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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第九章『漂流ロックバンドと哀哭のドラゴン』

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二十八曲目『戦いの終わり』

 にんげんがいなくなってから、なのかがたちました。

 ドラゴンははじめて「さびしい」というきもちをしりました。


 まだかな? はやくかえってこないかな?


 またここにきて、あたらしい◼️◼️を、しらないくにのことをはなしてくれるのをたのしみにしながら、ドラゴンはくらいどうくつでまちました。


 とおか、まちました。いっかげつ、まちました。それでも、にんげんはかえってきません。


 ドラゴンはずっとまちました。しんぱいになり、さがしにいこうかともおもいました。

 でも、ドラゴンはまちます。そうやくそくしたから。


 そうして、いちねんがたちました。



 今までにないぐらいの激闘が、ようやく終わった。

 災禍の竜の姿はなく、俺が放ったレイ・スラッシュ・交響曲(シンフォニー)によって完全に消滅したようだ。

 緊張の糸が切れ、脱力しながら大の字に地面に倒れていると、やよいたちが駆け寄ってくる。


「タケル、大丈夫?」


 心配そうに声をかけてくるやよいに、俺は笑みを浮かべながら頷いて返した。


「あぁ。まぁ、動けそうにないけど」


 魔力は使い果たし、体力も限界。ア・カペラの反動で体がバキバキで、少しでも体を動かしただけで痛みが走るぐらいだ。

 そんな俺をウォレスと真紅郎が肩を貸して起き上がらせてくれた。


「ハッハッハ! やったなタケル!」

「ほら、タケル。立てる?」

「ありがとう……いでで」


 痛みに顔をしかめながら、俺は二人の肩を借りて立つ。足はほとんど力が入らず、プルプルと震えている。

 すると、サクヤは俺を見つめながら拳を突き出してきた。

 向けられた拳を見て、俺はクスッと小さく笑いながら同じように拳を向ける。


「……お疲れ様」

「サンキュー」


 コツン、と俺とサクヤは拳を合わせた。

 やよいたちはみんなボロボロだけど誰も死んでないし、大きな怪我もしていない。唯一重症なのはレイドだけど、あれだけ激しい戦闘……そして、強大な敵を相手に全員生きているのは奇跡的だ。

 

「俺たちの完全勝利だな」


 間違いなく、俺たちの完全勝利だ。

 頬を緩ませながら言うと、やよいたちも同じように笑みを浮かべる。


「__おぉい! 大丈夫かぁ!?」


 俺たちが勝利を噛み締めていると、遠くからベリオさんの声が聞こえてきた。

 ベリオさんの後ろにはボルクと機竜艇に乗っていた黒豹団たちの姿もあり、俺たちに向かって走ってきている。

 すると、その集団から飛び出し、誰よりも速く俺たちのところへ駆け寄ってくる小さな白い影の姿。


「キュキュー!」


 それはキュウちゃんだった。

 キュウちゃんは勢いよくジャンプし、俺の胸元に飛び込んでくる。


「うげ!?」


 今の俺の体はキュウちゃんの体重すらも支えきれず、そのまま後ろへ倒れ込んだ。

 ビキビキと体が悲鳴を上げる中、キュウちゃんは俺の胸の頬をすり寄せながら尻尾をブンブンと振っている。


「キュー! キュキュー!?」

「ちょ、分かった、俺たちなら大丈夫だから! な?」


 俺たちのことが心配だったのか、キュウちゃんは目尻に涙を浮かばせながら離れようとしなかった。

 どうしたものかと困っていると、倒れている俺に向かってやよいが手を差し出してくる。


「ほら、タケル。掴まって?」


 透き通るような青空をバックに、やよいはまるで花が咲いたような……太陽のような明るい笑顔をしていた。

 思わず目を奪われ、我に帰ってからやよいの手を掴む。


「ありがとうな、やよい」

「あはは、大袈裟。いいから早く! みんな待ってるんだから!」


 やよいに手を貸して貰いながら立ち上がる。やよいは俺が手を貸してくれたことに対してありがとうと言ったと思っているようで、苦笑していた。


 だけど、俺がありがとうと言ったのはそうじゃない。


 今回の戦いで、俺はやよいに何度も助けられた。やよいがいてくれなかったら、俺は災禍の竜に勝つことが出来なかっただろう。もちろん、やよいだけじゃなく、みんながいなかったら戦いにすらなってなかったはずだ。

 やよいはもう、俺に守られているだけの少女じゃなくなっていた。いや、初めからそうだったのかもしれない。

 俺が知らなかっただけで、やよいは強かった。体ではなく__心が。

 今までは少し過保護すぎたかもしれないけど、これからは一緒に戦う仲間として守るだけじゃなく、時に守られるようになろう。

 だから、「ありがとう」だ。まぁ、少し寂しさを感じるけどな。


「こいつは酷いな……」

「タケル兄さん! 凄いよ! あの災禍の竜を倒しちゃったぜ!」


 キュウちゃんに遅れて、ベリオさんとボルクが声をかけてくる。

 ベリオさんは悲惨な戦場の跡を見て顔をしかめ、ボルクは興奮した面持ちで鼻息を荒くしていた。

 他の黒豹団たちはアスワドや倒れていた魔族三人を運び始めている。特に、重症なレイドは丁重にゆっくりと。


「二人とも、本当にありがとう。そうだ、機竜艇は?」


 災禍の竜との戦いで墜落した機竜艇のことを聞くと、ベリオさんは鼻を鳴らした。


「フンッ、お前が心配することはない。俺とボルクがいれば、どれだけぶっ壊れていようと、すぐに直してやる」

「そういうこと! ま、修理に二、三日は必要かな? それが終われば、また機竜艇は空を飛べる!」


 よかった。もしこれでもう機竜艇が飛べなくなったらと心配してたけど、大丈夫そうだ。

 てことは二、三日はここで足止めか……そうなると、レイドが心配になる。

 黒豹団たちに運ばれているレイドを見つめていると、ベリオさんが俺の肩に手を置いてきた。


「あの男のことなら俺たちに任せておけ。応急処置程度しか出来ないが、やらないよりマシだろう。機竜艇の修理が終わったら、すぐに近くの街に向かって治療して貰う。お前たちはとにかく、ゆっくりと休め」

「そうだぜ、タケル兄さん! あれだけの戦いのあとなんだから、今は休んでくれよ! あとのことはオレたちに任せろって!」


 そうだな。ここで俺が心配してても、レイドが治る訳じゃないし。お言葉に甘えて、ゆっくり休むとしよう。

 ウォレスと真紅郎に肩を貸して貰いながら歩き出す……前に、ふと俺は振り返った。


 視線の先にあるのは__災禍の竜が最後まで守ろうとしていた、岩で出来たタワー。


 あれになんの意味があるのかは分からない。でも、災禍の竜にとっては自分が死ぬ寸前だとしても、あの岩のタワーだけは絶対に守ろうとしていた。

 岩のタワーを傷つけられることが、災禍の竜の逆鱗に触れる行為。つまり、あれが災禍の竜の誇り……誰かとの絆なのかもしれない。


「まぁ……いいか」


 考えてても答えが出るはずもない。というより、徐々に思考が遅くなって考えることが出来なくなってきた。

 緊張の糸が切れ、張り詰めていた神経が緩んでいくと途端に体が重くなり、眠気が襲ってくる。


「悪い……俺、寝るわ……」


 一言声をかけてから、襲ってくる眠気に抵抗することが出来なずにゆっくりと瞼を閉じる。


 暗い視界の中、ボンヤリと何かの光景が見えてきた。


 岩のタワーの近くに立つ一人の男と__小さな白いドラゴンの姿。

 一人と一匹は顔を合わせ、微笑んでいた。まるで再会を喜ぶように。


 その光景を最後に、俺は眠りに落ちるのだった。


 


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