いざ、氷窟へ
「こっちで合っているんだっけ?」
「方向は間違っていないと思うけど」
「少し空気が冷たくなってきているので、合っていると思います」
私たち一行は、例の氷窟を目指して歩いているところだ。
初めは比較的平らな草原だったが、途中から雪と氷で足場の悪い地面に変わったうえ、一人は視界を塞がれ、一人は足を封じられている状態なので、ひたすらゆっくりだけど。来曰く、例え浮いていると言っても、魔法を連続で使い続けるのは疲れるのだそうだ。魔法も便利なだけじゃないんだね。
ふいに、私の服の裾がくいと引っ張られるのを感じた。
「ん?」
そちらを見ると、きなちゃんが向こう真っすぐを指差している。目を細めてそちらを見ると、遠くにぼんやりと白いドーム状のものが見える。おお、たぶんあれが目的地だろう。
「あっ、ホントだ。見えてきたね!」
白い空と同化してしまいそうな氷の洞窟。それを見つけたことに感心した私は付け足した。
「というかきなちゃん、目いいんだね!」
私が悪いだけかもしれないけど。きなちゃんは照れたように目線を逸らした。
……このメンバー、褒められ慣れてない人多くない?
「本当だ、もうすぐだな!」
目標が見えて元気の出た私たちは、黙々と残りの距離を縮めた。
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「あっれ……意外と小さいな」
目指していた氷窟を前にして、来は率直な感想を漏らした。
白く濁った氷のブロックが隙間なく積み上がり、一つの建造物を成している。が、あの俯瞰映像から想像していたよりは、規模が小さいような気もする。
そうは言っても、私たちの背丈よりは十分高いし幅もずっとあるのだけど。ただ、中にそれほど多くのものがあるとは思えない。
「あの、氷窟は確か、地下に続いているはずですが……」
「へえ! じゃあこれは、ただの入り口ってことか?」
「そういうことになりますね」
「……影人はなんで、そんなこと知っているの?」
「え、以前本で読んだことがあるので、もしかしたらと思っただけです」
かまくらとも思えるドームの側面にそって、私はぐるりと歩いてみた。
ずいぶん昔からあるような、どっしりとした佇まい。中にはどんな秘密が眠っているのだろう?
「あっ、入り口発見」
単調な外壁の一部に、少し屈めば入れるくらいの穴が、ぽっかりと空いていた。
中からはよそ者を歓迎しないと言わんばかりに、肌寒い冷気が流れてくる。
私は皆が入り口に集まるのを待って、声をかけた。
「何があるか分からないし、気を引きしめていこう」
長らくお待たせしてしまいすみません……
月1更新を目指しますが、今後どのようになるのかまだ分かりません。
ようやく冒険が始まりますよ!!!