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漂流ロックバンドの異世界ライブ!〜このくだらない戦争に音楽を〜  作者: 桜餅爆ぜる
第五章『漂流ロックバンドとアングレカムの咲く丘』
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プロローグ『空から落ちてきた女の子』

 空は快晴。穏やかな風が草原を揺らし、白い雲がゆっくりと流れている。

 モンスターの姿もなく、今のところ俺たちロックバンド<Realize(リアライズ)>の旅路は順調だった。

 そんな平和な草原を歩いていると、風でなびく綺麗な長い黒髪を手で抑えた一人の少女__Realizeの紅一点で女子高生ギタリスト、やよいが声をかけてくる。


「ねぇ、タケル。次の国……シーム? って、どれぐらいで着くの?」

「どれぐらいだろうな? 真紅郎、分かるか?」


 声をかけられた俺、タケルは次の目的地までの距離が分からず、隣にいる栗色の髪をボブカットにした小柄な少女__ではなく歴とした男でベース担当、真紅郎にパスした。

 真紅郎は、地図を取り出して現在地から目的地までの距離を確認すると、首を傾げながら顎に手を当てて計算する。


「そうだね、今日中には着くんじゃないかなぁ?」


 頬を緩ませながら、ざっくりと真紅郎は答えた。

 中性的な顔立ちで柔和に笑うその姿は、華奢な体格も合わさって女性にしか見えない。男だけど。


「……タケル。今ボクのこと、女の人みたいって思わなかった?」

「お、思ってないって! 全然思ってない!」


 俺の思考を読んだ真紅郎が、ジトッと俺を睨んでくる。

 慌てて目を逸らしてながら返すと、真紅郎はやれやれとため息を吐いた。


「まぁ、いいけどさ。今に始まったことじゃないし。とりあえず、そう時間はかからないと思うよ?」

「ハッハッハ! そいつはいいな! どうする? 走るか!?」


 そう時間はかからないと聞いてRealizeの外国人ドラマー、ウォレスがバカなことを言い出す。

 長身で体格がよく、太陽の光で煌めく金髪を短く切りそろえたウォレスは、見た目はイケメンと言えるだろう。喋らなければ、だけど。

 いつも通りバカなウォレスに呆れて肩をすくめると、ウォレスはムッとした表情を浮かべた。


「ヘイ、タケル! どうしてバカにした目で見るんだ!? オレはバカじゃねぇぞ!? なぁ、サクヤ!?」

「……お腹空いた」


 ウォレスが同意を求めたのは白銀の髪をした褐色の少年、<ダークエルフ族>のサクヤ。

 この異世界で出会い、Realizeのキーボード担当として加入したサクヤは、ウォレスの言葉を無視して眠そうに半分閉じた瞼で遠くを見ながら、空腹を訴える。


「ぐぬぬ……な、なぁ、キュウちゃん。オレ、バカじゃねぇよな?」


 無視されたウォレスはサクヤの頭の上にいる、額に楕円型の蒼い宝石がある白い小狐モンスターのキュウちゃんに助けを求め出した。

 キュウちゃんはチラッとウォレスを見てから、興味なさげにフイッと顔を逸らして鼻を鳴らす。

 ついでに、モフモフとした尻尾でウォレスをシッシッと追いやっていた。

 キュウちゃんにまでバカにされたウォレスは、頭を抱えて天を仰ぐ。


ちくしょう(ダムイット)! オレはバカじゃねぇぇぇッ!」

「あぁ、もう! バカウォレス、うるさい!」


 天に向かって叫んだウォレスに、やよいが怒鳴る。そういう行動がバカに見える原因だと、何故分からないのか。 

 呆れていると、突然ウォレスが「ん?」と動きを止めていた。


「どうした、ウォレス?」


 気になって聞いてみると、ウォレスはジッと空を見つめたまま「なぁ、あれなんだ?」と指差す。

 その方向を見てみると、そこにはこっちに向かって何かが落ちてきているのを見つけた。


 目を凝らして見てみるとそれは__人間だった(・・・・・)


「__はぁ!?」


 目を疑う光景に、思わず声が出る。

 空から落ちてきているのは、一人の女の子みたいだ。


「へ、ヘイ、親方! 空から女の子が!?」

「バカかお前は!? そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?」


 こんな状況でバカなことを言うウォレスに、俺は怒鳴りつける。その間にも、女の子はこっちに向かって落ちてきていた。


「え!? ちょ、ちょっと、どうするの!?」


 やよいも女の子に気付いて、焦った様子で聞いてくる。

 だけど、俺だっていきなりのことにどうしていいか分からない。


「と、とにかく、ウォレス! 受け止めるんだ!」

「オーライ! <エネルジコ!>」


 この中で一番力持ちのウォレスに、女の子を受け止めるよう指示を出した。

 すうると、ウォレスはすぐに<音属性魔法>の筋力強化(エネルジコ)を使って、女の子の落下地点に走る。

 そして、ウォレスは思い切りジャンプした。


「__ウォレスキャッチ! って、ぐぉ!?」


 空中で女の子を受け止めたウォレスは、そのまま背中から地面に着地する。

 結構なスピードで落ちてきた女の子の下敷きになったウォレスだけど、筋力強化をしていたおかげか、そもそもタフだからか分かんないけど無傷だった。

 うっすらと緑がかった白い髪、色白で綺麗な顔立ちをした十代後半ぐらいの女の子は、眠るようにウォレスの上で気絶している。


「こ、この子はいったい……?」


 突然、空から落ちてきた謎の女の子。

 平和な旅路にいきなり起きた出来事に、俺たちは呆然としていた。


 

 


 


今日から投稿再開です!

頑張って毎日投稿していきますので、今後もよろしくお願いします!

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