夢の呼び声
夢を見た。
あの日、あのとき見た風景と、全く同じだったから、またあの人が訪ねてきたのかと思った。
この宇宙色の空間のなかでは、感情があまり揺れなくなる。なので、さして驚きはしなかったが、広いだけの空間に現れたのは、全くの別人だった。
――いや、人……なのかな?
長く伸びた白い髪の間から覗く耳は先がとがっていて、背中から水色の薄い羽が左右合わせて四枚生えている。体全体の大きさは、私の掌に満たないほどだ。
妖精、という言葉が思い浮かんだ。
「助けてください」
その妖精がこちらを見て、一心に頼んでいた。
「私……? 助、ける……?」
思うままに、声に出ていた。
「ああ、よかった。返事をしてくれた……」
妖精はほっと、安堵の表情を浮かべる。それから彼女は自己紹介を始めた。
「はじめまして、星河さん。私は、『白の精』と呼ばれている精霊です。助けると言っても大層なことではありません。少しだけ、力を貸してほしいのです」
「えっと、何をすれば……というか、どこから私の名前を?」
「ふふ、秘密です。でもあなたなら、この空間を見て想像がつくのではないかしら」
じゃあ、やっぱり、あの人が?
「……可々視さん?」
白の精は、ただ微笑むだけだった。
「さて、お願いする内容ですけど」
「あ、はい」
「できることなら、ここではなくて、直接会って話したいのですが……」
白の精がそう言うと、私の目の前には突然、この空間とはまったく違う鮮やかな色が、滲むように広がった。
次第にそれは輪郭を成し、どこかの風景を表し始める。
それは、今私が住んでいる建物の裏から続く森だと分かった。
映像はそこから奥へ移動していき、最後に特徴のある二本の大木を、遠くにぼんやりと映し出した。
「もしよろしければ、ここまで来ていただけませんか?」
「……いいですよ」
ふーっと軽く息を吐き出してから、了承を示した。
というか、こんなところもあったんだ。
こちらに来て、まあまあ時間が経った気もするが、正に灯台もと暗しと言うことか。
せっかくの機会だし、見てくるのも悪くないかな。
「わあ、ありがとうございます!」
「で、あの、私は具体的に何をするのか、まだ分からないままなんですけど……?」
「ちょっと冒険をしてもらうだけですよ」
白の精は、いたずらっ子のように笑った。
区切りを考えたら短くなってしまいました。3話まで短めの予定です。
イメージイラスト→http://tegaki.pipa.jp/710090/25112083.html
10/23追記
みてみんさんに登録をしたので、挿絵として公開しました。
ですが、おまけでマンガ風のものもくっついているので、URLの方も見に来て下さるとうれしいです。