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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第十二章『漂流ロックバンドと雪山に集う精鋭たち』

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エピローグ『音色と剣の導き』

 __何かの、音が聴こえる。


 どこかで聴いたことがある音に、俺は目を覚ました。


「今の、は……うぐッ!」


 重い瞼を開けて起き上がろうとすると、ビキビキと身体中に痛みが走る。ぼやけていた思考が痛みで一気に回り出した。


「そうだ、やよい……」


 いきなり強い魔力を放っていた石板に吸い込まれ、大きな魔力の渦に飲み込まれたかと思ったら、どこか分からない土地に飛ばされたことを思い出す。

 そして、一緒に飛ばされたやよいの存在を確認すると、意識を失う前と同じく気絶したまま横たわっている姿を見つけた。

 静かな寝息を立てているやよいの腕には、同じように神殿の出来事からずっと眠ったままのキュウちゃんの姿もある。


「よかった……う、ぐ……ッ!」


 やよいたちの安否を確認してホッと一安心してから、痛みを堪えてどうにか起き上がって周りを確認する。

 赤い空に赤褐色の荒野。紫色の毒々しい謎の植物とエメラルド色の酸の沼が点在した、俺たちがいた世界とは隔絶されたような__まさに異世界の光景。

 月も太陽もないのに明るい、生き物の気配も感じられない世界。どうして俺たちがこんなところに飛ばされたのかは分からないけど、とにかくここから離れた方がいい。

 そう思った俺はゆっくりと立ち上がり、倒れているやよいを背負う。

 そして、片手でやよいを支え、もう片手でキュウちゃんを抱きしめた。


「とりあえず、歩かないと……ウォレスたちも多分、どこかにいるはずだ」


 俺とやよいだけじゃなく、ウォレスたちも同じようにここに飛ばされているはず。

 独り言を呟きながら、当てもなく歩き出した。


「クソ、本当にここ、どこなんだよ」


 歩いても歩いても、同じような光景が続く。

 見えるのは紫色の植物と、酸の沼だけ。それ以外に何もなく、指針もない。

 思わず悪態を吐いていると、どこか遠くからまた音が聴こえた。


「やっぱり何か聴こえる……これって」


 目を覚ました時にも聴こえた、その音。


 それは俺たちが元の世界から異世界に召喚された時にも聴こえた__荘厳な琵琶の音色だ。


 俺はその音が聴こえる方向に向かって、ふらふらと歩みを進める。

 不思議とその音はどこか優しく、俺を導いている気がした。


「ここから聴こえるな」


 歩き続けていると、森のようなところが見えてくる。

 紫色の葉、緑色をした幹の木で鬱蒼としている森だった。音は森の奥から聴こえてくる。

 明らかに怪しい毒々しさしか感じられない森に入るのに少し躊躇したけど、意を決して森に足を踏み込んだ。

 ガサガサと薄い紫色をした草むらを掻き分け、音がする方へとどんどん進む。

 音は徐々に近くなり、まるで急かしているように大きくなっている気がした。


「……あれ、は」


 そして、深い森の奥……音がする場所にたどり着く。


 森が開けたその場所には__紫色の渦があった。


 石板に吸い込まれた時に見た渦と同じ、魔力の奔流。どこかに繋がっている魔力の渦だ。


「大丈夫、だよな?」


 魔力の渦のせいでこんな謎の世界に飛ばされたことを思い出し、少し不安になる。

 だけど、なんでだろう……不思議と、そこまで恐怖は感じなかった。

 紫色の渦からは琵琶の音がずっと聴こえてくる。ゆっくりとしたリズムで、俺を誘うかのように。

 ジッと魔力の渦を見つめていると、音色のリズムに合わせて左指にはめていた指輪__待機状態にしていた魔装が振動しているのに気付いた。


「なんだ?」


 やよいを背負い直して、魔装を展開する。

 右手に握られた柄の先にマイクが取り付けてある剣は、共鳴するように琵琶の音色に合わせて振動していた。


 __まるで懐かしんでいるように。


「……行ってみるか」


 剣を待機状態に戻してから、恐る恐る渦へと近付く。

 右手を伸ばして渦の中に入れてみると、吸い込まれることはなかった。

 それどころかどこか暖かい感触に、覚悟を決めて体ごと渦に入る。


 琵琶の音色と剣に導かれるまま、やよいとキュウちゃんを抱えた俺は渦の向こう側へと進む。


 __三千世界の音色に導かれし者たち。ようやく、会えるね?


 その時、そんな声が聞こえた気がした。




 

これにて12章は終わりです!お読み頂きありがとうございます!


次回は13章!最終章に向けて、どんどん伏線回収していきます!


明日は作中曲『赤い月』の歌詞を投稿しますので、よろしければどうぞ!


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