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第一章②

「TH…ですが今は…ております、実験中止後には鼻出…がそれも現…られません…」

「原因…が、実…か呟いていました、ビデオに収めら…ます」

 若い男女が話し声が聞こえると目が覚めた。

 目を開けると私は何かの中に入っていた。

 青白い水の中に口と鼻を覆うように呼吸機が付けられていた。

 目の前には研究員というか白衣を着た男女と初老の男がいた。

 どうやら私は何かの実験台のようだ。

 何がなにやら分からない、私は何者でどこから来たんだ?

 それすらも分からない、どうする?尋ねてみてもいいが…それが出来る立場なのかも分からない。

「何を…も聞こえなか…か?」

「は…申…りません」

 それにしても途切れ途切れでしか聴こえないのは不便だ。

 もう少し鮮明に聴くことは出来ないだろうか?

 何か出来そうな気がしないわけでもないが、方法が分からないと出来ない。

 人間というのは…いや、そもそも私は人間なのかそんな些細なことはどうでもいいか…。

 とにかく何もかも最善を尽くすことを出来るが結果が最高であったり、最大であったりする場合は少ない。

 逆に最低であったり、最小であったりする場合も少ない。

 腹の丁度良い満たし方が八分目であるように二割から八割で成果が収まるものだと私は考えている。

「今、THX-一一…夢を見…ます…今までの…から見ると彼…身にどこかで見…情景として処理されており、更には本…を何か伝えようと…ことも…おります」

 若い男が話している。

 すると若い女が近付き、私の顔を見る。

「起き…わよ、私…てるよ?ちゃ…モニター見てるの?まつ…ない目で見…?」

 近いためか声が少し鮮明に聴こえた。

(若いようだが私の方が美人だ…)

 と思っていたら「失礼な子!上も下も丸坊主のくせに!!」と怒鳴られた。

(え?私って()()()()()なの?恥ずかしい…)

「そうよ!胸もあんまりないし、くびれもない!まるで子供よ!」

(丸坊主の私とこの女と比べたら向こうの方が美人か?うん、まぁ、そうだよな、それは悪いことをした、謝るよ)

「そう、分かればよろしい」

(というかあなた達趣味悪いね、毛全部剃るなんて変態みたいじゃない)

「な、変態って何よッ!?私の趣味じゃないわよッ!毛は不純物なのよ?一応ね!確かに生やしたまんまでもいけるかもしれないけどさぁ、伸ばしっぱなしだと手入れとか大変なのよッ!?変なこと言わないでッ!」

 うわ、よく喋る奴だこと…。ガラス越しでしかも水が満たしているのに頭が痛くなるぐらい響くじゃないの…。

 あれ?そう言えばなんで私達話せるんだ?

 耳が良い?いや、そんなわけないしな…。

 もしかして…心が通じ合ってる?いや、違うな…。

 もう少し科学的に…というかしっかりとした概念の言葉で言うと…。

 すると若い女の右肩を初老の男が持つと少し表情を硬し、女を私から遠ざけて少しきつめの口調で話し始めた。

「…付くな、彼女…者だ…西日本の人間兵器にしてあの…最強と名高…恋人だと…いるんだぞ?こんな強化ガラ…すぐに割られてし…だ」

 更にゆっくりとした口調で話す。

「それに今、彼…ったか?…半年間脳波ですら発して…たのだぞ?」

「えぇ…しかし、現に…会…ましたよ?」

 彼女の困惑した表情と心が理解出来た。

 どうやら私は半年意識がなかったみたいだが徐々に回復したようだ。

 原因は分からないが研究員なのにやっていることは医者みたいだ。

 それにしてもやっぱ、ちゃんと聞こえない…ということは…。

「どうして分かっ…?どう…会話した?」

「テレパ…やつで…かね?」

 若い男が言った。

「ちょっとも…度やっ…みろ、な…でも良い、テ…本当…証…て見せろ!」

 初老の男がそう言うと彼女は私の方を向いた。

「両手を広げて」

 彼女の声が聞こえた、私は両手を広げた。

「そん…鹿なッ!しかし、現…広げ…そう…ったのか?」

 どうやら会話が出来るようだ。

 助けて欲しい、私はそう伝えたい。

 すると彼女は頭を抑えた。

「い…痛い!テレパシーではない…いや、テレパシーならば止めて欲しい…強い…頭に…何かが貫いているような痛みがする…止めて…止めて…」

 彼女がそう私に伝える。

 しかし、私は彼女に伝えないといけない。

 私はここから出たい、何者か知りたい。

 いや、分からなくても良い。

 しかし、外を知りたい。

(私を実験台にするのならば私が誰なのかを知らせるべきだ)

「誰なのかって言われても…私はただの研究員…」

 そう彼女の言葉が聞こえると彼女は膝から前のめりに倒れ込み、痙攣し始めた。

 若い男が彼女に駆け寄ると私に何か怒鳴っている。

「やっ…いつは危…ッ!」

「殺すし…な、直…チームを呼べッ!」

 殺す?嫌だ、死にたくない。

 そう思った私は目を見に開き、呼吸器を外した。

「…た?やば…まで力をつけ…たのか?」

 何か言っているようだが構わずに私は叫んだ。

「止めてッ!!」

 パァーンッ!!

 部屋に音が響き渡る。

 一気に水は流れ出し、研究員達の足元や倒れた彼女を濡らしていき、視界が赤く染まっていく。

 何が起きたのか?そう思った直後だった。

 警報灯が点き、サイレンが鳴り響いた。

「警戒レベル五、警戒レベル五、0四0九号室にて、実験体THX-一一三八CAを直ちに捕らえよ、生死は問わない…繰り返す…」

 天井のスピーカーからは恐らく私のことだろうと思われることを言っていた。

「ダ…ダメ…逃げて…」

 彼女が私に言う。

 彼女は鼻や耳から口からも血が出ていた。

 更に白い服が赤く染まっていた。

 足からも血が流れていた。

 どうやら穴という穴から血が流れ出ているようだった。

 そんなことよりも…くっそがぁ…ッ!…立ち上がれ…私…。

 よろよろとまるで産まれたての子鹿のような足腰のフラつきを乏しながらも必死に力を入れて立ち上がる。

 長い間立ってなかったようで足がちょっと細い、ちょっと殴られただけで骨折しそうな肉付きをしていた。

 足の爪もきちんと切られていた。

 どうやら手入れをしていたのは毛だけではなかったようだ。

 そして下も確認すると彼女の言う通りだった。

 しかも()()()()ようにしてある。

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