決着
「死ねよゼロ!」
ミサカズの一閃がゼロを襲う。
その一閃はゼロの腕に防がれるとあっけなく砕け散る。
「……嘘だろ?」
ゼロが防御しただけで剣は粉々になった。
ミサカズの腕は、剣を受け止められた衝撃で血だらけだ。
「ちょっと待ってくれ! 俺たちは友達だ!」
ミサカズの顔面にゼロの拳がめり込む!
「ぐげぇええええ! あ、ごあごあご!」
顎を押さえて蹲る。
「殴った個所がスライムになっている」
遠目から見守るイーストが呟く。
「あれだと防御は無意味ね。攻撃を避けないと」
レビィは肩を竦める。
その間にも、スライムとなった部分が広がる。
「ひぃいいいいいい!」
ミサカズは発狂状態でスライムの部分を引きはがす。
「ゆ、ゆびゆびゆび!」
引きはがすと今度は触れた指がスライムとなる。
「もはやミサカズに勝ち目はない」
ジャックは鼻で笑う。
「までまでまで! もう降参だ! お前の勝ちだ!」
ミサカズはナイフでスライムになった部分を切り落とすと、土下座をする。
「な! 仲直りしよう! 調子に乗った俺が悪かった! でももう気が済んだだろ!」
「喧しい」
ゼロはミサカズを見下ろす。
「待て! 分かった! 認める! お前のほうが強い! だから俺はお前の部下になる! そうしよう! 俺だってお前の次に強い! 絶対に役に立つ!」
ゴキ!
「てぇえええええええ!」
踏みつぶされた手を押さえる。
「お前は許さない」
ゼロは静かに怒りを燃やす。
「何人お前に殺されたと思っている? 何人お前に侮辱されたと思っている?」
「謝る謝る! もうしない!」
「信用できない!」
ゼロは己の血で血刀を作る。
「おい爺! もう降参だ! 勝負ありだ! 止めさせろ!」
グランドは何も言わず、ゼロを見守る。
「お前ら! 俺を助けろ! 一緒に化け物を殺すぞ!」
ミサカズは観客に助けを求める。
「下等な私たちじゃ勝てないわ」
レビィは皆に目配せして、下がらせる。
「止めろゼロ! 俺を殺したら人殺しだぞ! それはいけないことだぞ!」
ミサカズは手の平を向けて、止めろ止めろと命乞いをする。
「お前は人じゃない。怪物だ」
ギリギリと血刀を構える。
「くそが! ゼロのくせに調子に乗りやがって!」
突然逆切れすると、刀を作り出し、構える。
「俺のほうが強い! てめえなんかに負けるか!」
両者は同時に動いた。そして血刀と刀がぶつかり合う。
「ぐうううう!」
ミサカズは必死に鍔迫り合いに押し勝とうとする。
メキ!
「かあああああ! 刀にヒビィイイイイイイ!」
メキメキ!
「さよなら、ミサカズ」
ゼロが力を込めると、ミサカズは両断された。
「た、たすけてくれ」
両断されたが不老不死であるミサカズは、血の泡を出しながらゼロに手を伸ばす。
ゼロは何も言わずに手を握る。
「え? 力が……」
「不老不死の能力含めて、皆から奪った力を返してもらう」
「な、なんでそんなことが……」
「なぜできるか。そんなことお前にはどうでもいい。お前は死ぬ。だからそれまでに、後悔し、皆に謝れ」
ゼロは冷たく手を払う。
「た、たすけてくれ……しにたくない」
ゼロは何も言わず、背中を向ける。
「しぬのはいやだ……しぬのはこわい……」
ミサカズはゼロに手を伸ばし続ける。
「し……に……た……」
数十回呟いた後、ミサカズは息絶えた。
「赤子さん、スラ子。終わりました」
ゼロの体から赤子とスラ子が分離する。
二人はミサカズから取り返した力で、以前と変わりのない力を手に入れた。赤子はもう太陽に怯えなくてよい。スラ子はもう怪我に怯えなくていい。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。以前よりも調子がいい」
「力、戻った!」
二人の顔を見て安心すると、グランドを見る。
「勝負あり。ゼロを真の勇者と認める」
拍手がゼロたちを包み込む。
「やった」
ゼロは小さく微笑み、拳を握りしめる。
「やったな」
「ゼロ、頑張った!」
赤子とスラ子がゼロに抱き着く。
「ええ! 二人と友達になれて、本当に良かったです! ありがとう」




