氷窟パズル②
私は他に情報が得られないか、この氷の台の観察を始めた。
冷たくて堅そうな一様な地面。寒そうな色をしているが、実際はここにいて体の芯から凍えるということはない。氷の地面は塊があるところ以外は一面ツルツルで――。
いや、まてよ。
滑り着いたところから一マス左――つまり南を見ると、表面が階段と同じくらいにザラザラで、摩擦の大きそうな床があった。
試しに片足を乗せてみると、靴底と地面ががっちりと噛み合ったように滑らない。
おお?
……そうか、この上では方向転換ができるんだ。ここのルールの情報追加だね。
これをうまく利用できないと、こういうのは解けないものなんだよね。
他に行けそうなところは無さそうなので、その床の上に乗ってみた。ここから北と西方向は断崖絶壁、東と南方向は山のような形の氷が見える。
また二択か。
じゃあ……今度は、比較的遠くに見える東に行こう。
滑っていく途中、周りを気にかけていた私は、右手側にもう一カ所、摩擦床があるのに気付いた。バランスを崩して転ばないように振り返ると、その床の後方直線上にゴールらしきものが見える。
最終的にここに着ければクリアみたいだな……。
ゴツンッ
「いたっ!」
よそ見しすぎたせいで、壁に到達したのに気付かず、体全体で氷の塊にぶつかってしまった。
……うわ、恥ずかしい。
ちなみに、とっさに痛いって言っちゃったけど、実際そんなに痛くはない。
着いた場所は、北と東の二面が氷で囲まれたところだった。今、西から来たので、残るは南だけだが……。
また違ったのかな……?
ストッパーとなりそうな氷の塊は見えなかった。もと来た道を戻ろうかと、体の向きを変えたのだが、
「……あれ? 何もない?」
壁となるはずの氷の塊が、直線状にはなかった。
なんでだ?
確か……って、あっそうか、さっきは摩擦床から出発したからだ。
ということは……。
「おーい、きなちゃーん! ちょーっと聞きたいんだけど、私のいるところからまっすぐそっちに行った所に、表面がザラザラした床ってある?」
私の言葉が届いたようで、きなちゃんは通路手前の小さな空間をちょこちょこと移動し、少し経ってから両手で大きな丸を作った。
よし、思った通りだ。
床の違いが遠くの距離では判別しにくいなら、もしかしたら滑った先にあるのかも、と思ったのだ。
少しの勢いをつけながら、そっと重心を前にして、私はゆっくり南下した。
さすがにスピードを殺しすぎたかと、遅さに若干の緊張を感じながら、私は台の一番端でようやく止まった。一歩先は光の届かない断崖絶壁になっている。
ふう、ドキドキした……。
着いたところは、一番初めの通路が右手側近くにあり、影人ときなちゃんの顔もはっきり見える。
「たぶん、もうちょっとだと思うよ」
二人に声をかけてから、迷わず氷の塊がある西方向へと進んだ。
んー、やっぱりよく見えないな。
私は北を向いて、目を細めた。
きっと、先ほど見かけた、ゴール一手前だと思われる摩擦の床があると思ったんだけど。距離からして厳しいか。
それに、試しにここで北に進んだとしたら、今いる所の南に壁などの障害物はないので、引き返すことはできない。
例の床を確認がてら、そろそろ待機してもらっている二人を迎えに行くとしよう。
土下座の思いで再開です。
まさかこんなに空くとは思っていなかった…
「君のために、まわれ」を完結させてから、とも思っていたのですが、パズルの途中で放置もなかなかに酷いと思ったので…
氷窟内での流れは全部考えてあるので、見捨てないでくれるとうれしいです。