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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第十三章『漂流ロックバンドと世界の真実』

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五曲目『真紅郎の策』

 反撃開始だ、とばかりに体の中を巡っている光属性の魔力を引き出す。じゃじゃ馬の光属性だけど、今は俺の言うことを聞いてくれていた。

 体から白色の魔力を噴き出しながら走り、謎のモンスターに向かって剣を薙ぎ払う。

 だけど、謎のモンスターはグニャリと頭が地面に着くほど上体を曲げ、俺の攻撃を避けた。


「グネグネと鬱陶しいな……ッ!」


 薙ぎ払った剣を振り上げ、次は縦に振り下ろすと、謎のモンスターはバックステップで距離を取って躱す。

 どうやら本能的に光属性を警戒しているようだ。


「この……」

「タケル! 援護するよ!」


 厄介だな、と悪態を吐いていると後ろから真紅郎が魔力弾を放つ。

 合計五つの魔力弾は弧を描きながら謎のモンスターへと向かっていき、着弾した。


「くっ……やっぱり効かないみたいだね」


 着弾した魔力弾は黒いヘドロの体に飲み込まれる。やっぱり俺の光属性をぶつけないと倒せないか。

 相手はかなり警戒しているから、当てるのも一苦労だ。

 当てるためにどうするかを考えていると、謎のモンスターたちはウネウネと両腕を蠢かせ、その形を変える。

 広げた両腕から鋭利ないくつもの黒い棘を生やし、俺たちに向けて伸ばしてきた。


「そんなのありかよ!?」


 いくつもの黒い棘に、俺は叫びながらバク転してその場から離れる。

 俺がいたところに黒い棘が突き立てられ、そのまま俺を追って伸びてきた。


「__フッ!」


 棘から逃げていると、真紅郎は短く息を吐きながらベースの弦をスリーフィンガーによる速弾きする。

 銃口から放たれたいくつもの魔力弾と、俺を襲おうとしていた黒い棘がぶつかり合った。

 棘は硬質化しているからか魔力弾は飲み込まれずに爆発し、黒いヘドロがベチャベチャと地面に落ちる。

 どうにか逃げることが出来た俺は、地面を滑りながら真紅郎の隣に立った。


「危ねぇ……サンキュー真紅郎」

「気にしないで。それより、本当に厄介だね」


 真紅郎の言葉に頷いて返してから、謎のモンスターを睨む。

 二体の謎のモンスターはウネウネと黒いヘドロを蠢かせ、赤い瞳は警戒するように細められていた。

 両腕にはいくつもの黒い棘を生やし、いつでも伸ばせるように待機している。


「どうやっても俺を近づけたくなさそうだな」

「うん。でも、逆に言えば近づくことさえ出来れば倒せるってことだよね」

「そのためにはあの黒い棘を躱さないといけない……厳しいな」


 真紅郎の援護があっても、あの黒い棘の猛攻を全部避けて近づくのはさすがに難しい。どうにかして相手の動きが止まっていれば……。

 そんなことを話していると、二体の謎のモンスターは突然体をぶつけ合い、グネグネと一塊になった。

 そして、球体になった黒いヘドロが人型になり、最初に見た時と同じ二メートルの巨体に戻る。

 

「マジかよ……」


 すると、背中から翼のように腕が生えて、四本腕の化け物に変貌した。

 四本の腕には黒い棘がいくつも生え揃え、触手のようにウネウネと揺らいでいる。

 懐に飛び込む難易度が上がってしまった。頬に流れる冷や汗を拭っていると、真紅郎がクスッと小さく笑う。


「おいおい、真紅郎。あんな巨体に四本腕になったってのに、なんでそんな余裕なんだ?」

「あぁ、ごめんね。むしろ、好都合(・・・)になったからだよ」

「好都合? もしかして……」


 真紅郎はニヤリと笑うと、小さく頷いた。


「作戦を思いついた。そろそろ終わらせよう」


 そう言うと真紅郎はベースを構え、ボディ部分にある三つのコントロールノブを動かす。


「タケル。ボクが合図するまで時間稼ぎをお願い。とにかく、動き回ってかき乱して」

「あぁ、分かった」


 どんな作戦なのかは分からないけど、真紅郎がこんなに自信満々なんだ。

 だったら、俺は真紅郎を信じて動くだけ。

 グッと足に力を込め、上体を低くする。


「__ゴー!」


 真紅郎の合図と共に、俺は走り出した。とにかく動き回り、撹乱して時間を稼ぐ。

 謎のモンスターの周りを円を描くように走っていると、真紅郎はベースを上に向けて弦を弾いた。

 空へと放たれた魔力弾は弧を描いて地面へと落下していく。そして、謎のモンスター__ではなく、その足元へと着弾した。

 だけど、魔力弾は爆発することなく地面へとめり込む。


「何をするつもりなんだ……っと、危ねぇ!?」


 真紅郎が何をするつもりなのか考えていると、謎のモンスターは真紅郎の攻撃を無視して俺に向かって腕を伸ばしてきた。

 四本の腕から黒い棘が伸び、俺を追ってくる。走りながら避けていると、真紅郎はまた魔力弾を放ち、地面へとめり込ませていた。


「いいよ、そのままそのまま」


 合計六つの魔力弾が、謎のモンスターを囲むように足元へと着弾する。

 真紅郎はジッと謎のモンスターの動きを観察していると、腕を振り上げたタイミングで俺に向かって叫んだ。


「__タケル! 離れて!」


 真紅郎の指示通りにその場から離れると、真紅郎は弦を強く弾く。

 その瞬間、謎のモンスターの足元に埋め込まれていた魔力弾が一気に爆発した。

 ボコッと足元の地面に穴が空き、謎のモンスターはグラッと体勢を崩す。


「__今!」


 そう言うことか。

 すぐに俺は体勢を崩している謎のモンスターへと疾走した。

 真紅郎の魔装、銃型のベースはボディ部分にあるコントロールノブで弾道や速度などを好きなように変えることが出来る。

 今回は爆発するタイミングを任意で出来るように操作したのか。

 

「真紅郎! ナイス!」


 謎のモンスターは転ばないように四本の腕で堪え、身動きが取れなくなっている。

 今しかない。

 光属性の魔力を剣に集め、一体化させながら謎のモンスターに向かって飛び込んだ。


「__<レイ・スラッシュ!>」


 光属性を纏った剣を謎のモンスターに向かって、一閃。

 白い斬撃が謎のモンスターの体を横一文字に斬り裂き、黒いヘドロは粒子となって爆散した。

 地面に着地してから剣を振り、残心。

 謎のモンスターは声なき悲鳴を上げながら、完全に消滅した。


「……ぷはぁ! どうにか倒せたな」

「お疲れ様、タケル」


 警戒を解き、張り詰めていた緊張の糸が切れる。

 一気に襲いかかってきた疲労感に尻餅を着いていると、真紅郎が微笑みながら手を伸ばしてきた。

 真紅郎の手を握って立ち上がり、剣を指輪に戻す。


「さて、と。真紅郎、ウォレスたちがどこにいるか知ってるか?」

「ううん、分からない。目を覚ましたらボク一人だけだったからね。探そうと思ってたら、さっきのモンスターに襲われたんだよ」


 真紅郎もウォレスたちとはぐれてしまったみたいだ。

 だけど、そこまで離れていないだろうし、この辺りを探してみるか。

 もしかしたらウォレスたちもさっきみたいな謎のモンスター……神域に侵入してきた闇属性と戦ってるかもしれないしな。


「俺は今からウォレスたちを探しに行くけど……真紅郎はどうする?」

「もちろん、ボクも探すよ。心配だから早くしないと」

「分かった。じゃ、行くか」


 一息吐いてから、俺と真紅郎はウォレスとサクヤを探しに歩き出す。

 真紅郎を見つけた時と同じように、パワーアンプを使ってから聴覚強化(マルカート)で探索したけど、ウォレスたちらしき音は聞こえなかった。


「うーん、範囲外にいるのか? それとも、まだ寝たまま?」

「そうだね……あそこの丘から探してみる?」


 真紅郎が指差した丘は、今いるところよりも高いところにある。あそこからならある程度、この森を見渡せそうだ。

 丘に登ると広大な森の光景が一望出来た。闇雲に探すには広すぎる森を見渡してウォレスたちを探していると、真紅郎が声をかけてくる。


「ねぇ、タケル。あの木を目指してみない?」


 真紅郎の視線の先には遠くから見ても他の木々に比べて高さも太さも違う、まさに大樹があった。

 目印もなく探すよりも、目立つところを目指しながら探した方がいいか。

 俺と真紅郎はその大樹を目指して、森を進むのだった。

 

 

 

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