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可創源日  作者: 空端 明
序章
2/10

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 初夏の薄柔らかい日差しが、東の窓から部屋中に射し込んでいる。暑すぎるでもなく、布団の誘惑に捕えられるでもなく、さっぱりとした気分で目を覚ました私は、先ほどの夢の内容を思い返していた。


 あれは単なる夢ではない。

 あの空間で、私は何度も、通常では会うことのできないあの人の意思を聞いたのだ。

 今回の内容は、助けてください……か。

 特に断る理由もなかったし、あの流れで断るなんて私らしくない。最近は時間を持て余しているのも、悲しいことに事実だ。ちょっと乱暴だけど、暇だったから、と言っても過言ではない。

 あ、でも、白の精はいつ来てほしいのか、言っていなかったような……。すぐなのかな?


 私は首を傾げつつ、簡単に朝食を用意した。


**********


 本当にあった……。


 半信半疑のまま歩くこと三十分。伸び放題の草をザクザクと踏み分け、夢で見た通りの道をまっすぐ辿った先に、夢で見たあの大木が存在感たっぷりに、二本仲良く並んでいた。

 見上げんばかりの大木は、さながらこの森の主のようだ。


 朝食のあと、夢の冒頭での彼女の必死さを思い出して、私はすぐに出かけたのだ。

 時間は余るほどある身だ。違ったら帰ればいい。

 だが、待ち合わせ場所に着いたというのに、人の気配はない。


 あー、人じゃないんだっけ……精霊?


 ぐるりと辺りを見回す。植物ばかりがたくさん生えている場所だ。木に実った青い果実は荒らされることなく実り、大小さまざまな花々があちらこちらに咲き誇っていて、背の高い草は誰かに踏み倒されることなく、天を目指して生えていた。

 生き物の気配がないと言うよりも、長らく誰も訪れてないと言った方がふさわしいのかもしれない。その一方で、豊かな自然が寄り添うように生きるこの場所は、不思議と寂しさを感じさせなかった。

 やはり、今すぐではなかったのかと思い、引き返そうと来た方向に向きなおしたときだった。


「星河さん!」

「白の……あれ、どこ……?」


 朝のそれと同じ声が聞こえたので、はっと振り返った……のだが、声の主はどこにも見当たらない。

 風が優しく通り過ぎるだけだった。


「ふふふ……ごめんなさいね。こっちです。この木の中から話しかけています」


 私は体の向きを、くるりと再び木の方へ変えた。

 言われてみれば確かに、目の前の巨木の右から声がしているように思えた。


「姿を現すには更に力が必要なのです。あまり無駄な力は使いたくないので、声だけで勘弁してくださる?」

「えっ……まあ、構いませんけど」


 何かワケあり、という雰囲気を漂わせた。まあ、だから私を呼んだのだろうけど。


「では、さっそく本題に入りたいのだけれど……星河さんは四混(しこん)の地の冒険者の話はご存知かしら?」

「いいえ……?」


 この世界特有の伝説とか言い伝えの類だろうか。もしそうだとしたら、私は今までそういうことには関わらないで生きてこられたせいで、ほとんど精通していないのだが。


「四混の地というのは、本来相容れない四つの地形が、それぞれの力が等しく強靭なため、打ち消しあわずに共存している場所のこと。そこを、昔旅して回った人たちの話です。そして――」


 そこで白の精は、言葉をいったん切った。この静寂な場所では、それだけで空気が引き締まった。

 それから一層明瞭とした声で、彼女はこう続けたのだ。



「あなたには、その四混の地へ行ってもらいたいの――冒険者として」



挿絵(By みてみん)

告知イラスト完成したら次あげようと思いながら、全く時間がとれないままでした。

結局、序章が終わってからのイラスト公開でいいかなーっなったので、投稿再開します。



2015/12/20追記

挿絵を追加しました。

ちなみに今まで通りのサイトだとこちら→http://tegaki.pipa.jp/710090/25316415.html

ついでに若干加筆修正加えました。

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