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可創源日  作者: 空端 明
序章
5/10

合流

「ふーー」


 朝に家を出てから、ようやく一息つけた気がする。私は大きく息を吐き出しながら、ベッドに座り込んだ。フカフカのベッドに沈みながら、私はこれまでのことについて振り返ってみた。


 夢に現れた白の精、呼び出されて移動して、こんなところまで来てしまった。

 そういえば、二人とも、封具について全く驚きを見せていなかった。たぶん、ここの人たちにとって、知って当然の事柄なのだろう。私がこのことを知らないってことを言うべきなのかも、正直迷う。必要があればでいいかな。

 それに、あの白の精も謎なんだよなあ。本心が見えないというか、本当にしたいことは何なのだろう。


 ドンドン!


 また扉の叩く音がした。


「よっ、星河(せいが)! 連れてきた!」


 (らいき)の声が威勢よく響き、今度は返事する前に扉が開かれた。


「紹介するな。あっちは星河。で、こっちがきなだ。」


 来は交互に示した。きなと呼ばれた子は、私たちよりやや幼い見た目で、水色の髪を前でゆったりとリボンで二つに結っている。


「きなちゃんの封具は……」


 覚えたての言葉を使ってみた。例の無機質な物体は、彼女の首をぐるりと一周している。


「見ての通り、声だな」

「だよね」


 と言ってはみたものの、首を封じたらどうなるんだ? とか考えていた。

 常識がないってツラい。



 そのとき、聞き覚えのある声が響いた。


 ――冒険者の皆さん、初めまして。お集まりいただき感謝します――


 白の精だ。夢の時よりも無感情で、森で話した時よりも厳かな雰囲気が感じられた。

 案の定姿は現さず、私たち四人のちょうど真ん中あたり、天井付近から声が聞こえている。


 ――これからあなたたちには、この四混の地を旅していだたきます――


 白の精がそう言うと、あの夢の道案内と同じように、脳裏に風景が広がった。はじめにこの宿が映ると、次第に小さくなり、より広い範囲が見えるようになると、映す場所を左に移動した。

 映像はどこか遠くから俯瞰しているらしく、一目で違うと分かる四つの地形が、はっきりと見えた。

 上を北とすると、北東に灰色の雲のかかったオレンジの砂漠、そのやや南西に氷でできていると思われる青白い洞窟が、その更に西には鬱蒼とした森の緑が広がり、その森を北に進むと、赤みがかった火山が構えている。


 なるほど、確かにこんな主張の強い四つが、これほどの近さで共存しているとは、普通では考えられないのかもしれない。


 ――旅する順番はあなた方にお任せします。ただし、四人全員で同じ土地を巡ること。

 また、この空間では空腹や排泄などの心配は要りませんので。ただし、体力の疲労は睡眠によって癒すようにしてください。

 最後に、一つ注意を。皆さんに旅していただくのは神聖な場所ですので、どうか落し物などはなさいませんようにお願いします。

 それでは、健闘を祈ります――


 それから、白の精の言葉は聞こえなかった。


 しーんと静まり返った中、口を開いたのは影人だった。


「……もう出発しますか?」

「私はいいけど……みんなは休まなくて大丈夫?」

「俺はいいよ。きなはさっき着いたばかりだけど、疲れてるか?」


 きなちゃんはふるると首を横に振った。


「じゃあ、下に降りようぜ」



 ロビーのテーブルの一角に、私たちは向かい合って腰を下ろした。柔らかな灯りに照らされ、木のぬくもりが感じられる心休まる場所だ。

 ここには、私たち以外に客はいないらしく、宿に着いたときに出迎えたあのメイドが一人、待機しているだけだった。というか、逆にこんな立地で働いている人がいることの方が驚きだ。失礼かもしれないが、そんなに客が入るとは思えないし。

 メイドが、私たちが席に着くのを見届けた後、飲み物の注文をとり、用意してくれた。親切にもストローがついているので、お行儀は悪いが私も難なく飲める。


「さっそくだけど、どっから廻るか決めようぜ」


 来が切り出した。


「ええと、先ほどの映像からすると、砂漠と氷の洞窟がここから近いみたいでしたね」

「そうだね。やっぱり引き返さないで、ぐるっと一周できる方がいいよね」

「確かにそうだよな。きなはどう思う?」


 唐突に来が尋ねた。

 そういえば、どうやって彼らは名前を訊き出したのだろうか。

 そう思っているうちに、きなちゃんは持っていたリュックから、ごそごそとスケッチブックとペンを取り出した。

 そっか、筆談か。準備がいいことで。


『わたしも、同じいけんです。』


 小さくて丸っこい可愛らしい文字だ。本人の性格を表しているみたいに思えた。


「オーケー、じゃあ砂漠か氷窟のどっちかだな」


 そう言って、来は飲み物のグラスを傾けた。

 うーん、どっちの方が効率いいんだろうね? 個人的に、疲れそうな山登りは後回しにしたいから、砂漠から時計回りに行くのがいいかな。


「俺なら……うーん、実際どっちでも変わらないような……」

「私は、火山は最後にしたいなー」


 私もストローを口に咥えつつ言った。


「あの、さっきの映像で見たと思うのですが、氷窟の西側は一面に氷が張ってあったので、そこから森へ進むのは、難しいのでは……?」


 そうだったっけ? 私はそこまで注意深く見ていなかったぞ。

 というか、封具があってもあの映像は見られたんだ。……だからこそ、風景にだけ集中できたのかな。


「影人、よく見てたね」

「俺も同感だわ。さすがだなー」

「い、いえ、そんな……」


 影人は褒められて、慌てながら少し照れた。


「それじゃあ、最初に氷窟に行って、次に砂漠に行ったあと、森、火山の順番でいいか?」

「うん。そうしよっか」

「僕もそれでいいと思います」

『さんせいです。』


 満場一致の決定だった。


「それじゃ、出ようか」



 そこで全員、飲み物のグラスを殻にして、宿から出た。

 こんな一気飲みして、あとでトイレに行きたくならないかな……。ここだとそれも大丈夫なんだっけ? どれだけ便利なんだ。ずっと居たいぞ。

7月中にもう一話出せてよかったー(*'▽')

そして、イラストの方もようやく描けました!

登場人物の見た目もあるので、よかったら見に来てください!

(http://tegaki.pipa.jp/710090/25218023.html)

(http://tegaki.pipa.jp/710090/25221657.html)

※検索ではなく、URLのところに直接ブチ込んでください。


次話から章が変わります。

感想等あったら、頂けるとむちゃくちゃ喜びます。

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