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クラスメイトと交渉、そして決裂

「さっさと運んで」

 エリカは冒険者たちに命じて、森の秘薬と超人薬の入った樽を運ばせる。


「これでイーストさんは返してもらえるよね?」

 ドキドキしながら質問する。

「当たり前でしょう! ところでちょっと暇? 皆でお茶を飲みましょう! 皆、あなたとお話がしたいの!」

 エリカは薄化粧の綺麗な笑顔を浮かべる。服装といい、お姫様みたいだ。


「分かった!」

 内心、ホッとする。これでこの騒動は終わる。


 戦いなんてしたくない。




「ここの部屋に入って」

 エリカに案内されたのは豪華な客室だった。エリカや他のクラスメイトの絵画が飾ってある。


「綺麗な絵だね」

「そうでしょう!」

 ガチャリと鍵がかけられる。


「何で鍵を?」

「良いから座って!」

 ニコニコと有無を言わさない笑みを向けられる。


「わ、分かった」

 椅子に座ると、周りを取り囲むようにクラスメイトが集まる。


「え、えっと?」

「よくも私たちを売ったわね!」

 エリカは対面に座ると冷たい目で笑う。


「な、何を言っているの?」

「惚けるんじゃないわよ! イーストを唆して私たちにけしかけたんでしょ! 知ってるのよ!」

 ギャンギャンと鼓膜が震える! 裂けそうだ!


「僕はそんなことしてないよ!」

「惚けるんじゃねえ!」

 後ろから椅子を蹴っ飛ばされて、床に転がる。


「お前のせいで私たちがどんな目にあったか分かっているの! 薄暗い牢屋に入れられたのよ!」

 エリカの靴底が顔面に迫る。


 スパリと、エリカの足が千切れる。

「え?」

 クラスメイトの腕が切り裂かれる。

「は?」

 血しぶきが部屋中に飛び散る。


「ゼロ。いくら私でも、我慢できないことはある」

 赤子さんが血しぶきの中立って居る。


「ゼロ? もう帰ろう」

 スラ子は血しぶきを浴びて真っ赤になる。


「い、いやぁあああああ!」

「いでぇえええええええ!」

「う、うでうででえええ!」

 クラスメイトは血の海で悶える。


「赤子さん? スラ子?」

 僕は呆然とするしかなかった。


「お前の命令でも聞けない」

「こいつら、殺す」

 赤子さんはエリカの首を掴んで持ち上げる。


「ゼロ……わたし……あなたが、すきなの……だからぁ……たすけてぇ……」

 絶望に涙するエリカが僕に手を伸ばす。


「私のゼロに声をかけるな!」

 エリカの首が千切れる。


「ぜ、ゼロ? お、おれたち、ともだちだろぉ? こ、ころすなんて……ひどいこと、しないよなぁ?」

 クラスメイトのイワサキが涙と涎を垂らして見つめる。

「ゼロ! 俺たちはクラスメイトだ! 仲直りしよう!」

 クラスメイトたちが命乞いする。


「うるさい」

 スラ子の指が棘となり、クラスメイトの脳を貫く。


 クラスメイトは、一瞬にして死に絶えた。




「……殺しちゃったの?」

 血まみれになりながら聞く。


「殺した。こいつらは敵だ」

 赤子さんの目は冷たい。


「……分かった。逃げよう」

「他の奴も、殺す」

 スラ子の目も冷たい。


「止めて……殺さないで……」

 二人を見ていられない。


 重苦しい静寂に包まれる。




「……逃げよう。二人とも、隠れてください」

 フラフラになりながら立ち上がる。


「ゼロ……私は、お前が好きだ」

「スラ子、ゼロ、好き」

 二人はポケットと影に入ってくれた。


「ごめんね……僕が強ければ……戦えれば、二人に辛い思いをさせないのに」

 僕は弱い。だから戦いたくない。だから仲良く成ろうとする。


「情けないな……」

 それに血がダメだ。痛みがダメだ。怖いのがダメだ。


 だから僕は仲良くなりたい。

 傷つきたくないから。


「僕って、やっぱり死んだほうが良いのかな?」

 グランドさんに見抜かれたのに、前に進めないよ……


 ああ! ぼやいても仕方がない。早く脱出しないと赤子さんとスラ子が多くの人と戦うことになる。


「声!」

 部屋を出ると右の階段から誰か上がって来る!


「左だ!」

 グランドさんの言葉を思い出して走る!


「急げ! 急げ!」

 異常なほど遅い足を動かす! 何でこんなに遅いんだ? 廊下が地平線の彼方まで続いているような気がする。


「何だこれは!」

 後ろで怒鳴り声が上がる!


「あいつだ!」

 見つかった!


「ゼロ!」

「出てこないで!」

 これ以上殺して欲しくない!


「何でこうなっちゃうんだ!」

 誰か教えてくれ!


 僕はどうすればいいんだ!


 そうやってパニックになっている間にも足音が迫る!

 心臓が破裂しそうな中、ようやく階段にたどり着く!


「早く早く!」

 果てしなく長い階段を下り続ける! 膝がギシギシ鳴って痛い!


「出口はどこ?」

 一階に下りて出口を探す。左の方向? いや、外は敵だらけだ! 逃げ場がない!


「そうだ! 階段の影に!」

 急いで階段の裏に回る!

 扉があった!


 ノブに手をかける! 鍵は開いていた!


 できる限り静かに中へ入る。


「どこに行った!」

 近くで声が聞こえると、ドタドタと足音が遠ざかって行った。


「助かった」

 ヘナヘナと腰が抜ける。

 もう嫌だ。


「お前は誰だ?」

 振り返ると男の人が鎖に繋がれていた!




「全く、可愛らしいほど残酷だね」

 ゼロが逃げ込んだ扉の前で、クラウンはクスクス笑う。


「それにしても、人除けの結界を張ったのに、よくここが分かったな?」

 しばらく考え込むが、すぐに仮面の下で笑顔を作る。


「僕よりも上手ってことかな」

 踵を返して扉から離れる。


「クラウン様!」

 外へ出ると警備の者がクラウンに駆け寄る。


「どうしたの?」

「エリカ様がゼロに殺されました! 只今捜索中です!」


「そっか。頑張って探してね」

 クラウンは興味なさげに手を振る。


「イーストはどうしますか?」

 警備の者はキツイ視線をクラウンへ向ける。


「殺してもしょうがないでしょう? 森の秘薬と超人薬は偽物だったんだから」

 警備の者は息を詰まらせる。


「くそ! あのガキ! 舐めやがって!」

 警備の者は悪態を吐くと一斉に走り出した。


「バードとザックに裏切られちゃったね。まさに知らぬが仏」

 満面の笑みで城の中庭に隠された地下牢に入る。


「イーストちゃん、元気?」

「……クラウン」

 鎖に繋がれたイーストは、腫れあがった目でクラウンを睨んだ。


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