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第二章①

 私は目を覚ました。

 変なカプセルの中ではなく、ベッドの上で寝ていた。

 薄くて白い布団を被せられ、拘束衣で寝ていた。

 腕を交差させられ、足もベルトで括りつけられるように固定されていた。

 外そうとしても外れない、動かそうとする度にガチガチと金属が擦れるような音がする。

 どうやら鎖を巻いているようだった。

 ここまでするのか?よっぽど私は警戒されているようだな。

 揺れる水面で見た顔を見る限りではそこまで怖い顔をしてなければ、筋肉ばっかりのゴリラ女ってわけでもなかったがな…。

 いやまぁ、結構もしかしたらブサイクかもしれないけどさぁ…というか警戒するとこが肉体的な拘束か?

 多分、私は超能力者だぞ?というかマヤナって女が警戒していたのは超能力じゃないのか?

 私は色々考えていたが、周りが静かだった。

 夜なのか部屋は暗かった。

 僅かに私の心拍数等が映っていそうなモニターの光が周りを照らす。

 目が暗闇に慣れると病院にあるような白いパーテーションが見えた。

 パーテーションの向こう側に寝息が聞こえる。

 見張りが寝ているんだな。

 多分、これもマヤナの指示だな。

 自由の身になったら真っ先に殺してやる。

 しかし、拘束衣を着ていては何も出来ない。

 周りの状況ももうちょっとで良いから知りたい。

 すると、何かの音が鳴った。

「…ん〜なんだぁ…起きたのか?」

 男の声が聞こえると天井に向けて小さな光が照らされた。

 ベッドから降りたようで足音が聞こえた。

「ん〜どうやら、起きているみたいだな…」

 すると光が瞼の隙間から入り込む。

 反射的に顔をビクつかせてしまった。

「こちらアキヒコ・キムラ、三時二十二分、0四0九号室にてTHX-一一三八CAの起床確認…」

 しまった、起きてはいけないタイミングだったのか?

 いや、違うぞ…これは絶好のチャンスではないのか?

 テレパシーで…こいつの名前はアキヒコと言ったか…こいつに話してみようじゃないか。

 私は顔を少し上げて目を開いた。

 ボンヤリとした光の中でアキヒコが立っていた。

 茶髪の若い男でペンライトを右手に持っており、少しカッコよかった。

 アキヒコは私と目が合うと焦った顔をしてどこかに連絡を取ろうとした。

「こちらアキヒコ・キムラ、THX-一一三八CAが体を起こそうとし、こちらを見ています…」

 逐一報告するようになっているのか臆しているのかは知らないがちょっと幻滅したかな。

 でも顔は良いしな、()()()()()か…。

(大丈夫よ…アキヒコ…さん…かな?私…トイレに行きたいの)

 テレパシーなら声は出せないと思ってくれるはず、ましてや若い男だ。

 ちょっとでもリアクションがあるはずだ。

 するとアキヒコは顔を強張らせたまま口を開こうとした。

(待ってよアキヒコ…これはテレパシーよ…考えるだけで良いの、良いか悪いかだけ答えて…)

 少し間があったがアキヒコは苦笑いを見せた。

「何だお前、もうテレパシーを使えるのか、結構積極的に能力を使うんだな…」

(そうよ、ねぇ、どっちなの?良いか悪いか…)

「そんなに焦るなよ、もう一人呼ぶから待て…」

(はいはい…)

「こちら、アキヒコ・キムラ、THX-一一三八CAが排泄行為を要求、至急応援頼む」

 自分から言っといてなんだが、なんか他人に言われるのって恥ずかしいな。

「了解、すぐ来るから待っていろ」

 それは良いとしてアキヒコだけでなく他の奴も意外と警戒心はないみたいだ。

 またはスキャンされて体を破裂させられるよりかはマシと考えたかもしれないな。

 なんならもう少し警戒心を解くためにコミュニケーションを取るか。

 というか聞きたいことが山程あるんだ。

(今は何年何月何日何時何分何秒地球が何回回った時?)

 するとアキヒコはまた苦笑いを見せた。

「なんだそりゃ、つまんねぇ…」

(まぁ…だろうね)

「今は西暦二0七九年九月四日三時二十五分だ、というかテレパシーでしか話せないのか?」

 こいつ意外と馴れ馴れしい奴なんだな…いや、それは私も同じか…。

(…そうね、今はテレパシーでしか話せないね…結構寝ていたし、体だってツルツルみたいだし、話そうとしても変な声出しそう)

「テレパシーになると饒舌なんだな、いや、()()()()か」

 よしよし、こいつには何話したって大丈夫そうだな。

(…じゃあさ、そもそも私は何者なの?あなたは分かるかな?)

「いやいや、俺はそんなことは知らねぇよ…というか自分自身のことだろ?自分が一番分かるもんじゃねぇか?」

 そりゃあ、そうだが、記憶がないんだから仕方ないじゃんね…。

(それじゃあ、私のことで知っている限り話してよ)

「実験体THX-一一三八CA、二0二九年三月二十五日に第一号人物としてコールドスリープ開始、コールドスリープ前の年齢は二十八歳、西日本出身の血液型は0型、超能力を使う女ってとこかな…」

(西…日本?そう言えば、日本は今、東西に分かれているんだっけ?)

「…そうだよ、まさかお前勉強してないのか?二00一年の同時多発テロで東京は半壊状態になって新政府を神奈川に置いたのは良かったが…本性子午線を基準に東西に分かれさせたんだ…」

(そうだったね…)

「というか生まれた時から分かれているじゃないか…なんで日本が統合されていることになっているんだ?」

 なんでだろう…何故か西日本という表現に違和感があった。

「あ、後な…いや、これは完全に俺の個人的な意見だが…お前は美人ではないな…」

 こいつ顔は良いんだけどね…性格悪すぎない?というか私の名前ないのかよ。

(はいはい…それで?他に分かることはないの?)

 少し不機嫌な言い方をしてしまったがアキヒコは気にすることはなく続けた。

「ん〜そうだなぁ…多分、上の人達はどういう存在かは分かっている風だったが、そこまで把握出来てないってところじゃないのか?」

 それはそうかもしれない、私は()()()だもんね。

「そもそも分かっていたらコールドスリープを解除したときから拘束衣を着させたりするもんなのか?」

 ん〜場合によりそうだけどねぇ、でも結構警戒はしている感じなんだからもうちょっとは分かってそうなんだけどなぁ…。

(後さ…マヤナって女と私は似てるけど一体何者なの?)

「マヤナ?マヤナ…様はこの研究所の実験体でもあり、冷戦を終わらせる()()()()みたいなんだってさ…」

 あ〜こいつはなんも分かってないんだな…多分、そこまで情報を出してないな。

(あれあれ?実験体なのにマヤナ様って様付けなんだ?)

「そりゃあ、だってさぁ…かなり強いからな…」

(なるほどね、それは…確かにね…)

 実際にあいつは強い、人間を脳波だけで殺すことが出来るし、私の一歩前に行っている。

 予知夢から目覚めた後もすぐに私を殺しにかかったけど、マヤナは多分セキュリティーシステムのような役割も兼務しているのかもしれない。

 実験体というのは気になるが冷戦というのはなんだ。

 あ〜分からない、スマホかパソコンで調べたい。

 本でも良いが…いや、それも大事なんだが…私は何者なんだ?

 西日本と東日本についてもそうだ…関係してそうだ…。

 私自身にその力はなくても私を()使()することによって何かを成し遂げることが出来るのかもしれない…。

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