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 プラゴル第三章 5


  1

 突然ですが、皆さん、初めまして、ワタクシ、ユウ・ゴウスートと申します。

 センタール王国の避暑地にある元王立ハイステルタス学園、え~と今はお化けとか私たちアンデッドとかが住む死霊の学園の女王なんかを成り行きでやってます。

 

 なんでこうなっちゃたんだろう?ふと、考えます。

だって私みたいなごく普通…。うんっちょっと陰キャだけど…、もしかしたらかなり陰キャかも知れない…。

とにかくっ、ただの普通の女子だった私が異世界で死霊のボスになるなんて有り得ないでしょ。そう、いつも考えるの。

 嘘です。たまに考えます。いえ、本当にたまに思ったりしてます。

なぜならね。暇だから…。

死んでるのに、成仏出来ないから時間がいっぱいあって暇だから。

 普通、幽霊と言えばこの世の中に未練があったり、恨みがあったりして成仏出来ないとかで幽霊になっちゃうとかそんな感じでしょ、たぶん…。

 私違うし…。う〜ん。でもちょっと勿体無かったなと思うのは生きている時に恋愛経験を一度もしないで死んじゃった事かな〜。

 いやだっ、私いきなり自分の恋愛経験語っちゃてる?聞かれてもいないのに!?

ハズっ。

 え〜っと、えっと、あれですよ、そうっ!“ちょっと陰キャ女子。転生異世界で死霊のボスやってます”的なラノベみたいなノリの感じなの。

 でねっ、私は他の人にあまり迷惑を掛けない様に生きてる訳。てゆうか、死んでますけど…。

 だって悪役の人がやる悪い事とかしたく無いじゃないでしょ。そんなことしたら、怖い主人公的な人にコテンパンにされて退治されちゃうから。

 だから平和主義です。なにもしません私。


 ところで何で私が死霊のボスなんかやってるの?なんて思う人もいるかも知れないけど、話せば長くなるのよ。これがまた。

 聞きたい?聞きたいですか?はいっ、はいっ、聞きたい人手を挙げてー!手を挙げた人がいなくても語っちゃいますよ。そんな感じ。


 私はね、この世界に来る前は別の世界で女子高生をやってたの。でも陰キャも陰キャ、ド陰キャだったの。

あっそういえば私の前の名前何だっけ?ずっと昔のことだから度忘れしてます。

ちょっと待って。今思い出します。

う~んたしか…死霊…あっ!そうそう、四礼幽子とかそんな名前だったと思います。まっどうでもいいですよね。もう死んでますしww(笑)

どうでもいいけど陰キャの人生をば、語っちゃいますよ的な感じですww。


 でもちょっと待って、私だって好きで陰キャをやっていた訳じゃなくて仕方なし。だって私んち家がチョー貧乏。今思えば私の両親、揃って毒親だったの。

 お父さんは仕事帰りにしょっちゅうパチンコ。何なら時々お母さんも一緒にいってた。そんなお父さんは定期的に無職になってたし。だからお母さんは夜の仕事をしてて夜は朝方までいない。何て言ってたっけな……キャバクラ?パブ?なんかそう言う所で働いていたみたい。

 でもって収入が不安定で少ないのに夫婦揃ってギャンブル好きだから目も当てられない。


 そんな感じだから家はいつもお金が無くてチョー貧乏。

 誕生日パーティとかクリスマスパーティとか何それ空想世界の何かでしょ、みたいな感じ。

 年末の楽しみと言ったら、競馬の有馬記念とか言うイベントを家族揃ってテレビで見る事。レース結果が出るまで家族みんなで楽しい話題で盛り上がるの。

 お父さんとお母さんがこのレースで勝ったら、美味しい物を食べに行こうとか、新しい洋服を買ってくれるとか言ってた。

 家族みんなで和気あいあいとしてて楽しかったな〜。


 でも外れるの……。


 あっ、後もう一つ年末の楽しみがあった。それは年末ジャンボ宝くじの結果をみんなでテレビを見る事。抽選結果が出るまではお父さんとお母さんが明るい未来の将来設計で盛り上がるの。

 一等あたったら大きな家を買って、海外旅行にも行こうとか言ってた。

 そんな夢のある会話がみんなニコニコしてて楽しかった思いで。


 でも外れるの……。


 と言う感じで私のうちにはいつもお金が無かったけど、私は高校に行けた。だけど女子高生の必需品スマホを買ってもらえなかったの。女子高生にはまだ早いと言う理由で。


絶対違う理由。


 そうなったら最後。私の高校生活、陰キャボッチ確定と言う訳。

 おまけに放課後はみんな部活をしたり遊びに行ったりするけど、高校の授業料を稼がなければいけないから私はバイトでそれどころじゃ無いし。最悪。

 えっ!バイト先で出会いがあるんじゃないの?って?

 いやいや、みんな私の住んでた糞田舎舐め過ぎ。

 私が遠くから通っていた地方都市(私にとっては都会)の高校の近所は少しましだけど、そこから遠く離れた私のうちの近所なんて、普通の学生がやる私に取ってごく普通、お洒落なアルバイト先のファーストフード店やコーヒーショップやカラオケ店なんて無いからww。

 コンビニが一件だけあるけど、そこはもう田舎じゃ人気で倍率高くて無理。  

 だから放課後は糞長い通学路を自転車でダッシュで帰って、近所にある小さなスーパーマーケットでバイトした訳。

 ここが最悪。来るお客は近所のお爺さんお婆さんばっかり、何なら全員顔見知り。普通に突然の世間話に付き合わされる。


 後、働いてる他のパートもなんなら年齢高い主婦ばっかりだから、唯一の若手の私なんか徹底的にこき使われる。一度も女子高生扱いなんかされないから。

レジ打ちから、重たい商品の品出し、陳列、掃除から何でもやらされる。

 勿論最低時給で。


これでもまだマシ。最悪なのは農繁期

「幽子ちゃん◯◯さん家の田植え手伝って。日当出すから

とか突然言われる」

「あっでも私ここのバイトがあるので……」

 当然そんな感じで私は断る。だって私も一応女子高生。その女子高生が田植えのバイトとかいくら何でも……ねぇ。


 でも田舎のおばさんは気にしない。

「ああっ、それは大丈夫。シゲちゃん(お店のオーナー)には話しはしてあるから」

 とか言って普通にその時だけシフトから勝手に外される。

 で、こき使われる。

 夏休みなんか学校のみんなは海に行ったり、山でキャンプとか都会に遊びに行って日に焼けたりするけど、私なんて夏休み暇でしょと、勝手に決めつけられる。

 そして日当出すからと朝から駆り出されて草刈りとかさせられて日に焼けるから最悪。

 後、寒くなると最悪。何が最悪って、そりゃもう死ぬ。お年寄りがまとめて死ぬ。心臓発作とか、脳梗塞とか何とかかんとかで突然死する。

 もうこの田舎じゃ年寄りしかいないから当然と言えば当然なんだけど、いつもこの時期になるとどこかお葬式でゴタゴタする。

 結果、この村に手伝える若い人はいないから、私に声がかかる。

 そんな感じでお葬式で学校を休む事が度々。

 よく考えればこの時から葬祭関係に縁があったのかな?なんてね。


 後、ヤバいのが年末とかお正月以降がやばい。何がヤバいってお餅がヤバい。

 お年寄りはもう歯が抜けて無いのにお餅が大好き。それを食べないと年末年始気分が味わえないから無理して食べる。で、喉に詰まらせる。

 ある朝学校に行く途中で近所でものすごい音が聞こえたので慌てて行ったら、

おばあさんが餅を喉に詰まらせてたの。

 それを見た私は急いでおばあさんの喉に詰まっていた餅を吐き出させて、おばあさんは一命を取り留めた。

 人助けした私偉い。

 その後、腰の抜けたおばあさんを救急車に乗せたり、散らかった部屋を片付けたりして遅れて登校。学校に遅れた理由を説明。


 で、みんなが言うの。将来は葬儀関係に就職希望?


 もうね、十代の女子高生にして、縁起悪いですよワタクシ。

 はい。


 そんなこんなで学期末の終業式。この時には学校の行事とかで貢献した学生とか、学業やスポーツのインターハイとか部活動で好成績を残した人が全校生徒の前で表彰されたりします。

 いわば学校の人気者とか陽キャの人たちが偉いと褒めらる行事があるわけです。

当然、人気の生徒なんかが壇上に立つと女子の黄色い声援や男子のざわめき声が聞こえたりする訳です。

 そんな式典の最後。突然私が呼ばれます。みんな困惑。私は唖然。当然ですよね、だって私何もしてない日陰の陰キャ者ですから何故にって感じです。

でっ、壇上に上がってみたら、オバアサンを救ったとか何とかで全校生徒の前で晒し者。表彰なんかされちゃいます。最悪。

 ふと、舞台の袖をちらりと見たら、村の役場の村長(近所のお爺さん)さんが満面の笑顔で親指立ててます。(余計な事しないでほしい)


 ちなみに村中に配られる会報(お便り)にも大々的に写真付きで乗りました。

だけど女子高生のプライバシーとか個人情報とか色々あるので何故か私の目の部分だけ黒い線が入ってました。すごく怪しい印象しか残らない。



 本当に少子高齢化&限界集落、過疎地域怖い。



 あと、表彰されたことを両親に報告したら、褒めてくれました。だけどお金的な物は何も貰えないと知ったとたんその話題は消えて、二度とその話題はでませんでした。

 でも、それはともかくとして、表彰されたおかげで村中のいろんな人に感謝されてお米とか野菜とかただでいっぱい貰えて食費はだいぶ浮いたな〜。それは嬉しかった。

 なぜなら、ちょうどその時私の両親は二人揃ってパチンコに行った挙句、大負けしていたから。

そんな訳でしばらくはモヤシ炒めと袋ラーメンのヘビーローテーションになる予定だったから余計にね。

でも浮いた食費はお父さんが無理して買った車とかのローンや維持費で消えたけど……。


 そんなクズ親だけどやる事はやっていて私には弟妹がいた。

 だけどお母さん夜は仕事だし、お父さんは仕事帰りパチンコだからバイトから帰ってきて夕食の準備とか家事全般全部私がやるはめに。


 本当に疲れる……。


  2

 当然、私はテレビも見る暇も無いし、インターネットとかのアイティな関係の事一切知らないの。

 今時こんな女子高生いる!?あっいたわ!……私です。

 こんな生活だから学校でも誰とも話が合わないし当然のようにボッチ確定。

 遊びに誘われたり話しかけられる事も一度も無い空気の様な存在。

 だけど学校の面倒くさい行事とかはしっかり頭数に入れられる。なめんな。

マジ性格歪むよね。


 あっ思い出した。そうそう。こんな私にも一人だけ友達いたわ。

え~とったしか名前は草田クサダ 訃児子フジコチャン

 外見は分厚い丸い眼鏡をかけていて、寝癖でボサボサの髪を強引に左右おさげにしてる感じ。  その肌は通学以外に殆ど外に出ないので青白く、毎日の趣味の活動(同人誌制作)で常時寝不足。

結果、目の下にはいつも隈をたくわえている。その疲れからか、その目は半開きで生気は無い。

 そして私と同じド陰キャの自称恋愛研究家の女子高生。


「幽子チャンオハヨー。ねぇ昨日の深夜アニメ見た?」

「ううんゴメン。疲れて寝ちゃった」

「そうなの?じゃあ録画してあるから貸し手あげる。昨日はマジ神回だったよ」

 これが毎朝交わされる第一声。


 私は基本テレビは見れないし、スマホもネットも無い。こんな私をボッチの陰キャと言う共通点だけでアニメや漫画ファンと決めつける。

 そんでもって親切にもお勧めの漫画やDVDを貸してくれる。結果、私をオタクの道に引きづり込んだ張本人。

 気がつけば私もただのボッチ陰キャから上級職の喪女、女子オタにクラスチェンジです。はい。

 そう、私の女子高生らしい青春の高校生活は友達とのオタ活が全てだったの。

 そんな彼女のお勧めは恋愛もの。まあ自称恋愛研究家だからね。


 私の友達の訃児子チャンは定期的に私に漫画やアニメのDVDを貸し手くれる。中でも彼女にとっては少女漫画系が一押しで、そして返却時にその感想を聞いて来る。

 最初は私も恋愛漫画を読んだり、恋愛アニメを見たりしたけどいまいちピンとこなかった。

 だって私に取って男女の恋とか愛とか現実の生活からかけ離れすぎていてちっとも刺さらない。だから興味が無い。

 それに恋愛感情なんて大人になれば自然と身に付く何かのスキルかなんかだと思っていた。動物番組でよく見る発情期みたいな。だから思春期前に恋愛のハウツーに最も参考になると思ったのが動物番組。

 野生の本能が煩悩を呼び覚ます的なww。


 あれ?もしかして、いや、もしかしなくても私って変わってる?

 だってしょうがないじゃない。毎日バイト先でパートのおばさん達が言う旦那さんの愚痴を散々聞かされたんだもの。

 おかげで恋とか愛とか夢はすぐに消し飛んじゃった。だっていつも旦那はうざい、臭いとか邪魔だとかマザコンだとかそんな事ばっかり。

 とっくの昔に男女の幻想なんて無くなった。むしろ歪んだかも。

 でも、ある時パートのおばさんの一人が眠そう、スゴく疲れた顔をして出勤してきたの。でも何だか機嫌いい。

「どうしたの?体調でも悪いの?」とみんな心配で聞いたら、「通販で買った怪しげな精力剤“龍の肝”なる物を買ったら、旦那が元気になっちゃて年甲斐も無く一晩中おさかんになっちゃて、毎晩スゴく迷惑」とか言ってた。

 そしたら一時期職場でなぜかその怪しげな精力剤がやたらと流行ったな。


 それはともかく熟年夫婦の夜の情事は置いといて、訃児子ちゃんが貸してくれた漫画やDVDとかの恋愛物は妹達が喜んで読んだり見たりしていたので、妹達の感想を私の感想としてそのまま伝えていたらスゴく喜んでいた。

 でも、それ気を良くしたのか、もっと恋愛物を持ってくる様になったの。

しかも、内容も過激になって百合物やBL物、成人指定なものを貸してくれて感想を聞いて来る。

 さすがにそんな内容の物を妹達に見せる訳にもいかないので。わたしが一応一通り目を通して感想を言うわけです。


 今考えるとこれも不味かったかな?だって、いきなりそんな過激な知識ばっかり蓄えていったんですもの。


 あの当時は、それは漫画の世界のフィクションだと思ってた。だって私、経験ないし合体とかあんなグロテスクでな物がねぇ……。

 なんかこう……怖い方が先行するわ、マジ。ホント繁殖行為って大変だよね。

 そんな行為が愛や恋や青春とかの行き着く先とか、ありえないでしょ。まさに“ビックネイチャー”大自然の神秘!


 昔、私がまだ小さい頃、お父さんとお風呂に入った時に見た、お父さんの又の間にぶら下がっていたスッポンの頭みたいなのがあれほど大暴れするとは!

 でもさすがに漫画、フィクションがすぎる。あれは無いよね。だってお父さんのそれはもっと、も〜ッと!慎ましかったもの。


 そんな感じで私の高校生活は学校では完全、陰キャでオタクの日陰者。日常生活ではアルバイトや地域の手伝いや農作業の手伝いで無駄にアクティブを強要され、恋とか青春とかのビッグネイチャーとはまったく無関係なまま時間が無駄に浪費されて行くわけです。



 3

 そんなある日に下駄箱の中に手紙が入っている。

 中を覗いてみると知らない男子の名前と呼び出しと待ち合わせ場所、大事な話がしたいとか書かれてる。

 そんでもって私は男子に手紙で呼び出された事に驚くより、今時こんなベタな事をする人間がいる方に驚く。


 早速、友人の訃児子チャンに相談したら、隣のクラスにいるスポーツ万能、頭脳明晰の学年一人気のイケメン男子だった。

 何故そんな男子が私に?と思ったのですが、恋愛研究家の訃児子チャン曰く、少女漫画ではイケメン男子は得てして私みたいな目立たない凡人に惹かれるのは良くあるらしい。

 少年漫画のハーレムものといい、何と都合の良い世界なのだろう。


 結局、親友の説得により、書かれた時間と場所に行く事に。そしてその場所の植木の陰で隠れて待っていると、現れましたイケメン男子が!

「流石、学年一のイケメン男子。立ってるだけでも絵になるわね」

 一緒について来て貰った訃児子チャンがぼそっと呟く。

 そうは言ったものの、私から見れば立ってるだけなのに絶えずぶつぶつ独り言ってて、しかも小刻みに落ち着き無く動いている様に見えて何だかそのオーラが無い様に見えた。


 ともかく相手を確認して、見ただけでもう満足したので、そのままスッポカして帰ろうかと思ったけど、後ろに控えていた訃児子チャンがせっつかすので、仕方なくため息と供に姿を見せたのです。

「こんにちは、初めまして」

引き攣りながらも一応笑顔で。

 そしたらそのイケメン男子の第一声

「えっ?き、きっ君、だっ誰?」

 (はぁ?人を呼び出しといて何様だよこのイケメン男子!しかも若干どもってるし)

「わっ、わっ私はとっ隣のクっクラスの……」釣られて私もどもっちゃって言葉が続かない。糞!

 そこまで言いうとイケメン男子は何かに気付いた様にポンッと両手をならした。


「あっ、やっちゃたかも。僕とした事が手紙を入れる下駄箱間違えたのか」

 そう言いながら、片手でその髪を掻き揚げた。

「えっ人違い?私じゃないの?」

「ごめん。そうなんだよ。その手紙は君のクラスの草田訃児子さんへの手紙で」


「はぁ〜?」それを聞いて若干呆れる私。

(いや、訃児子チャンと私の下駄箱の場所、全然ちがうだろ。ド天然か!このとんちき!)そう心の中で思う。

 その後これからどうしようかと立ち尽くしているとイケメン男子がバツが悪そうに言う。

「あの〜。僕の手紙返して貰っていいですか?人違いですし」

「あっ…はい……どうぞ…」(というか、謝れよこのトンチキ!)


「それじゃ〜私は人違いみたいなんで帰ります」


 そう言って背中を見せて帰ろうとしたその時、背後から呼ぶ声がする

「ちょっ、ちょっと待って!実は頼みたい事があって!」

 突然イケメン男子が追いすがる様に声を掛けてくるのです。


「じっ実は、君とこれに一緒に行ってもらいたいんだけど」

 そう言ったイケメン男子はその顔を真っ赤に染めてポケットからチケットを二枚取り出します。

「でっ?それをどうしたいの?」

 そう聞くとイケメン男子は説明し出します。

 なんでも今期アニメのイベントチケットが二枚手に入ったらしい。そのイベントにはあの人気声優が来るとか何とか。

おまけにその来場者には限定のグッズが手に入るらしく、彼の妹がそのアニメと声優の大ファンで二人で行くのを楽しみにしていたと。

 しかし妹はつい最近怪我をしてしまって行けなくなってしまった。でもせめて限定グッズだけでも手に入れてあげたいらしい。

 そこでアニメに詳しい草田訃児子チャンに一緒に来てもらおうと思ってこの手紙を出したとの事。

 でも間違ってしまったけど私もアニメに詳しい人みたいだから代わりとはいえ一緒に行って欲しいと言ってきたのです。なんと厚かましい!このイケメン!


「なるほど……」


 勿論断ろうとしたのよ。メンドクサイから。それにバイトもあるし。

 そしたら後ろの植木の陰から

「その話!ちょっと待った——————!」と、

 訃児子チャンが大声を張り上げながら飛び出してきたのよ。

「良いわね。その話。私も参加させてちょうだい」

「あっ草田訃児子さん。そこにいたんだ。ちょうど良かった。もし良かったら君が一緒に来てくれないかな?」


「私は駄目。だってその週はコミケに向けた同人の製作で忙しいもの」

(そういえば、この子そんな事もやってたっけ。つい最近も唐突に

「幽子ちゃん、幼馴染NTR物と生徒会風紀委員凌辱ものどっちがいい?この二つ読者層が被って無いと思わない?」と聞いてきて、あまりの究極の選択に戸惑って軽い気持ちで

「どっちでもいいと思う」と言ったら、何か閃いたようで

「わかった!生徒会風紀委員の幼馴染がNTRられて、凌辱される話にするわ!これで一件落着!」などと言っていたから、幼馴染生徒会風紀委員、NTR凌辱物の同人誌描いているんだと思う。)


と、そんなことを回想していたら訃児子チャンが前のめり興奮気味に話しを続けます。

「だけどそのイベントの限定グッズは私も欲しい。だからこういうのはどう?

幽子ちゃんと一緒に行って。その代わり幽子ちゃんの旅費は私が代わりに持つから。ねっ、それでいいでしょ」


「えっ僕の限定グッズは……」そう言ってちょっと動揺するイケメン男子。

「あっなに?あんたオタク?もしかして隠れオタクなの?妹の分は確保出来るから良いじゃない」

 鋭いツッコミをいれる訃児子チャン。

 あからさまに残念そうな顔をするイケメン男子。こいつ隠れオタだわ。しかも日曜朝放送の女児アニメグッズを欲しがるとかそうとうディープなオタクだわっ。ヤバイ。

何か本性がわかると学年一のイケメンに全然見えない。超イメージダウン(同族嫌悪)

「ねぇ〜幽子ちゃん。これ以上の条件は譲れないわよね」

(いや私の意見なんか、最初から聞いてないでしょ)


「わかった……。それで…良いよ。でもみんなにはこの話は内緒にして欲しいんだ」


「その辺は心配しないでちょうだい。あんたもそれなりの立場やイメージってもんがあるものね」


 そう言う訳で私は突如、学校一のイケメンの男子とアニメのイベントに二人で行く。つまり極秘デートに行く事になったの。

 約束のデートのに日が来るまで訃児子チャンに色々言われてからかわれた。

「手をつないじゃうの?」とか、「チューしちゃう?」とか、「駄目よ、勢い余って二人してどっかに泊まったりしちゃ」とか色々言われた。(そもそもそのアニメイベント子供や家族連れがメインだから開演は真っ昼間だよ……)


 でも正直どれも私にピンとこなかった。多分それは私にまだ発情期が来てなかったからだと思う。

 私にとって恋、つまり発情期はなんかこう、グワッ!グォッワ!ギャー!みたいな、おおっ!まさにこれぞ大自然の神秘、ビッグネイチャーな感じなのです。

 彼にはそれが感じられないのよね。正直。男なら発情してこいよ!みたいな。

まぁ、どうでも良いですが……。



 4

 そしてイベント当日。私はイベント会場に行く訳ですが、こんな田舎からイベントのある都会の県庁所在地に行くには日も昇らないうちから家を出なければなりません。そして無人駅まで行って田舎の本数の少ない電車に乗る訳です。


 朝だけどまだ薄暗い中、田舎に良くある無人駅に到着。扉をあけて小さな駅舎の中に入ると、なんとそこには野生の猪が……!

 発情期を迎えた野生動物はその行動が活発になり攻撃的になったりするのを

テレビの動物番組で見た事ある。

 そう言えば猪は発情期になると人里まで降りて来るとかこないとか。

(やばっ!どうしよう?)

 などと考えていると、猪と目が合ってしまう。

「ブヒッヒヒぃ———————!」そう吠えながら全速力でこちらに向かって来る。


「ぎゃ————————!」と叫び声をあげながら逃げる私。当然こんな田舎の無人駅の早朝。周りにはすれ違う自動車も歩く人も誰もいません。

「いや、私の求めていた恋というか発情期は盛りのついた野生の猪に追われる事じゃないから!!私の青春これからなのに!これぞ田舎アルアル!」

 ていうかそれどころじゃないよね!

 そんな事を逃げながら必死に叫んで考えていたら、追いかけていた猪は突然向きを変え田んぼの中へ向かって行ったの。見ればそこには別の猪が。多分雌。

(そうだよね。猪だってカップルになるなら同じ猪が良いよね。どうか、お幸せに……)

 なんて、走りながら思っていたら、自分が余所見をしていた事に気付いて、慌てて前を向いたら、目の前には田んぼの用水路が!

 これから男の子との初デートだと言うのに用水路にダイブッ!頭を打ってそのまま昇天。

 いや〜。良く台風が来るとお爺ちゃんが田んぼの用水路を見に行って、そのまま帰らぬ人になるなんて、良くニュースでやるけど。

 私は女子高生。初デートで用水路に落ちて昇天とか恥ずかしくてマジで死にたい。いや、死んじゃいましたけど……。


 そんな事を宙に浮かびながら思っていたら何処からか声が聞こえる。


「おおっ陰キャ女子高生。死んでしまうとは情けない。まぁでも生きてる時も陰キャで結構なさけないけど」

 突然、見ず知らずの他人なのに失礼な事を言って来る声がしたので辺りを見渡したけど誰も居ない。

「あっ、どもっ、すみません……。ていうかどちら様ですか?」

「そんなことはどうでも良い」

「はぁ〜……」

「それよりお前の不幸に免じて今度は違う環境、異世界で生まれ変わる事を約束しよう」

「えっそうなんですか?」

「はいやっ—————————!」


 その掛け声の後、暗くなり薄れ行く意思の中で声が聞こえる。


「次のお主の人生は裕福な家庭で何不自由なく暮らすが良い」


 そんな声を聞きながら私は意識を失ったの。まあその前に死んじゃったけどね。






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