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あの日の夜へ

「過去に戻る!」

「ゼロに会える!」

 二人の目が光を取り戻す。


「ただし、お前たちは弱くなる」

 グランドは厳しい表情で言う。


「過去に戻り、未来を変える。それにはとてつもない代償が居る。その代償は、お前たちの力だ」

「私たちの力?」


「お前たちは一度世界を滅ぼした。過去に戻ればそれはできない。赤子は太陽の光に焼かれるようになる。スラ子は動きが鈍くなり、スライムを作れなくなる。下手をすれば死ぬこともある。最強の人間であるレビィはもちろん、イーストたちにすら苦戦するほど弱くなる」

「ゼロに会いたい!」


「本当に良いのだな? 戻ればミサカズすら簡単には倒せなくなる」

「ゼロを助けたいんだ!」


「戻っても助けられないかもしれない」

「絶対、守る!」


「死よりも辛い現実が待っているぞ。人間と同じ苦悩を味わうことになる」

「それがどうした!」


「良かろう」

 グランドは白骨化したゼロの遺体から、骨を一つ摘まみ、ギュッと握る。


「力を注いだ。戻ったらゼロに飲み込ませろ。そうすれば、この時間軸で何があったのか分かる」

 赤子がグランドから骨を受け取る。


「そこに立っていろ」

 グランドは二人の周りに魔方陣を描く。


「もう一度聞く。覚悟は良いな」

 描き終わると再度聞く。


「くどい!」

「絶対、守る!」


「分かった」

 グランドが呪文を唱えると、魔方陣が光り輝く。


「ぐぅ!」

「うぅげ!」

 二人は激痛に耐えるように、顔を歪める。


「アドバイスを送る。一つ、お前たちは時を遡ることで、ミサカズの時止めに対抗できるようになる。だからミサカズとゼロの声が聞こえたら、すぐに振り返って攻撃しろ」

 少しずつ赤子とスラ子の体が薄くなる。


「もう一つ! ゼロと協力して戦え。ミサカズは屑じゃない。人間という名、勇者という名のモンスターだ! それを忘れるな!」

 二人が目を瞑ると、目も開けられないほどの光に包まれた。




 二人は意識を取り戻す。

「俺が時を止めた」

「ミサカズ!」

 即座に振り返ってミサカズに殴りかかる!


 赤子の拳がミサカズの顔面にぶち当たる。さらにスラ子の蹴りでミサカズは吹き飛び、ドアを突き破る。


「二人とも!」

 ゼロが驚きの声を上げる。


「な、なぜ! 許可していないのになぜ動ける!」

 ミサカズも驚愕の声を上げる。


「か、体が重い!」

「体、遅い!」

 一方で二人も戸惑っていた。

 弱くなった己に戸惑っていた!


「畜生! てめえら全員ぶっ殺してやる! 覚えてろ!」

 ミサカズは二人が動けない隙に、よろけながら走り去る。


「ミサカズ!」

 ゼロはミサカズを追おうとするが、赤子とスラ子に止められる。


「どうしました?」

 震える二人に困惑する。


「こ、これを飲んでくれ」

「これ? 骨ですか?」

 ゼロは赤子から骨を受け取ると、怪訝な表情をする。


「ゼロ……お願いだ」

「ゼロ……」

 しかし、涙目の二人を見て頷く。


「分かりました」

 ゼロはゴクリと骨を飲み込む。


「ぐ!」

 ゼロは割れるような頭痛で頭を抱え込む。

 そしてそれが収まると涙する。


「赤子さん、スラ子」

「ゼロ!」

「ゼロ! ゼロ!」

 二人はワンワンとゼロに泣きついた。


「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」

 ゼロは二人を泣かせたことに、涙した。


「ミサカズ!」

 ギュッと目を瞑って怒りを溜める。


「絶対にお前を許さない! 必ず殺す!」

 ゼロは拳とともに、決意を固めた。


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