0-1-01-06 あいつの声以外聞こえない
やあ、気分はどう?
……誰?
さあ、忘れちゃったな。僕はきみと友達になりにきたんだよ。
本当?
本当だよ。それに、本当のことを伝えに来たんだ。知りたい?
うん
まず、きみは悪くないじゃん。何で捕まったのかわかんないよね。悪いのは世界だよ。きみは世界に復讐する権利があるんだ。だから、僕と友達になって協力してくれる?
うん
みんながきみに優しくしてたのはね、きみのためじゃないんだよ。前の都主に頼まれたのさ。きみに優しくしたら、商人のみんなは豊かに暮らせるようになるって。みんな見返りがなきゃ優しくしてはくれないんだよ。
でも僕は友達だから。友達は優しいんだ。見返りなしに優しくするものなのさ。僕のことは信じてくれるよね?
うん
それに、きみはそこで生まれたわけじゃない。捨てられたんだよ。お母さんもお父さんもいないじゃん。
……。どうして知ってるの?
マスターから教わったんだ。マスターは何でも知ってる神様みたいなものだよ。
神様?神様なんて本当にいるの?
いるよ。でもきっときみが会ったら嫌いになると思う。だって本当の神様は、きみが独りになるように仕組んだ張本人だからさ。
だから、本当の神様は、嫌いになったらやっつけて、僕のところに返ってきてね。
うん、わかった
友達だもんね?
うん
じゃあここから出ようよ。こんな暗くてじめじめして怖いところ、嫌だろ?
うん
、よっと。はいこれ。困ったらこの瓶を使うんだ。
うん
じゃあね、 。後で会おう──────────
─────ジメジメとした暗闇の中、俺はあいつの声しか聞こえなかった。あいつの心の声は一言も聞こえなかったし、それを考える暇すら与えなかった。