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漂流ロックバンドの異世界ライブ!〜このくだらない戦争に音楽を〜  作者: 桜餅爆ぜる
第四章『ロックバンド、水の国で魔族と出遭う』
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五曲目『レンヴィランスでの初ライブ!』

 連れてこられたところは、ディーネ様が住むとされている霊峰が見える神殿の前に用意されていたステージだ。

 ステージの前にはもう観客が集まっていて、今から始まる未知の文化に胸を躍らせている。


「……なし崩しになったけど、ライブが出来るのは嬉しいな」

「この綺麗な水の国でライブなんて、夢みたい!」

「ハッハッハ! これはテンション上がるな!」

「ウォレスはいつもでしょ?」

「……ライブ、頑張る」

「きゅ! きゅきゅ!」


 やよいとウォレスはテンションが上がっているのかはしゃぎ、真紅郎も苦笑しつつも嬉しそうだった。

 サクヤは気合いが入っているのか拳を握りしめ、サクヤの頭の上にいるキュウちゃんが元気に鳴いている。

 とにかく、こんな大勢の観客の前でライブが出来るなら、俺としてもばっちこいだ。

 すると、ステージの上に立ったライトさんが、観客に向かって叫んでいた。


「__お集まりの諸君! これから始まるのは、おんがくという未知の文化! 聞くところによると、ヤークトでも、おんがくを聴いて大盛り上がりしたそうだ! ならば! 我らが信仰する神、新しいものが好きなディーネ様に捧げ、敬虔な信徒である我らも存分に楽しもうではないか!」


 ライトさんの呼びかけに観客が大いに盛り上がり、歓声を上げる。

 めちゃくちゃハードルが上がったな。だけど、それでこそやりがいがある。


「__よっしゃあ! みんな、行くぞ!」


 俺たちが勢いよくステージに上がると、歓声がより一層大きくなる。

 そして、俺たちはそれぞれ自分の魔装を展開した。

 やよいは斧型の赤いエレキギター。

 真紅郎はネックの先端に銃口がある木目調のベース。

 ウォレスは二本のドラムスティックを握ると、目の前にドラムセットを模した紫色の魔法陣を展開する。

 サクヤは魔導書を開き、そこから魔力で出来たキーボードを作り出した。

 最後に俺は剣の切っ先をステージに突き立て、柄に取り付けられたマイクを口元に持って行く。


「__ハロー、レンヴィランス神聖国の皆さん! 俺たち、Realizeです!」


 マイクを通した俺の声が、ビリビリと空気を震わせた。

 最初は戸惑っていた観客だったけど、すぐに拍手と歓声が巻き起こる。さすが、新しいもの好き。ノリがいいな。


「__今から俺たちが披露するのは音楽! 最高に熱くて、最高に盛り上がる文化です! 今日は俺たちの音楽で存分に盛り上がって下さい! じゃあ、さっそく聴いて下さい__<宿した魂と背中に生えた翼>」


 曲名を告げて、やよいたちに目配せする。

 全員が頷いたのを確認してから、俺はマイクの機能__ボーカルエフェクターを使ってから歌い始めた。


「センセーション? そんなもん殴り飛ばせ イマジネーション? それがなきゃ人間じゃねぇ」


 声を加工して、篭もったような響きのラジオボイスに変えながらAメロを歌い上げる。

 その直後にウォレスの早いドラムストローク、真紅郎の速弾きのベースライン、やよいの擦れた音色のギター、機械的なシンセサイザーの音でキーボードを弾くサクヤが入ってきた。

 がっつりとロックテイストな縦ノリのアップテンポの曲で、音楽を知らない人たち全員の度肝を抜かせる。

 そのままBメロに入っていくと観客は最初こそ戸惑っていたものの、どんどんと盛り上がっていき、手を振り上げて歓声を上げていた。

 どうやら新しいもの好きのレンヴィランス神聖国の人に、音楽は受け入れて貰えたみたいだな。

 こうなったら、こっちのもんだ。どんどん盛り上げて、この国にも音楽ブームを巻き起こしてやる!


「音楽は世界を救う いや救うのは俺だ 誰にも譲らねぇ 祈りより大事だろ? 刻め、ロックは 魂は 命は ここにあるんだ」


 疾走感溢れるガンガンとしたリズムの勢いのままラストのサビを歌い上げ、ジャンプして着地したタイミングで全員の演奏が終わった。

 演奏が終わった瞬間、爆発したように歓声が上がる。

 滝の音のような拍手の瀑布、雄叫びのような歓声。その全てが俺たち全員にぶつかってきた。

 すると、ライトさんが目を輝かせながら俺の肩をバンバンと叩いてくる。


「最高だ! あぁ、本当に最高だ! 私はこんな素晴らしいものを見たことがない! いや、聴いたことがない! キミたちのおんがく、感動した!」

「あ、ありがとうございます……あの、ちょ、痛いです」

「フハハハハ! さぁ、改めて紹介しよう! この者たちはユニオンメンバーで、今日この国に来たばかりだ! こんなにも最高な文化を教えてくれたこの者たちに、より一層の拍手を!」


 ライトさんの呼びかけに拍手が一段と大きくなった。

 どうやら音楽だけじゃなくて、俺たちも受け入れて貰えたみたいだな。ちょっと照れ臭いけど、嬉しいな。


「もう一回やってくれぇぇ!」

「もっと聴かせてぇぇぇ!」


 観客からもう一度聴かせて欲しいという声が聞こえ始めると、どんどんと広がっていき、最後には全員がもう一曲を希望し始めた。

 それを聞いたやよいが俺のマイクを奪い取り、声を張り上げる。


「そういう時はアンコールって言うんだよ! はい、アンコール! アンコール!」


 やよいの音頭でアンコールの声が響き渡る。そう言えば、この異世界に来て初めてのアンコールだな。

 なら、俺たちロックバンドがアンコールに応えない訳にはいかないよな!


「アンコールありがとう! じゃあ次の曲! さっきとは違うテイストの一曲だ!」


 俺の叫びに呼応するように、観客がどんどんボルテージを上げていく。

 不敵に笑った俺は、マイクに向かって曲名を叫んだ。


「全員、俺たちの演奏で踊れ__<Laugh&Laugh!>」


 ウォレスがドラムセットを模した魔法陣をスティックで叩く。さっきの曲は縦ノリだったけど、これは横ノリのリズムだ。

 そこに真紅郎の跳ねるようなベースラインと、やよいの踊るようなギター。そして、サクヤはシンセサイザーからピアノに音を変えてキーボードを弾く。

 音が跳ね、今にも踊り出しそうなリズムのダンスナンバー。俺はリズムに合わせて肩を揺らし、マイクに向かって歌い出した。


Laugh(笑え)! Laugh(笑え)! Laugh(笑って)Laugh(笑え)!」


 Aメロを歌いながら俺は両手を上に持って行き、手拍子をすると観客も俺の動きに合わせて手拍子し始める。

 演奏のリズムと手拍子の音が重なっていく光景に、俺は思わず笑みを浮かべながらBメロに入った。


「笑顔あふれる この世界 どんな人でも関係ない 手を取り 笑おう みんなの輪が広がる 男女も格差も関係ない 肩を組み 騒ごう」


 サビに入る前の助走としてサクヤのピアノが演奏を彩り、華やかにしていく。

 俺は観客に人差し指を向け、楽しさから笑顔を浮かべたままサビを歌った。


「だって今夜はParty with my friends! この騒ぎに入れば 誰もが友さ」


 やよいと真紅郎、俺はリズムに合わせて右に横ステップを踏み、パンパンッと手を鳴らす。


「もちろん今夜はLaugh together! 騒げ! 踊れ! 笑え! 今しかないぞ」


 次は左に横ステップをパンパンッと手を鳴らすと、観客も同じように手を鳴らしてくれた。

 一体化したステージに、テンションが上がりまくる。


Laugh(笑え)! Laugh(笑え)! Laugh(笑って)Laugh(笑え)!」


 俺たちのライブは最高に盛り上がり、レンヴィランス神聖国でも音楽の楽しさを知って貰うことが出来た。

 そして、俺たちは大盛況のままステージから降りる。

 こうして、俺たちRealizeのレンヴィランスでの一発目のライブは大成功で終わることが出来たのだった。




  


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