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童話っぽい短編集  作者: 如月ふたば


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欲望への翼

 V字で飛んで行く鳥たちを眺めていた地上で這う蛇くん。

「あんな風に皆で空を飛べたら、僕たちを嫌う人たちからびゅーんって逃げられるのに」


 巻いていたとぐろをほどいて、のんびりとお散歩に出かけました。


 お散歩先で出会ったのは仲良しの神様。

 神様お気に入りの大きく苔むした岩に腰かけていたのです。


「こんにちは神様。今日は一段とご機嫌ですね」

「そうなんじゃ、良いお天気じゃからのう。心もほくほくなんじゃ」


 ご挨拶をした蛇くん。

 神様はなんだか彼の様子が気になりました。


「そうじゃ、ワシがご機嫌なのを見抜いた蛇くんにはご褒美をあげよう。

 ただし一個だけだぞ」

「え、でも」

「それに今日だけじゃ。そのお願い事が叶う時間」

 そう言って仲良しの神様はウインクします。


 よし、とばかりに蛇くんはお願い事を伝えました。


「じゃあ、僕に鳥さんのように飛べる翼をください」

「よぉし、わかった」

 神様はしわがれた人差し指を蛇くんに向け、指をくるん。


 蛇くんに大きな翼が追加されました。


 彼は出来立ての翼に上手に動かし、風の中を舞います。

「すごい、すごーい」とはしゃぐ蛇くんに神様は念を押しました。

「今日一日じゃからな。日が暮れる頃にはここに帰ってくるんじゃぞ」


 神様の言葉を最後まで聞き終える前に「わぁい」と歓声と共に飛び出していった蛇くん。

「無邪気なもんじゃ」

 彼を見送った神様は、どっこいしょとまた岩へと腰かけ直します。


 空へと羽ばたいた蛇くんは、もっと上手に風を使えるようになっていました。


 翼を上に下にと大はしゃぎ。

 だらりと伸びた尾はくねらせたり、ふりふりしたり。

 翼を自由に扱いながら、風の中を動き回ります。


 ある一羽の鳥さんが蛇くんを見つけました。

「なんだか不思議なお友達がいるなぁ」と感じながらもご挨拶のために近寄ったのです。


「うわぁっ!!」と大きな声を上げた蛇くんはバランスを崩してしまいました。


「あ、ごめんね。ご挨拶しようとしただけなんだ。び、びっくりさせちゃったね。

 きょ、今日はボクご用事があるからもう行くけど、また今度にでも一緒に遊ぼう」とそそくさと行ってしまいます。


 鳥さんがたくさん進むための風に負けてしまった蛇くん。

 一生懸命、風を操り体勢を整えました。


「鳥さんとお空でお話しちゃったぞ。流石鳥さんは飛ぶのが上手だなぁ。

 あんな風に飛ぶにはこれ以上に疲れちゃうんだろうな」


 蛇くんは一休みしようとします。

 しかし一個だけのお願いが翼でしたから、鳥さんたちのように足がありません。


「簡単には枝には止まれそうにないなぁ」

 羽ばたきながら枝へ巻き付くのは、翼初心者には至難の業だったのです。


 風の中で休んでみようとしても、結局は常に風をまとわないと地上に落ちてしまいます。

「そうだ。もう神様の所へ帰って翼をお返ししよう」


 疲れてフラフラと地上近くを行くとお友達の蛇ちゃんを見つけました。

「やあ蛇くん。空を飛んで楽しそうだね。こっちに来て飛んでいる感想を聞かせてよ」


 蛇くんはすぐそこの地上に降りて、お隣に行くこうかとも思いました。

 しかしお約束した神様がいる場所はもうすぐでしたから首をふりふり。


「神様が待っていてくれるから」

 最後の力を振り絞る様にびゅんっと翼に力を入れます。


 そんな蛇くんを見つけた神様は自分の腕を差し出し止まれるように手伝うと、なんとか蛇くんは腕に巻き付くことが出来ました。


「おかえり、早かったのう

「うん、ちょっと疲れちゃって」


「どこにも降りずに飛び続けたんじゃな?」

「だってせっかく飛べるんだから、勿体なくて。でももう翼お返しするね」


「楽しくなかったようでは無いようじゃったな」

「うん、楽しかったよ。

 でも僕一人だけでお友達と一緒にも飛べないし」


「そうじゃったか。またお願いが出来たらワシのご機嫌な時に声をお願いを言ってごらん」

「その時は僕たちヘビ全員に翼をください」

 お願いを伝えた蛇くんは空を見あげたのでした。

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