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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
間奏『漂流ロックバンドの異世界日常!』

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間奏『キュウちゃんの懐き事情』

2章の外伝です!

キュウちゃんに出会ってすぐのお話!

可愛いキュウちゃんに、やよいはメロメロ。だが、キュウちゃんにも好き嫌いが……?

「えへへぇ……キュウちゃぁぁん」

「きゅー」


 やよいはキュウちゃんと名付けられた白い子狐型モンスターを抱きしめ、モフモフの毛に顔を埋めて頬をだらしなく緩めている。

 完全にキュウちゃんにメロメロなその姿は……正直、見ていられないほどだった。

 いや、たしかにキュウちゃんは可愛いと思う。真っ白なモフモフな毛に、ちっちゃな体。フリフリと尻尾を振る姿は、まさしく可愛いと断言出来る。


「でも、本当に謎なんだよなぁ」


 キュウちゃんを見て、首を傾げながら呟く。

 こんなモンスターは、今まで見たことがなかった。真紅郎も初めて見るようだし、そもそもキュウちゃんって何者なんだ?

 この森にいたんだから、セルト大森林に生息するモンスターなんだろうけど……森にずっと住んでいるエルフ族すら知らないって、どういうことなんだろう。

 危険性はなさそうだけど、本当に謎のモンスターだ。


「えぇ、どうでもいいじゃん。こんなに可愛いんだよ? ほら!」


 俺の呟きが聞こえていたのか、やよいがキュウちゃんを俺に向かって見せつけてくる。

 キュウちゃんは俺を見て小首を傾げていた。


「たしかに可愛いけどさぁ……」

「ハッハッハ! そんなに気にすんなよ、タケル! なぁ、やよい。オレにも抱きしめさせろ! 暖かそうだ!」

「ウォレスにぃ? まぁ、いいけど……イジメないでよ?」


 やよいは嫌そうに、キュウちゃんを手渡そうとした。

 だけど、キュウちゃんはウォレスに対して顔を背け、ウォレスの手を尻尾で叩く。


「痛……くねぇけど、なんだよ!?」

「キュウちゃん、ウォレスが嫌いなんだってよー」

「はぁ!? なんで(ホワイ)!?」


 意地悪そうな笑みを浮かべながら言うやよいに、ウォレスがショックを受ける。

 そして、ウォレスはまたキュウちゃんに向かって手を伸ばそうとすると、キュウちゃんは嫌そうに尻尾を振って近づくことを拒んでいた。


「ちくしょう……なんか、無性に悔しい(フラストレーティング)だな」

「あはは……ちなみにボクはどうかな?」


 悔しそうにしているウォレスの肩をポンポンッと叩いた真紅郎が手を伸ばしてみると、キュウちゃんは真紅郎の手をスンスンと嗅ぐ。

 そして、やよいの手から離れて真紅郎の手に収まっていた。


「あ、ボクは大丈夫みたい」

「なんでだよぉぉぉぉ!?」

「俺はどうだ……って、うぉ!?」


 気になって俺も手を伸ばそうとする前にキュウちゃんは真紅郎から離れ、勢いよく俺の胸に飛び込んできた。

 それを見たウォレスが妬ましそうに、ギリギリと歯を食いしばっている。


「な、なんか妙に懐いてるな」


 キュウちゃんは俺の腕の中で丸くなって、安心しているように見えた。別に俺、何もしてないんだけどなぁ。

 すると、サクヤも気になったのかキュウちゃんに向かって手を伸ばす。

 キュウちゃんはサクヤの手をスンスンと嗅ぐと首を傾げ、そのまま俺の胸にすり寄ってきた。


「……残念」


 無表情で分かりづらいけど、しょぼんとした雰囲気のサクヤ。

 そこでウォレスが仲間を見つけたとばかりに、ニヤニヤと笑いながらサクヤの肩に手を回す。


「ハッハッハ! オレと同じだな、サクヤ!」

「……最悪」

「ちょ、え? そこまで言う?」

「……最悪」

「二回も言わなくてよくねぇか!?」


 サクヤの物言いに傷つくウォレス。

 そんな時、いきなりキュウちゃんは俺の元から離れ、サクヤの足にすり寄っていた。

 それを見たサクヤは、ウォレスに向かって親指を立てる。


「……ふふん」


 そして、サクヤは無表情で自慢げに鼻を鳴らし、その光景を見てしまったウォレスは、がっくりと膝を着いた。


「どうしてオレはダメなんだよぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 ウォレスの慟哭が、森中に響き渡る。

 悲しみに暮れているウォレスを見て、やよいはやれやれと肩をすくめた。


「……そういうところじゃない?」


 ボソッと呟いたやよいの言葉に、俺と真紅郎、サクヤ……キュウちゃんが頷く。

 その後、キュウちゃんのご機嫌取りをし始めたウォレスだったが、キュウちゃんにそっぽを向かれ続けていた。

 ようやくウォレスがキュウちゃんに触れられたのは、この森から旅立ってからだった。






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