クラスメイトと対面
「……大丈夫……だよね?」
馬車の中、体育座りでエリカたちが居る城へ向かう。赤子さんとスラ子は、僕のポケットと影に隠れている。
「私たちが居る。だから心配するな」
「ゼロ、守る」
赤子さんとスラ子が震える。
本当は一人で行きたかった。でも二人は頑なに拒んだ。時間も無かったから仕方なく認めた。
「ありがとう……ねえ? 絶対に出てきちゃだめだよ? もし僕が殴られても何もしちゃだめだよ? イーストさんが死んじゃう」
「ゼロ!」
「嫌!」
二人の意志は固い。
それはとてもありがたいけど、今はダメだ。
「大丈夫……僕は喧嘩しに行く訳じゃない。ただ、話し合うだけ。それだけだから」
森の秘薬と超人薬を入れた大樽を見る。
「これを渡せば、解決する?」
何で僕がこんな目に?
そう思っても答えは出ない。
「グランドさんなら、なんて言うんだろう?」
グランドさんを思い出すと、不思議と安心し、目を瞑ることができた。
「エリカたちの部屋から逃げたら急いで左奥の階段を下りろ」
グランドさんの声に顔を起こす!
周りを見ると、グランドさんと会える夢の中に居た!
「グランドさん!」
「話を聞け」
グランドさんは前よりも険しい顔で睨む。
何で怒ったのか分からず、声が出なくなる。
「一階まで下りたら階段の影に隠れるドアへ逃げ込め。その時は鍵が開いている」
「な、何を言っているんですか?」
質問するが、グランドさんは無視する。
「そこに一人の男が捉えられている。その男こそ北部騒動を終わらせるカギだ。その男とともに万年都へ逃げろ。イーストは安全だから無視して逃げろ」
「グランドさん?」
グランドさんは一方的に喋ると、ゆっくりと後ずさる。
「グランドさん……助けてください」
本心をさらけ出す。
「残念だが、もう私にできることは無い。ここで会うこともできない」
少しずつ、グランドさんの姿が消える。
「そんな! 助けてください!」
「だからこそ、ここで言うことができる最後の言葉を残す。悪意から目を逸らすな。知らないふりをしても、悪意は絶対に無くならない」
「グランドさん!」
顔を上げると、馬車の中に居た。
「ゼロ?」
「大丈夫?」
赤子さんとスラ子が、心配そうに前に座っていた。
「大丈夫、大丈夫だよ」
涙を拭う。
「さあ、隠れて。エリカたちにバレたら大変だ」
二人をポケットと影に隠す。
「ゼロ、見えたぞ」
馬車の御者を務めるバードさんが幌から顔を出す。
「分かりました」
深呼吸して立ち上がる。
「二人とも。絶対にエリカたちを殺さないで。お願い」
二人は沈黙で答える。分かってくれたと信じて馬車を出る。
「凄いお城だ」
俄然には、イーストさんのお城を凌駕するお城が建って居た。
「城門の前にお姫様が立って居る?」
バードさんが疑問の声を上げたので、城門の前をよく見る。
「エリカたちだ!」
エリカたち、クラスメイトが城門で待ち構えていた。
「バードさん、何かあったらすぐに逃げてください」
馬車を止めてエリカたちの元へ駆け出す。
「久しぶり! ゼロ!」
エリカたちは笑顔で迎えてくれた!
「久しぶり!」
笑顔で答える! これなら大丈夫そうだ。
「あれ? お供が居るの?」
途端に不機嫌な顔になる。
「あの人はすぐに帰るよ」
「なら帰して」
冷徹な声だ。
「分かってる!」
急いでバードさんのところに行く。
「バードさん、帰ってください」
「……ああ。赤子とスラ子、ゼロをよろしくな」
バードさんは荷台から森の秘薬と超人薬を下ろすと、Uターンしてすぐに離れてくれた。
「さあ! ゼロ! 再会を喜びましょう!」
「……うん!」
エリカと一緒に、作り笑いをした。




