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プラゴル第三章 6



 1

 唐突に、死んだと思ったら異世界転生。マジなろう系。


 しかも転生した先が大きなお屋敷に住む貴族様。

(どこぞの、神様かは、知りませんが本当にありがとう。わたくし第二の人生、親ガチャ当たりのチートを堪能させて頂きます)

 と思ったら、何て事は無い、今にも破産しそうな没落貴族です。はい。

 神様ってそう言う所あるよね。何と言うか…チョット天然…少し抜けてる…。


お礼言って損した。


 前の親も相当毒親だったけど、今回も中々。

 貴族だからか、相当の浪費癖、借金癖、オマケに世間知らずで目も当てられない。ヤバイわこれ。

どの位ヤバイかと言うと、「パンが無ければケーキを食べれば良いじゃない」と言うくらいヤバイ。


 兄姉がいるけど、これがまた絵に書いた様な糞貴族のボンボン貴族の坊ちゃんお嬢ちゃんで、甘やかされて育った結果プライドだけは高くて性格は最悪のお兄様にお姉様。

 事ある事に私も含めて周り全てを見下す。私を邪険に扱う。マジで死ねば良いのに。おっと失敬。気が緩むと本音が出てしまいますわ。おほほほ。


 そんな環境で育ったワタクシも十代半ば、突然親の進めで王国随一、王族や貴族様のご子息が通う全寮制の王立ハイステルタス学園に進学する事に。でもワタクシ、

「そんな由緒正しき学園なんて、お金がかかるから無理でしょ」

 と断ったら、

 そのお金は領民に更に重税をかけて足りない分はいつものごとく御様商人の高利貸しから借りるから心配ないと。

 その発想がまさに糞貴族。領民の一揆反乱で縛り首五秒前。

 何でも両親が言うには私が通うであろうその全寮制の王立ハイステルタス学園は今年、次期王が期待される王国の皇太子がご入学されるとの事。

「その皇太子と私の学園入学に何の関係が?」と聞けば

「その王子を手込めにして来い!」と

 この馬鹿貴族の両親は真顔で言う。マジで頭おかしい。

「なんなら、既成事実を作って、子供の一つでもこさえて来い!」とか言い始める。

 もはや頭真っ白。

 側室としてでも第二妃でも妾でも何でも良いから王子を籠絡せよ!

そうすれば我が家も王族の仲間入り、我が家の危機も一挙解決万々歳!

 人間は金銭で切羽詰まるととんでもない妄想が膨らむと言うみたいだけど、まさにそれ。



 2

 しかたないので、その王立ハイステルタス学園に行く事に。その学園は私が今いる異世界の国、ミッドランド王国の北側、グウェン山脈の中腹の避暑地にあって、それこそ宮殿の様な校舎や生徒の為の寮がある超高級な学校です。

 本来私みたいなどこぞの馬の骨とも解らない田舎貴族のガキが通う所ではありません。

 でも仕方ないので通います。めざせ、王子籠絡!ラブコメ展開。ワタクシの異世界学園編スタートですみたいな。

 

 と言っても(学園も広いからそもそも、その王子が見つからないよね)と思っていたらすぐに見つかりました。


 流石王国の王子様、大勢の取り巻きの御学友を連れてのご登場。キラキラ輝いてます。そこだけ特別に違う照明が照らしているのかな?と思う位です。

 いや、さすがに王子と言っても同じ人間。そんな違いは無いと思って、どんな人物か調べてみたら結果。

 容姿端麗、品行方正 学業優秀 スポーツ万能で、まさに才色兼備揃った非の打ち所の無い糞野郎です。はい。しかもマジモンの王子様ときました。

 オマケにその取り巻きも絵に書いた様な美男美女で上流貴族のご子息様ご息女様。

(こりゃ、無理だわ)早速ワタクシ戦争前から白旗、撤退、降伏宣言であります。

 お父様、お母様。そしてお兄様お姉様。絞首台での縛り首確定でございます。


 ところで話は変わるけど、王族や上流階級の貴族様のご子息、ご息女様が通うこの学園。当然の事ながら家柄やご実家の資産でカーストが存在します。よって吹いて飛ぶ様な糞田舎で貧乏貴族のワタクシなどカースト底辺でございます。はい。

 それでもまだ、運動や勉強ができたり魔法などが得意だったり、明るくて社交的であったりすればまだ学園生活を謳歌できるのですが、ワタクシ生来からのコミュ症で、何の取り柄もございません。あっという間にボッチ確定でございます。はい。

 放課後や自由な時間は御学友の方々はそれぞれ魔法教練、騎士としての剣術訓練、社交場のたわいもない会話や交流などにいそしみます。ワタクシ以外。

 結果、ワタクシはやる事無いので普段の空いた時間は学園の図書室で時間を潰す事に。

 まぁ、こんなワタクシでも少しは恋と言うモノの勉強でもしようかと思いまして。しかし上流階級の御学友達が通う学園の図書室に恋愛小説や官能小説、ましてやラブコメ漫画やエッチな同人誌などがあるはずも無いのです。

 しかたないのでこの世界の大自然、動植物の繁殖行動に関する書物などを読むのであります。まさに“ビッグネイチャー”みたいな。


 結局、前世と同じくワタクシの学園生活は青春とはかけ離れた所で過ぎ去って行くのであります。



 3

 そんなある日いつもの様に図書室で時間を潰していたら、同じく一人でこの図書室に通う女子に声をかけられたのであります。

 彼女の名前はフーコ・クサッタ

 そんな彼女、外見は分厚い丸い眼鏡をかけていて、髪は寝癖でボサボサ、その肌は殆ど外にでないので青白く、毎日の趣味の活動(怪しい魔法アイテム製作)で常時寝不足。

結果、目の下にはいつも隈をたくわえている。その疲れからか、その目は半開きで生気は無い。

(あれ?どっかであった様な気が?…でも、たぶん気のせい。)

「こっ、こんにちは。初めまして、私はフーコ・クサッタ。あなたは?」


「わっ、わたし?わたしはあの〜ユウ・ゴウスートと申しますが…。何の御用でしょうか?」


「あっごめんね。いきなり声かけて。いつも放課後図書館にいるから、前から気になってて思わず声かけちゃった」


「ううん。別にいいよ。私は特にやる事無いから図書館にいるだけだし…」


 こんな感じで陰キャコミュ症同士、お互い初めての自己紹介。その後の交わされる会話で互いに同じ日陰者属性である事を確認です。

 それから私達は一緒にこの図書館でたわいもない時間を過ごす中になったのでした。


 そんなある日、彼女が私の良く読む本について尋ねてきます。

「もしかしてユウちゃん恋愛とか性行為に興味あったりとかするの?」


「えっいきなりどうしてそんな事思うの?」


「うん、ちょっとね。だってユウちゃんいつも動物の繁殖行動に関する本ばっか読んでるから。まさかとは思ったけど、気になって」

(まさか、こんな事で、私の趣向を見抜くとは思春期女子の洞察力おそるべし!)


「この図書室には性教育の本とかないもんね〜」

 意味ありげにニンマリとこちらを伺うフーコちゃん。

「それだったら、この図書室ではこの本が参考になるかも知れない」


 そう言って彼女が出したのがこの大陸の歴史書。

 なんでもこの世界を危機から救った勇者達は異世界からの転生者で歴史書には魔王討伐や恐ろしい怪物討伐で世界を救った物語の他、勇者とその取り巻きとの恋愛模様なども書かれているとの事。むしろそっちの恋愛模様が物語の本題だったりとか……。何じゃそれ……。


 見た目から怪しいフーコちゃんは時々何を思ったか『ステータスオープン!』とか言って目の前の何も無い空中をなぞる様な仕草をする変な人。

「何してるの?」と思って聞けば。

 歴史書に登場する勇者はこういうと魔法のステータス画面なる物が現れたらしい。その練習だとか、何それ……。


 とにかく藁にもすがるつもりでワタクシはその歴史書の数々を読んでみることに……。勿論それを読んでも「ステータスオープン!」何て言わないけど。


 結果……


「……役に…立たね〜」


 転生して早々第一村人発見みたいな感じで男女の運命の出会いがあるとか、有り得んでしょ。マジで。しかもハーレムだし。そろいも揃って女性陣が急性の精神疾患でも煩ったかの様に恋に落ちるとか有り得ないでしょ。


 しかも転生前は根蔵でコミュ症。ボッチにオタクな性格が突然異世界でコミュ力爆発とかチートもチート。真のコミュ症ボッチオタクは死んでも変わらずそのまんまなの!ワタクシも含めたそんな輩がコミュ力を発揮出来るのはネットと妄想の中だけと決まってるの!


 と、まぁそんな憤りをおぼえた感想があった訳ですが、特に他に読む物も無いので暇つぶしに読む訳です。


 そうして青春の時が過ぎ去り、数々の歴史書を読んだおかげで歪みに歪みきった恋愛観を蓄えたワタクシ達。

 いつか降って湧いて来るような運命の出会いを願うけど、ただ何もしないでやりすごす日常生活になる訳です。現実は甘く無い。

 あれ、これって前世の学校生活とほとんど変わらんのでは……などと思う訳です。



 4

 そんなある日。

「ところでユウちゃん、ラブコメパートを熱心に読んでるけど、この学園に好きな男子でもいるの?」


「えっ、べっ別に好きな男子とかい無いけど……」


「そうなんだ……」


 この子は唐突に人のプライベートな質問を直球ストレートで投げてきます。

 いきなりの質問に挙動不審にしまう私。

「え〜と、その…家族からちょっと……」

「なにそれ、政略結婚的な、それとか親が決めた許嫁とか、ああ、でも良くあるよね、私達貴族の社会では」

「いや、そういうんじゃ無くて、実は……」


 その後ワタクシは事の顛末をザックリと話した訳です。

 口をポカンと開けて唖然とするフーコちゃん。その後彼女の第一声が

「無謀、無茶、無理、ユウちゃんカースト上位の王子の取り巻きからテロ組織の一員認定されちゃうよ」

「そっそうだよね…無理だよね。私もずっと前から無理だと思ってた。ただ一応家族に頼まれたから多少はね…」


 その後しばらく、ワタクシ達の間に重い空気が漂ったと思った直後、フーコちゃんが突然席から立ち上がる。そして私の手を握ってその目を輝かせながら大声で叫んだの。


「やろうよ!ユウちゃん!私、恋のキューピットが前面協力するわ!」

(うわつ、そんな大声で叫んだら周りに迷惑が……)


 こうしていきなり学園一の人気者イケメン王子を籠絡する為の作戦会議が開かれる事に。

「あれかな?やっぱり、最初はラブレターとか送るのが良いかな?」

「そんなん駄目。彼はそんなの掃いて捨てるほど貰ってるはずよ。もう、中身なんかいちいち確認すらしてないと思うわ」


「でも話しかける接点が……」

「それならパンをくわえて、出会い頭にぶつかって、そのまま倒れて相手にパンチらするとかはどう?

一発で相手の印象に残る事間違い無し!

 それか行動を先回りして相手に着替え中を見せつけた挙げ句、チカンと大きな叫び声を上げる。その後散々相手を罵って決闘を申し込む!」


「……」


 これが彼女曰く恋の始まりの定番らしい。

 マジで若干引く。そんな私を尻目に彼女は自信満々で語ります。

「でも大丈夫よ。ユウちゃん。私は王子の好みタイプの女性は知ってるから」

 なんでも、見た目がぱっとしない地味系女子で天然キャラ。性格良くて、チョットした事に気が利くみたいな。しかも恋愛に興味ない感じで鈍感、おまけに彼の取り巻きにいない様な貧乏な家柄で庶民的な子にイケメン王子には新鮮に映って気がつけばゾッコンに惚れちゃうとの事。

 スゴくご都合主義な感じがする。なにが大丈夫なんだか……。


「いやでも私、ただの陰キャで天然とは違う気が、それに他人に気を使うとかそもそも無理だし」

「ん〜。何か上流貴族の女子には出来ない様な特技とかない?」

「特技か〜?う〜んとね、レジ打ちとか品出しとか、草刈りとか、田植え稲刈りとか……」

「なにそれ?」


 そんな感じでどのアドバイスもいまいち噛み合ない。というか荒唐無稽すぎて……。

 無理だよね。そんな空気が漂います。そんな時。


「そうだっ!あれよ、あれ!」


「えっ!?なに?」


「学園祭よ!学園祭!なんでも数日後の学園祭の最終日の夜に、学園の生徒全員が集まるパーティがあるらしいの。そこで毎年多くのカップルが誕生するらしいわ」


「でも、そんなパーティで主役級の王子様に近づくのさえ無理な気が……」


「確かにね。でも私に良い考えがあるの!」

 そう言って彼女はステータスオープンとか言って何も無い虚空に向かって指をなぞり始めたの。


 何かやな予感……。



 5

 そして次の日

「じゃじゃ〜ん!」

「魔法のマジ最強惚れ薬

スーパースペシャルハイパワーエキサイトエクストラ!

〜気になるあの娘がこの薬で僕にべた惚れになった件について!〜

手に入れて来たわよ!」


「何それ、そんなの何処で手に入れたの?」


 何でも楽しい密林魔女ショップなる何でも屋で、年に一度のお客様感謝デイ。決算特売。ブラックフライデーのプライムセール、アンド、タイムセール中に買ったのだとか。

 大丈夫。星評価5だからとか。口コミも300件ついてるとか。

 メタンコスコアが90台でユーザスコアも8.2とか。これまた意味不明な事を言ってる。

 しかも、今回は期間限定でポイントが通常3%つく所を5%つく。

 さらに送料無料。(ただし離島は除く)新規会員登録で一律ポイントが500ポイント還元。次回購入の際5%現金値引。

 更に二つセットで買うと、もう一個おまけでついて来る。これまたセット価格通常20000オカネ―の所、1.5割引で17000オカネ―。

 オマケに魔法アイテム下取りがあれば通常1000オカネ―で買い取りの所、今回限り2000オカネ―で買い取り。その他、アプリの魔法を新しく習得すると300ポイントついて来る。後、お支払いの際、提携先の魔法のカード入会で……


その他、残価設定クレジットやリボ払い等のお支払いプランもございます。



 もう、なにがなんだか一切理解出来ない……。



 6

 そんな感じで迎えた学園祭。

 多くの生徒はクラスごとに喫茶店やお化け屋敷など出し物をしたり。放課後のサークルごとに魔法や剣術のパホーマンスをしたりして、学園中大変賑やかになります。

 ところで、ワタクシとフーコちゃんはこの学園でも最底辺のカースト。若干はぶられ気味なので、それらに参加する事も無ければ声も掛けられない。

 なので学園の隅ある倉庫の様な一室の使用許可を頂いて、なにをトチ狂ったかそこで紳士淑女の恋愛相談室などと言う物を開いた訳です。

(だって、フーコちゃんがやるって聞かないんだもん……)


 だけどこんな恋愛経験ゼロで学園ボッチ二人組の所に恋愛相談など来るはずも無く(仮に来たとしてもパンを喰わえて好きな相手に突撃!パンチラしろとか、女子の着替え中に突撃しろとか、そう言うアドバイスしか出来ないけど)閑古鳥が鳴く訳です。


 結果、やる事が無いワタクシ達二人は暗く狭い一室でひたすらに魔法の惚れグスリの調合にいそしむ訳でした。


「ところでこの惚れ薬どうやって王子様にのませるの?」

 私の素朴な疑問です。

「あっそっっか、その方法も考えなきゃならないんだっけ?

いいアイディアがまったく思い浮かばないや〜。まっいっか」

(いや、よくないでしょ)


 そんな感じで何処のイベントにも参加する事無く、過ごしていたらアッッと言う間に学園祭最終日の夕方。突然の訪問者が現れたの。


 訪問者は他人に気付かれたく無いのか帽子とフードを目深にかぶり、眼鏡をかけた怪しい男子。まぁこんな所に来るのは誰にも見られたく無いよね。


 それにここが真っ当な恋愛相談室だと思っている所がちょっとイタイ。

というか、世間知らずにもほどがある。


 恋愛相談室を自分達でやっておきながら言うのもなんだけど…。

 その男子は入って来るなり扉を施錠し静かに振り返って、頭に被ったフードと帽子、そしてメガネを取って頭を上げる。それを見てワタクシ達は呆然。


『おっおっおっ王子ぃぃぃぃぃぃぃ様!』

 思わず被りながら叫ぶ私達。


「どっどっどうして王子様がこんな所に?」

 恋愛相談室を開いた本人が本末転倒な事を言ってる。あっ本末転倒って言葉初めて使った……。

「えっ、ここは恋愛相談室じゃないの?」

 イケメン王子が不安そうに答える。

 やっぱり、ボンボン育ちのイケメン王子。この恋愛相談室に恋愛相談に来るなんて世間知らずにもほどがある。


 取りあえずワタクシ達はイケメン王子に椅子と机、それにお茶を用意して彼の相談に乗る事に。

 勿論、パンを喰わえて好きな相手に突撃は無しで。後、男子だったら好きな女子と出会い頭に、顔面を胸の谷間に埋めるとかも無しで。


「でっ、王子様、ここにいらしたと言う事は恋の悩みがおありですかな?ここへ来たからには大船に乗ったつもりになってください」

 上から目線で言うフーコちゃん。ちなみに彼女もワタクシと同じく彼氏いない暦、年齢です。おまけに親兄弟以外の異性と会話した時間は生涯一時間も無い訳で…。


「そうなんです。実は僕の悩みを聞いて頂きたくて……」

 その後、しばらくして話し始めた王子様。

 なんでも、

 上流階級の女性ばかりで普通の女の子との出会いが無い。

 周りに良い人と思われる様に生きる事に疲れた。

 本当の自分を知ってもらいたい。

 王国の王子としてではなく一人の人間として見てもらいたい

 時には平民と同じ様に羽目を外した生き方がしたい。

 身分や外見とか関係無く心を通わせた自由に溢れた本当の恋がしたい。


 なんだ、そりゃ!?まさかここへ来て思春期拗らせたテンプレ王子のセリフ集をリアルで聞くなんて思いも寄らなかった。

 そんな事を真顔で言われた日には下級貴族や学園底辺の私達の生活がどんな物かそのなまくらな精神に叩き込んでやりたくなるよね。

 その後も散々世間知らずのイケメン王子坊ちゃんの愚痴を聞かされたワタクシ達はあくびをしない様にするのがやっと。

 てっ!?ここは恋愛相談室だった。少しくらいは我慢しないと。

 そう思っていたらこの恋愛相談室の発案者、フーコちゃんが突然立ち上がり叫ぶ。

「あっ、そうだ!私用事があるんだった。ちょっと席外すね。ユウちゃん後はよろしく」

 突然、席から立ち上がったフーコちゃん。去り際に私の耳元で囁く。


「実はあのお茶にマジ最強惚れ薬スーパースペシャルハイパワーエキサイトエクストラ!〜気になるあの娘がこの薬で僕にべた惚れになった件について!〜

が入っているから」

「マジか!何て事を!

「がんばって!」

 そう言って部屋から出て行ってしまいました。私を置いて……。


 二人きりでどうすれば……。

(あれ……?これってもしかしてチャンスなんじゃ!?)

 お父様、お母様、お兄様お姉様、千載一遇のチャンス到来でございます。フーコちゃんありがとう。

 でも、なにをすれば……ワタクシ、男女のそう言った事はまったくの未経験でして。

 えっと……初めはお話しして手を繋いでチューから…って…やばい。こんな時に限って昔見ていたビックネイチャー動物の発情期、繁殖行為の光景の数々が頭の中を駆け巡っちゃう。どう考えても違うよね。私ってもしかして天然!?イヤ大自然!


 そんな事を一人考えていたら目の前の王子の様子がどうもおかしい……。


「ああ駄目だっ!もう我慢出来ないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!お願いだ僕を一人前の男にしてください!」

 そう叫んだ王子が突然目の前で飛び上がって土下座。

 ジャンピング土下座なんて初めて見た。

 ていうか、王子様に土下座させるとか、ワタクシ完全に無礼千万、下克上くらいマジでやばい。

 でも、いくらなんでもこの惚れ薬利き過ぎ。利き過ぎと言うか惚れるとか好きになるとか、そう言うんじゃなくて性欲が大爆発してるんだけど。


 で、私がアワアワと戸惑っていたら、目の血走った王子がいきなり服を脱ぎ始めてあっという間に生まれたままの姿に。

その姿を見たワタクシ。


(さすがはイケメン王子。その身体まで引き締まった細マッチョでカッチョ良い)と言う感想。


(てっ!それどころじゃ無かった!私こんな所で初めてを……!)


 でも何か違和感が…。そう……なんというか…お股の付け根辺りの…。

あっ思い出したっ!お父さんの又にもぶら下がっていた例の物。

(お父さんのは同人誌に書かれていた物よりずっと慎ましかったけど)


 その例の物どこかで見た記憶が…そうそう…。

てな感じで昔の記憶を思い出しながら目線を王子の下半身に……。

(ちょっとハズカシい!)で、感想を一言。


「生まれて初めて巣穴から出てきた、ミーアキャットの子供の見たいのがついてる!!」


 てっ思わず声に出して言っちゃた!


 そしたら王子様、顔面蒼白

「人が一番気にしている事を———————————! これだから女子は嫌なんだ——————————!」

 と、大声で叫びながら、頭を壁に打ち付け始めちゃった。


 ヤバイッここは何とかフォローしないと!

 わたし、頭をフル回転させて王子様を慰めます。


「でも!でも!王子様!その位のサイズの方が絶対良いかも!私も初めてだし!

うんっ!そっちの方が安心安全だよね!コンパクトの方が何でも良いよね!

便利だし……。あっ…便利関係無いかも…」


 それを聞いた王子様。増々顔つきが変わって叫び出す。

「聞きたく無い!聞きたく無い!聞きたく無い!これ以上僕を傷つけないで!」

 頭を打ち付ける速度が加速して行きます。すごいっ!いえっヤバイっ!

 そして気を失った王子様は頭から血を噴き出しながら白目を剥いて倒れちゃったの。


「どうしよう!どうしよう!とにかく王子様を医務室に!ていうか服を着せないと!」

 てな感じでワタクシ、気を失って倒れた王子に服を着せてあげます。


そんな中

「あっここはまだ元気なんだ〜ウフッ♡」

ちょっと感心。

「坊やは巣穴へお帰り……♡」

 そう独り言を言いながら下半身にパンツとズボンを履かせます。

 

うん。やっぱりこういう時コンパクトなのは便利だよね。



 7

 日も暮れた学園祭終盤大詰め。メインイベントの大舞踏会が大広間で始まろうとしています。

 だけど今夜の主役はまだ姿を現しません。

 当然です。だってその主役は頭から血を流して気を失い、私に担いで引きずられながら医務室へ向かっているのですから。

 こんな状態を他人に見られたら大騒ぎ確実。陰キャの私はドキドキです。

 そう思った矢先、大きな荷物を抱えたフーコちゃんと出会います。

 私と王子をみた彼女は第一声。


「ユウちゃん。初めてなのに王子を気絶させちゃうなんて、スゴすぎ!」

 いや、それどんな誤解なのよ。男女のエッチなまぐわいは気絶する事もあるんですか?ちょっと興味湧く。

てっ、それどころじゃない。

「いや、王子様が突然興奮して倒れちゃったの。だから彼を医務室へ」

「なんだ、ふ〜ん」

 リアクション淡白過ぎ。そっけない。


「ところで、フーコちゃん、その大きな荷物はなに?」

「あっ念の為と思っていっぱい用意しちゃったの。例の惚れ薬」

「えっ?どうするのそれ?」

「わかんない…」

「取りあえず私は王子を医務室まで連れて行かなきゃいけないの。手伝ってと、思ったけどそんなに荷物を抱えてたらたら無理だよね」

「うん。ちょっと無理かな。でも私も医務室まで一緒に行ってあげる」

 一緒に行くと言うか手伝って欲しかった…。

 てな感じで医務室へ向かい大広間の横を通り過ぎた時


「よくぞ、集まってくれました!将来この王国の未来を背負う紳士淑女のみなさん!」

 いきなり大広間の正面大ステージ上であからさまに怪しい恰好で叫ぶ人がいます。

「始めまして皆さん。私は魔王幹部の一人。死霊使いの女帝ネクロマンサーエンペラーのスデイ・シンデラーと申します。どうか、御見知りおきを。

今日は皆さんに私が用意したとっておきのショウにご参加して頂きますわ。

あなた達はこれから私の死霊魔法で呪われた死霊となり、未来永劫私の配下となってもらいます。そしてこの王国を恐怖と絶望で蹂躙するのです!

ほほほほっほほほほおっほほっゲホッゲホッ!」


 変な魔女は頭を下げたりして、意外に丁寧。

 大広間に集まっていた全校生徒と学園の関係者はみんな唖然。

そりゃそうだよね。楽しい学園祭のメインイベントがこんな訳のわからないオバさんに無茶苦茶にされたら言葉もでないよね。


 私はと言うとこれも(何かのイベントの一つかな?)何て思ってた。


 そんな時!

「そこまでだッ!魔王の手先、邪悪なネクロマンサー!」

 声が上がった方に振り向いたら、そこにはこの学園御用達の騎士や魔法使いと僧侶とかの人達が登場です。

 なんてたって、ここは王国随一の王族、貴族のご子息ご息女達が通う学園です。警護も万全。ここを守っている人達も王国選りすぐりのエリート戦士の人達です。


『うぁぁぁぁぁぁぁっ————————!』

 て、言ったそばから全員秒殺。雑魚モブすぎます。


「さて、これ以上無駄な時間をつぶしてもしかたありませんよね。それと逃げようとしても無駄ですわよ。この大広間を中心に学園全体に結界を張らせて頂きましたから。

つまり、私が死霊魔法を発動した時点でこの学園中が死霊の呪いに覆われ、あなた達は全員呪われた存在になるのですから。ほほほほっほほほほおっほほっゲホッゲホッ!」


「ハイア———————!」


 変な魔女がなんか喋った後に

変な呪文を唱えたそばから、会場中の人達や次々と倒れて行っちゃう。

 その時、私は幾らイベントとはいえ、みんな乗りよすぎとか思ってた。

 だって普段はぶられ気味と言うか、いてもいなくてもどうでも良い空気みたいなワタクシ達。当然こんなイベントがあるなんて連絡が来る訳ないと思った次第であります。


 まぁそれはともかく、フーコちゃんと大広間の様子を遠巻きに眺めながら、ぼ〜っと立っていたら耳元で囁くような声がする。

「ふ、二人ともこの場所から早く逃げるんだ……」

 突然誰かと思ったら王子様が目をさましてる。


「王子様、お怪我は大丈夫ですか?」

 一応言っときます。

「すまない。僕も何故怪我をしてしまったのか記憶に無くて。ただ、君たち二人と話していた記憶だけはあるんだけど、突然何故だか記憶が無くなってしまっているんだ」

「そうですか、お大事に……」(ヤバッ)

「それよりも……君たち二人だけでも早くこの場所から遠くへ逃げるんだ。

これは学園祭のイベントじゃない。魔王軍の幹部の襲撃だ」


 そう言うと王子様は気を取り直すように立ち上がり、ゆっくりと魔女の元へ歩き出して、魔女の前で叫びます。


「私はセンタール王国第一王子、イマウト・パイルデケェだ!魔女に告ぐ!

お前の狙いは僕だろう!僕がお前の虜囚になる代わりにみんなを魔法の呪いから解放しろ!」

 流石はイケメン王子様。主人公な感じがすっごく出てます。マジかっケーです。でも、そんな時に限って私の脳内に巣穴から出てきたミーアキャットの子供の姿が浮かんだのは私が悪い訳では無い。


 王子を見たネクロマンサーの魔女さん。無表情、無言のまま、その手を一閃。


「うぁぁぁぁぁぁぁっ————————!」

 て、言ったそばから王子様あっという間に昇天。雑魚キャラすぎます。

 ワタクシ達はそれ見てただ只呆然。

「後は私にまかせて!」

 その後すぐに隣で一緒に隠れていたフーコちゃんが自信満々に私に告げます。

「どうするつもり?」

 そう聞くとフーコちゃんは

「私が大量に買って作った“魔法のマジ最強惚れ薬スーパースペシャルハイパワーエキサイトエクストラ!”

〜気になるあの娘がこの薬で僕にべた惚れになった件について!〜

(ユウちゃんの体毛入り!)

をこの大広間全員の頭の上に投げつけてやるわ!」

「えっ!?ちょっと待って、最後の方なんて言った!?私の体毛?頭の髪の毛じゃなくて体毛って言ったよね?私の体毛なんて何時何処で手に入れてたの?

ていうか、私の何処の体毛なの?ちょ、ハズカシいから辞めて!後、何故私の?それとその惚れ薬、惚れると言うか性欲的な方が爆発しちゃうんだけど!」

 慌てて問いつめる私。

 相変わらず人の言う事は一切聞かないフーコちゃん。

 彼女は私に拳を向けると親指を立てる。そして惚れ薬を抱えたまま魔女に突撃。大広間に躍り出ると、大量に抱えた惚れ薬(私の体毛入り)をぶん投げます。

「くらえ————————————!」

 そのぶん投げた惚れ薬が空中でなぜか爆散。


 死霊と化したみんなの上に降り注いだのでした。

 私の体毛と供に……


 突然の出来事に魔女も呆然。その原因を作ったフーコちゃんを怒った顔で睨みます。

 そしたらフーコちゃんは私を指差して叫びます。

「やったのはこの人です!私見てました!」

(えっ何なに?意味わかんない!)

 私は頭真っ白。アワアワです。ていうか、フーコちゃん。速攻私を裏切ってます。

「後はよろしく!それじゃー!」

 そう言うと彼女は私を置いてダッシュで逃げだしたのです!


 それを見た魔女はまたまたその手を一閃、魔法をフーコちゃんに放つと、彼女はそのままぶっ倒れて、勢いあまって床の上を滑ったと思ったら、大広間の柱に頭をぶつけて動かなくなったのでした。


 私の友人の最後を見届けた魔女は私の方を見ると満足そうに話し始めたのです。

「後この場所での生者はお前一人。最後は私の魔法を使うまでもない。我がシモベ達の死霊達の最初の犠牲者となってもらおう。

行け!死霊共よ!その小娘を八つ裂きにしろ!」


 その瞬間、全校生徒の視線が私に集中。突然の注目に陰キャの私はド緊張。

違う違う。ヤバすぎます。命の危機です。


 だけど、何かおかしい……


 私のすぐそばで死霊になった王子様。私に近づいて何をするかと思い気や、いきなり右手を差し出しながら頭を下げて叫びます。

「突然好きになりました。死んでますけど、一生大事にします。付き合ってください!」

(えっ一生大事にするって言うけど、もう死んでるよね。ていうか死霊に愛の告白されてリアクションのしようが……)てな感じで戸惑う私。


 その他、「僕とも付き合ってください」と言って土下座とか、元上流階級の貴族の令嬢は「ワタクシ女性が好きだったみたいですの。死んで初めて自分の気持ちに気付きましたわ。ワタクシと一緒に女性同士でしか辿り着けない愛の形を作りましょう!」

 とか、いって私にチューを迫って来る。もう訳わかめ。そんな事をしていたら、私一人を巡って全員が争い出す。といっても死霊同士だから何かぎこちない。

 そうそう、雄のマーモット同士が雌を巡って喧嘩してるみたい。ちょっと可愛い…。みんな死んでるけど…。


 それはともかく私はついにやりました。全陰キャ女子の夢。少女漫画のありがち展開。ぱっとしない平凡女子がイケメン、イケジョ達にモテモテ&学校の人気者です。まぁ相手はみんな死霊だけど……なんてこった。


 でも、この光景を眺める私の脳内にふと一つの不安がよぎるのです。

(え〜とっ、何だっけ……そうそう!恋のライバル、ヒール役女子。悪役令嬢とかです。この場合……)とっ頭に浮かんだら、いました。みんなの向こう側に一人立つネクロマンサーの魔女さんが…。


 その魔女さん。この予想外の展開に呆気にとられてそして、嫉妬で狂った顔になって叫ぶ第一声。

「この泥棒猫!私のシモベをたぶらかして、何を企んでいるの!」


 もう、人聞きの悪い事100%です。というか、あなたに言われたく無い。本当に……。ヒール女子のテンプレお約束セリフの言いがかりはマジ辞めて欲しい。リアクションに困ります。

 困った私は何とか誤解を解かなくちゃと必死に頭を巡らせます。

(どうしよう。どうしよう…)


 そして、口から出た弁解、誤解を解く為の言葉がこれです。

「あの~。私はまだ学生なので、適齢期を過ぎた女性にも相手をマッチングさせてくれる紹介所とか知らないんです。ごめんなさい」

 その後も腕組みしながら自分の記憶の中の引き出しを探します。

「私の知ってる男の人で中年以上の年齢で独身いたっけな?」


てっやばい!魔女さん顔つきがどんどん変わっていきます!

「キィ—————————————————————!」

 突如魔女さん、叫んだと思ったら顔を真っ赤にして怒り狂います。そりゃそうだよね。ここは学園。大人の人達の恋の出会いなんて無いもんね。


「貴様だけは!地獄の業火の炎の魔術でその姿跡形も無く灰にしてやるわ!」


 ワタクシ、余計な一言で火葬場いきです。昔、村のお葬式を手伝った事が走馬灯の様に思い出されます。なぜか絶体絶命。


 そして魔女が魔法の呪文の詠唱を唱え始めたその時。


〈ゴガッ—————ン!〉

 突如と大きな音を立てて大広間の壁が砕けて崩れ落ちる。そして大きな穴が開いたのでした。

 そこには何故か発情して興奮状態の巨大猪の魔物が!

 それを見た私。(猪と縁があるのかな?後、この巨大猪は雄で独身のなのかな?)なんて思っちゃう訳です。


 そういえばこの学園は風光明媚な大自然に囲まれた避暑地にありまして。

上流階級の方々の別荘地だったりします。

 とどのつまり田舎にあるわけです。そして田舎と言えばお約束の……。


 て、そんな事を長々と説明している暇は無く。あの惚れ薬が野生の魔物にも効くなんて聞いてない!早速クレーム入れて返品したいです。口コミ欄にも書き込まないと…いえいえ。それどころじゃ無いでしょと自分にツッコミ。


「ゔひぃぃぃぃぃ——————————!」

 これこそまさに、猪突猛進!雄叫びをあげながら死霊となった学園の学生達を蹴散らしながら突進して来る巨大猪。

 息つく間も無く魔女さんに突撃。

「もうっ!なんなのよ——————————————!」

 魔女さんは断末魔の叫びを上げながら空高く舞い上がり、即昇天です。


(ご冥福をお祈りします……)ってまだまだ、それどころじゃ無い!


 巨大猪さん向きを変えて今度は私に猪突猛進です!


 ワタクシ全速力で逃げます!

 でも残念ながら巨大猪さんの脚力に逃げ切れる訳も無く。焼け石に水。堪忍してください。


「ゔひぃぃぃぃぃ——————————♡♡♡」

 そんな時、何処から多分雌の巨大猪の(求愛?)吠える声が聞こえます。

 そしたら巨大猪さん。向きを変え、声のする方へまた壁をぶち壊して出て行きました。

 それを走りながら見守る私は

(そうだよね。巨大猪だってカップルになるなら同じ巨大猪が良いよね……。どうか、お幸せに……。)

 なんて、走りながら思っていたら、自分が余所見をしていた事に気付いて、慌てて前を向いたら、目の前には学園の中庭にある大きな噴水が!


 学園祭の最後の最後で噴水の池にダイブ!

 噴水の中央にある大きな石の彫刻に頭を打って気絶。水深が僅か30センチの池に溺れて溺死です。


 いや〜この学園の中庭にある綺麗な噴水は、お昼休みなどに初々しい男女のカップルがいちゃつく憩いの場所でありまして…。


 ド陰キャ底辺女子の私が恋の噴水の池で溺死とか恥ずかしくてマジで死にたい。いや、死んじゃいましたけど……



 8

 私もそのまま、あの世行きです。とはいかず、死霊魔法の効果で私も漏れなく成仏出来ない呪われた死霊に。

 それどころか、他の死霊さん達は惚れ薬の効果と死霊魔法をかけた本人が死んだ事で、皆私を崇拝。一躍アンデッド界のマドンナ、モテモテの死霊の女王に昇格です。


 意味わかんない……。


 ちなみに私より先に死んだ魔女さんも例外無く死霊になってます。

 しかも、改心した悪役令嬢がすごく良い人になると言う感じのセオリー通りのオマケ付き。


 その後は私を一生懸命気遣い、優しくお世話してくれます。

 いや、もうどの道死んでるから必要なくなったんだけどね。


 でも、このままじゃ不味いよね。だってみんな生き返るのは無理だとしても死霊のままじゃ成仏出来ないし、異世界転生もできないし。

 と言ってもやる事ありません。

 まさか、死霊の御学友を連れて王都に乗り込んだらもっと大変。と言う事で元悪役令嬢の魔女さんにどうしたら呪いの魔法が解けるのか聞く訳です。


 私偉い!


 結果から申しますとこの呪いが解けるには、今現在死霊の女王となってる私が成仏出来る様な衝撃的な何かが無いと駄目らしい。

(死ぬ事以上の衝撃ってなによ!)みたいな。

 そんな訳で例えばどんな事だろうと悩む訳です。で、私が今までに経験して感じた事が無い事……。う〜ん。

 そしてふと思い浮かんだ事が……。


「“恋”とか?あっ!でも、それ良く解んない?」思わず口に出してしまいます。


「そうっ!それです!あなたが恋をする事がこの呪いを解き私をいや、皆を成仏させる事になるのです!」


 何その視聴者置いてきぼりな、強引設定みたいなの。いやいや、そもそも生きてる時にも恋なんてした事無いのに、死霊になった私に出来る訳ないし……。

 呪われた死霊同士の初恋模様を赤裸々に織りなす新しいラブコメジャンル展開しろ!みたいな、低視聴率で切羽詰まったテレビドラマのプロデューサーが言いそうな世迷い事を言われても困る。低視聴率爆死確定。


 こういう時に自称恋愛相談の達人。フーコちゃんはいないのですが、ふと思い出してみると、あまり……役に立たない様な、いや…むしろハチャメチャにするだけのような。

 それはともかく、フーコちゃんも死霊になったんだけど、彼女は彼女で

「私、恋の精霊になったみたい!」とか電波みたいなことを言いはじめた。

「いや、精霊じゃなくて良く言う幽霊みたいな感じだと思うんだけど」

 と言っても聞かない。

 私の説得も制止もむなしく精霊として恋の伝道師となるべくどっかへ行っちゃった。


 そう言う訳でここは一旦、成仏は諦めて、みなさん死霊人生楽しみましょうみたいな。

(私に恋心が芽生えるとか死霊になる前から、ジャガイモとタマネギが織りなす感動の純愛ラブストーリーと同じ位無理な話なんで)


 結局、死霊になったからと言って特にやる事も無いので普通にノンアクティブな日常に。しかも、死んでるからご飯も食べなくていいし睡眠も必要ない。

 お風呂も入らなくていいし、毎月訪れるアレも無し(女子限定)とどのつまり生きる為に必要な事を何一つやらなくていい訳です。

 ここへ来て死霊って引きこもりの上位互換だと言う事を初めて知りました。

 結果ワタクシやる事無いので図書室の本全部完全読破目指します。何なら一語一句おぼえてやろうかと。

 あれ……。これってやる事変わってないよね。まぁ、いっか。


 ですが、ここで問題発生が。

 かつては風光明媚な場所に立てられたこの学園も魑魅魍魎が跋扈するおぞましい場所に。あれ?魑魅魍魎とか私難しい言葉使ってる!?

 おまけに私、死霊の女王から出る霊気だか妖気だか負のオーラに引き寄せられて大量の魔物が周辺を徘徊しだして辺り一帯が危険な地域に。

 モテモテフェロモン獲得です。魔物限定ですけど…。


 そうしていつの間にか元学園は多くの異世界から転生した勇者や冒険者が訪れる新たな観光名所に。違った。新たな冒険スポットに。



 9

 普段はこの学園で死霊になっちゃた人達も成仏出来ずに辺りをただ徘徊するだけ。

 だけど毎日暇なので冒険者なんかが私を退治しに来た時なんかは一大イベント大歓迎です。みんながでこぞって出迎えます。


 歓迎しているのに冒険者からすると襲って来る様に感じるらしくまさに修羅場発動です。


 元御学友の方々は私を退治しにきた冒険者とかに雑魚らしくやられたりするけど、結局私が倒されない限り証拠にも無くまたここに死霊として復活です。もう復活の呪文も必要ありません自動的にオートメーションです。

 みんな早く成仏したいのに無理ゲーです。


 そんな感じなのでいい加減成仏したいネクロマンサーの魔女さんから呪いの魔法がかかった水晶玉を渡されます。

 これを使って私達を退治しにきた勇者とお見合い、いや対決する時に使ってくださいみたいな感じで。

 なんでもこれは相手の過去、本性がわかるとかで恋の相手を見つけるのにぴったりだとか。

「魔女さんはこれを使わなかったの?」と聞いたら

 これを言い寄る数多くの男性にこれを使ったら男性不審になってこの世界に復讐する為に魔王の配下になったとか。

 なるほど。魔女さんの過去の話はあまり興味無いけど、恋をする上で相手を良く知るのは必要だよね。



 と言う訳で私を退治しに来た勇者とご対面。

 お互い緊張です。特に私なんか重度の人見知りでコミュ症ですから。

 勇者と対面してもどう接していいかわかりません。

向こうなんて剣と盾を構えたりして喧嘩上等な感じ。

 ちなみに死霊の女王となったワタクシは生半可な剣や魔法なんてかすり傷一つつきません。聞いた所によりますと三十路を超えた女性はいろんな意味で強くなっていって行くらしいですが(バイト先のおばちゃん談)

 私なんて死んじゃってもう年関係ないですから最強です。

 エルダーレイスとかレイスクィーンとかの名前で呼ばれる最強クラスのアンデットらしいです。

 まぁでも私的にはどうでも良いので気にしてませんが、相手はビビってます。


 私としてはとにかくお互いの緊張をほぐす為にお話を……。

 そして恋をしましょうみたいな。オマケに成仏しちゃいましょうみたいな。

 色々意味不明な展開ですよね(笑)


 だけど、これじゃ恋なんて芽生えません。

 そう言う時に頂いた水晶玉が役に立ちます。やっぱり初対面で会話を弾ませるには相手を良く知った方が良いですもんね。


 で、その勇者様の転生前の過去とかを見て、お互い転生者同士たわいもない昔話で話題を広げて盛り上がりましょう。みたいな、そんな感じです。


 ですが、会話が始まったとたん相手は突然スゴい表情になって、頭を抱え大きな叫び声を上げながらのたうち回ったあげく、そのまま昇天してしまうのです。

(どうしてだろう?)そう思う私……。


 えっ!?なにを言ったのかって?私的にはその水晶で見たそのままを言っただけなんだけど……


 例えば

 頭髪は来ちゃってるのに肌の質はピチピチ十代でついたあだ名がギャップ萌え。


 夏の通勤電車やバスで人があまり近づいてこない。ある時近くにいた女子高生が小声でATフィールド発生中と呼んでいた。


 早朝コンビニでコーヒーを買いに行ったら、聞いてもいないのに店員にVtuberの一番くじは品切れだと謝られた。


 家電量販店のパソコンコーナーで見ず知らずの人にやたらとIT家電について聞かれるから、何故だろうと思ったら店員さんと間違われていた。ホームセンターで……。ドウンキホウテイで……。


 レジで並んでいる時、お客と笑顔で会話を弾ませながら対応していた女子店員が自分の番になったらマスクをしだして終始無言無表情の対応になった。


 カメラを持って歩いているだけで見ず知らずの人に鉄道好きなんですか?と聞かれた。

カメラを買いにお店に行ってカメラを選んでいるだけで店員に鉄道撮るんですか?聞かれた。


 二周りも年が上の見ず知らずの知らないおじさんから敬語で話しかけられて、初めて自分が相当な老け顔だと気づかされた。


 中学時代の可愛い女子に何年か振りに合いたいと呼ばれて会ったら絵を買わされた。高校時代の可愛い女子に何年か振りに会いたいと呼ばれて会ったら宝飾品を買わされた。大学先輩の可愛い女子に休日に誘われて新興宗教のイベント施設に連れて行かれた。


 一番最初に精通したのが低学年向け漫画雑誌コロンコミックのヒロインのパンチらだとか。しかもそれが高校生の時だったとか。


 そんな感じで出会った男性の過去のトラウマ、違った。過去の出来事を話題に会話を弾ませようとしたら、男子諸君は即昇天です。男子との会話って難しい。


 で、こんな呪われた場所で死んでしまった勇者男子も漏れなく私達のお仲間に。

こりゃもう悪質な新興宗教やねずみ講の勧誘並みに強引です。


 そんな事からしばらくすると、あの死霊の女王は呪いの言葉だけで勇者達の魂まで凍らせて死に至らしめる、とか根も葉もない恐ろしい噂が立ってしまうのでした。


 ホント、恋って難しいよね。こまった、こまった。


 それからしばらくするとこの死霊の住処と化した学園には誰も訪れなくなってしまうのでした。

 おそらく間違った誤解や風評被害が原因かと……。



 で、私はと言うと婚期を逃した女性は次第に達観してきてどうでも良くなるらしいですが(バイト先のおばちゃん談)まさに私もそれ。誰も相手をしてくれ無くなったので、只ひたすらに一人で色々な恋愛模様を妄想して楽しむ日々を送るのでした。



追伸、今現在も、運命の男性募集中です!

ヤバッ!ちょっと恥ずかしい!




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