サクヤ。

 見た目は少年のサクヤだけど、その実年齢はまさかの六十歳。それを聞いた時は愕然としたものだ。

 俺の独り言が聞こえたのか、サクヤは顔をこちらに向けて口を開く。


「……騙してない、本当」

「いや、疑ってる訳じゃないんだけどさ。どうにもなぁ……」


 サクヤは「信じてないの?」と言わんばかりに、非常に分かり辛いけどムッとした表情を浮かべる。

 別にサクヤが嘘を吐いているとは思ってない。だけど、この見た目で六十歳っていうのがどうにも違和感なだけだ。

 そこで真紅郎が苦笑しながら会話に入ってきた。


「でも年齢はボクたちよりも上だけど、話してる感じは見た目相応だよ? そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな」

「ハッハッハ! そうだぜ、タケル! 細かいことはいいんだよ! それにしても、<ダークエルフ(・・・・・・)>なんてのがいるなんてな! さすがはファンタジーだぜ!」


 話に入ってきたウォレスが言う<ダークエルフ>は、サクヤの種族のことだ。

 エルフ、と言えば俺たちの世界でもよく知られている長命の架空種族だけど、この世界には本当にいるらしい。

 エルフとダークエルフの違いは肌の色ぐらいで……エルフは色白、ダークエルフは褐色のようだ。俺たちの世界で言う、白人と黒人みたいなものか。

 マーゼナル王国では俺たちみたいな人間しかいなかったからな。もしかしたら、エルフやダークエルフ以外にも多くの種族がいるのかもしれない……個人的には人魚とかに会いたいなぁ。


「……タケル、今変なこと考えなかった?」

「べ、別に考えてないって……」


 俺の思考を読んだのかやよいがジトッとした目で見てくる。ど、どうして分かったんだ?

 訝しげに見つめてくるやよいの視線から逃れるために話を変えよう。


「よ、夜になる前に野営するところを決めようぜ! な、真紅郎!」

「ふふ、そうだね。えっと、ちょっと待ってね」


 真紅郎は小さく笑いながら地図を取り出して考え込むと、ある方向を指さした。


「あっちの方に湖があるみたいだけど、そこにする?」

「お! いいじゃねぇか! 湖で釣り(フィッシング)しようぜ!」

「あたしも賛成。水浴びしたいし……タケル、覗いたら殺すよ?」

「覗くわけねぇだろ……俺も賛成だな。サクヤはどうだ?」

「……どこでもいい。お腹、空いた」


 真紅郎の提案に乗った俺たちは、湖がある方向に向かうことにした。

 歩いている途中、森があるのに気付いた俺は真紅郎に声をかける。


「なぁ、あの森を抜けた方が湖に近いんじゃないか?」

「……いや、やめた方がいいかも。地図で見た感じだと、あの森って結構広いみたい。もしも迷って夜になったら、かなり危険だと思うよ」


 そう言って地図を見せられると、たしかにかなり広大な森のようだ。森にはモンスターが彷徨いているだろうし、そんなところで野営するのは危ないだろう。


「ちなみにあの森、<セルト大森林>って呼ばれてるみたいだね。ほら、地図に書いてる」

「ん? ヘイ、真紅郎。この森を抜けた方が、ヤークト商業国に早く着くんじゃねぇか?」


 地図をのぞき込んだウォレスがそう言うと、真紅郎は呆れたようにため息を吐いた。


「だから言ったでしょ、ウォレス。この森を抜けるのは危険だって」

「でもよ、王国からの追っ手がいつ来るか分かんねぇだろ? だったら少しでも早く着いた方がいいんじゃねぇか?」


 意外にもまともな答えに真紅郎と俺は呆気に取られていた。たしかにウォレスの言う通り、追っ手がいつ来るのかは分からない。それなら、多少危険でも早く着くことを優先した方がいいのかもしれないな。

 いつもアホなことばかり言うくせに、たまに核心を突いたようなことを言うんだよな、こいつ。

 どうしたものかと考えていると、やよいは顔をしかめながら口を開いた。


「あたし、イヤ。森を進むとか絶対無理。虫とかモンスターとかいるし」


 きっぱりと森を進むことを拒否したやよいに、思わず吹き出してしまった。俺も正直、森を抜けるのはあまり気が進まなかったし、急がば回れとも言うからな。


「今はとりあえず湖に向かうか。森を抜けるのは最終手段ってことにしようぜ」

「タケルがそう言うなら、ボクはそれでいいよ」

「……お腹、空いた」


 俺の提案に真紅郎は乗ってくれた。というかサクヤはさっきから同じことしか言わないな。どんだけお腹空いてるんだよ。

 ウォレスも一応納得したのか特に反対しなかったけど、ふと首を傾げながら問いかけてきた。


「なぁ、タケル。どういう状況の時に最終手段を使うんだ?」

「それは……追っ手が来た時とか、モンスターに襲われた時とか__」


 考えられる最悪の事態を話していると、遠くの方から何かの音が聞こえてきた。

 バサッバサッと何かが羽ばたいているような音だけど、明らかに鳥みたいな小さなものじゃない。

 その音は徐々に俺たちに向かってきている。方向は、俺たちの後ろからだ。

 恐る恐る振り返ってみると、遠くの空から何かがこちらに向かってきているのが見えた。俺以外の全員もその音に気付いていたらしく、同じように振り返り、愕然としていた。

 それは、モンスターだった。

 真紅の外殻に包まれた、大きな翼を持った大型モンスターは俺たちから少し離れたところでホバリングしながら、爬虫類のような鋭い視線で睨んでくる。

 鋭い牙が生え揃った口からは炎を燻らせ、グルルと喉を鳴らしていた。

 

「ど、ドラゴン……なんで、こんなところに?」

「ま、前足が翼と同化してるから、イギリスの紋章とかによく見られるワイバーンって呼ばれる架空の怪物だね。一般的にはドラゴンの頭、コウモリの翼、鷲の足を備えた空飛ぶ竜とされていて……」

「ハッハッハ……ファンタジー、やべぇ」

「十八歳かぁ……もう少し、長生きしたかったなぁ」

「……お腹、空いた」


 ドラゴン……ワイバーンの登場に俺は呆然とし、真紅郎はブツブツと独り言を呟き続け、ウォレスは引きつった笑みを浮かべ、やよいは死を悟っていた。逆にサクヤはどうして無反応なんだよ。


「__グルォォォォォォォォォォォ!」


 すると、ワイバーンは翼を大きく広げて腹の奥底からビリビリと響くような雄叫びを上げた。そして、長い首を仰け反らせると口を膨らませる。


「__最終手段、発動ぅぅ!」


 ゾクリとした寒気にすぐに最終手段、森の中を抜けることを決めた俺が叫ぶと全員同時に森に向かって走り出す。

 ワイバーンは口を大きく開けると、そこから炎を吐き出してきた。

 炎は俺たちがいた所を轟々と燃やす。少しでも逃げるのが遅かったら炎に焼かれて死んでいたな。ブルリと身を震わせながら必死に森の中を進んでいく。

 ワイバーンは俺たちが森の中に入ったのを確認するとすぐに着陸し、二本の太い足で地面を踏み砕きながら追いかけてきた。

 

 こうして、俺たちはワイバーンに追いかけられながらセルト大森林を走ることになった。




 

 


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