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漂流ロックバンドの異世界ライブ!〜このくだらない戦争に音楽を〜  作者: 桜餅爆ぜる
第四章『ロックバンド、水の国で魔族と出遭う』
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四曲目『突発的ライブ』

 訓練場から執務室に戻ってきたライトさんと俺たち。

 ライトさんは椅子に腰掛けると、爽やかな笑みを浮かべて口を開いた。


「では改めて……私の名はライト・エイブラ二世。ユニオンレンヴィランス支部のユニオンマスターだ。キミたちのことを歓迎し、エイブラ家の家名に賭けてあらゆる障害から守ることを誓おう」

「あ、ありがとうございます」


 自身に満ち溢れた頼りになる言葉に俺たちがお礼を言って頭を下げると、ライトさんはポリポリと頬を掻く。


「それと、さっきはすまなかった。アレヴィから報告は聞いていたが、自らの目で見ないと信じられない性質でな。実力と性根を調べるには、戦えば一目瞭然。そのために挑発していたのだ。ダークエルフ族のキミ……サクヤ、だったな。本当にすまなかった」

「あ、大丈夫です。俺の方も失礼なことを言って、すいませんでした」

「……気にして、ない」


 仲間を貶されたからと言って、さすがに俺も言い過ぎたと反省している。

 俺が謝り、サクヤが答えるとライトさんは小さく笑みをこぼした。


「いや、構わん。悪いのはこっちだからな。仲間を大事にするその心。まだ荒削りではあるが、たしかな実力。見事だった。それに__」


 ライトさんは言葉を切って、遠くを見るような懐かしむ視線で俺を見つめる。


「__昔のロイドを思い出すようだ。それでいてあの方……アスカ殿にも似ている気がする。仲間を思いやる気持ちや、少し無鉄砲なところとかな」


 ロイドさんだけじゃなく、その口振りからこの世界を救ったとされる英雄であり、俺たちRealizeの原点と言える憧れの人__アスカ・イチジョウと面識があるようだ。

 そこで、真紅郎が手を挙げて問いかけた。


「アスカ・イチジョウと会ったことがあるんですか?」

「会ったことも何も……私はアスカ殿と一緒に戦場を駆けていた同士だ」


 一緒に戦場を、ってことはかなり親しかったってことか。

 次にやよいが、興奮したように口を開く。


「あの! 聞きたいんですが、アスカさんって強かったんですか?」

「あぁ。まさに、天賦の才を持つ人だったよ。剣を握ったことがない素人だったのに、メキメキと実力をつけて……ロイドと肩を並べるほどに成長したぐらいだ」


 昔を思い出しながら、アスカ・イチジョウのことを語るライトさん。

 素人からロイドさんと同等の実力まで成長って、かなり凄かったんだな。俺たちが知っているのは、歌手だったアスカさんだけだ。

 俺たちと同じ世界からこの異世界に渡り、英雄となったアスカ・イチジョウがこの世界でどんなことを成し遂げたのか。色々、聞いてみたいな。

 その前に、話が長くなりそうだと思ったのかライトさんは咳払いしてから本題に入る。


「とりあえず、話を戻そう。アレヴィから報告は受けたが……マーゼナル王国がきな臭いようだな。そして__ロイドのことも聞いた」


 ロイドさんは俺たちのことを鍛え、多くのことを教えてくれた恩師だ。

 だけどマーゼナル王国の王、ガーディに荷担して俺たちを捕まえようとしていたけど、最後には俺たちを逃がすために王国の軍勢を一人で押し止めてくれた。

 その後、ロイドさんがどうなったのかは分からない。正直、生きてるとは思えない。

 少し暗くなっていると、ライトさんは小さく笑みをこぼす。


「まぁ、そこまで心配することはないだろう。あいつのことだ、死ぬことなどあり得ない」

「え? どうしてですか?」


 俺の問いかけに、ライトさんははっきりと言い放った。


「__あいつは殺しても死なない男だ。我が永遠のライバルは、そんなことで死ぬような奴じゃない。それに、まだ決着がついていない内に死なれても困るからな」


 理由になってない気がするけど、何故か説得力があった。

 昔からのライバルだからこそ分かるのか、それとも直感か。どちらにせよ、ライトさんがそう言うならロイドさんは生きてるだろう。


「と、また話がズレてしまったな。とにかく、この国にいる以上はマーゼナル王国には手出しはさせない。全力を持ってキミたちを保護してみせよう。安心して過ごして欲しい」

「本当にありがとうございます」

「気にするな。貴族として当然のことをしたまでだ」


 貴族として当然、ね。ノブリス・オブリージュって奴か?

 とりあえず、これでどうにか安心して過ごすことが出来そうだ。

 ホッと一安心していると、ライトさんが思い出したように話を続ける。


「あぁ、そう言えばアレヴィからの報告で聞いたがキミたちは、らいぶ……おんがくとやらをしているらしいな? なんでも、誰も知らない未知の文化だとか」


 アレヴィさん、音楽のことも話してたのか。まぁ、隠すことじゃないから素直に頷くと、ライトさんは目を輝かせて笑みを浮かべる。


「そうか! 話を聞いて、どんなものなのか知りたくてな! 早速披露して欲しいのだが……」

「いいですけど……」

「それならば、行こうか!」

「え? どこにですか?」


 いきなりどこか行こうとするライトさんに問いかけると、ライトさんはさも当然のようにあっけらかんと答えた。


「ステージを用意しているから、今からそのらいぶをして貰うのだ」

「……えぇぇぇ!? い、今から!?」


 唐突すぎる展開に驚く。

 いや、ライブをするのはいいけど、あまりにも突然過ぎないか?

 唖然としている俺たちにライトさんはワクワクとしながら、口を開く。


「今、この街では水の属性神ディーネ様を讃える祭典をしている。ディーネ様は新しいものや美しいものが好きで、我らも同じように新しいものには目がない。だからキミたちのおんがく、という文化も受け入れてくれるだろう。存分に披露してくれ」


 いや、そういうことじゃなくて……。

 まぁ、でもいいか。いつも通り、俺たちはライブをして、音楽の良さを知って貰えばいいんだ。


 むしろ、望むところだ。


 ということで、俺たちはライトさんに連れられてステージ会場まで向かうことになった。


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