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月と狼
ある妖しい光がうつくしい月の夜のことです。
自分の森に誰かが入ってきたと気づいた狼。
彼は侵入者に近寄ります。
すると侵入者である人間は言いました。
「ち、違うんです!
満月の夜にあいつが大猿になると聞いて」
そう忙しなく視線を動かした後に、指さしたのは1匹で遊ぶ猿。
「だ、だから僕は悪くないんです」
そう言って狼の元から素早く走り去っていきました。
狼は小さく首を振りました。
そしてふと思ったのです。
我が森でわたしが1晩もの間、たった1匹の猿を見て過ごすのも悪くなかろう。
彼は伏せをし、前足十時に重ねその上に顎を乗せ、のんびりと猿を眺めました。
長い長い夜。
うっかりと狼はウトウトしている隙に、陽が昇ってきた様です。
彼はうーんと体を伸ばすために伏せから起き上がり後ろ足に重心をかけました。
するとどうでしょう。
狼が見た不思議な光景。
彼の毛むくじゃらの前足の先にあるのは人間のように生えた指。
……
その夜以降の満月の夜毎に、「狼の森」から2本足の生き物が、とある人間を探すために歩き出したそうです。




