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お前…面白いヤツだな。

―――――――――――――――

―――――――――――――

――――――――――――。


「……んん」


何だ?耳元で話し声が聞こえる。


しかも妙に耳に響く。


俺は重たい瞼をゆっくりと見開いて、顔を上げた。


「とても信じられなませんね」

「まぁ、あなたなら、そう言うとは思っていたけれど。けど彼、嘘をつくような人じゃないのは確かよ。私が保証するわ」

「でも…あっ」


ふとドアの近くでジェーヌと話し込んでいた、黒髪ショートヘアと花の髪飾りがとても似合っている女の子と眼が合った。


「起きたのね。ゼロス」

「ああ。所でその子は?」

「彼女はアヤカ。私と同じヴァンセリーヌ学園に通う見習い魔女の生徒で同じ寮の部屋で暮らしてる同居人よ」

「ど、どうも…」


黒髪ショートヘアの女の子、アヤカは俺に向かい礼儀正しく、お辞儀をして見せる。


「始めまして、アヤカさん。俺はゼロスと言います」

「………」


俺が自己紹介をするもアヤカは訝しげな視線で俺を見つめてくる。


(何だ?妙に警戒されているな)


「こーら」


――ベシッ!


「アイたぁッ!?ンもうっ!ジェーヌまた、頭叩いた〜!」

「はぁ…ごめんなさい、ゼロス。実はあなたが眠っている間にわざわざ私を探しに、森にやって来た、アヤカが私を探している途中、どうやらあの巨大生物から見つかって、逃れる為に慌てここに逃げ込んで来たらしいの」

「なるほど。そうだったのか」

「私、あなたの事をまだ、信じてませんから!」


すると、アヤカはジェーヌに叩かれた頭を撫でながらビシッと、人差し指を俺に向けて言い放った。


「…?」


俺はアヤカが何を言っているのか、分からず、ジェーヌの方に顔を向けた。


「あぁ~…実は、あなたの事を私があなたから聞いた、話をそのまま説明したのよ。"次元の狭間"とか、"次元獣"そしてあなたや勇士達の戦士の話とかも諸々含めて」

「あー」


ジェーヌから事情を聞いた、俺は納得した。


まぁ、ジェーヌも最初、俺の話を聞いてもとても信じられていなかったからな。


「だいたい、何ですかその、"次元の狭間"…?そんな世界があるなんて聞いた事もないし。それに私が見たあの、巨大生物をあなたは"次元獣"と、そう呼んでいるみたいですね」

「…ああ」


アヤカは眼を細め、腕を組み仁王立ちしながら、俺に詰め寄る。


「第一、私が見た巨大生物は、こんな森にいるわけがないんです!信じられません!」


ジェーヌは困ったように微笑み、俺に助けを求めるような視線を送ってくる。


俺はゆっくりと立ち上がると、アヤカの目を見据えて言った。


「気持ちはわかる。だがもし、君と俺が逆の立場だったら、恐らく同じ意見で信じられないだろうな。だが、残念ながら、現実なんだ」


アヤカは俺の言葉に息をのんだ。


俺が言葉を継ごうとした、その時だった――。


――ドスンッ!ドスンッ!ドスンッ!


「…ッ!この振動は…」


地面を揺らすような、鈍く重い足音が森に響き渡る。


「…!まさか!」


ジェーヌは顔を青ざめ、慌てて窓の外を覗き込む。


その隣にアヤカも並び、同じように外を見た。


森の奥から、巨大な影が迫ってくる。


その姿は、アヤカがここに来る前に見た、あの凶暴次元獣パラデラスだった。


「あれが…"次元獣"…ジェーヌから聞いた、別の世界から来た巨大生物…!」


アヤカは息をのんだ。


彼女の顔は、先程までの警戒心から一変して、恐怖に染まっていた。


言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くす彼女の隣で、ジェーヌがすっと腰の鞘から杖を引き抜く。


そしてジェーヌはアヤカに鋭く指示を出す。


「とりあえず、この館を中心にして全体に結界魔法をかけるわよ!アヤカ!」

「わ、わかった!」


アヤカも震える手で自身の杖を構えると、ジェーヌと共に呪文を唱え始める。


「「我が内に秘めし魔力の源よ、大いなる光となりて、この地に安寧をもたらせ!結界創造プロテクション!」」


二人の杖の先端から、眩い光が放たれる。


その光は、瞬く間に館を包み込み、薄いドーム状の膜を形成した。


それは、館の屋根から壁、そして地面までもを覆い尽くし、次元獣の侵入を防ぐ強固な壁となる。


「…!これが“魔法”と言うやつか…!」


俺の眼の前で二人が杖を持って、口々に何かを呟いた後、杖から眩い光が放ったのを目の当たりする。


「そうよ、これが“魔法”よ。私達魔女の素質がある者だけが使えるの。よし、結界は張れたわね。これで少しは時間を稼げるはず」


ジェーヌは額に滲んだ汗を手の甲で拭い、安堵の息をついた。


その視線は、結界の外で館を取り囲むようにして動き回る、凶暴次元獣パラデラスに注がれている。


「でも、この後はどうするの?ジェーヌ」


アヤカは恐怖を露わにしながら、結界を叩きつける次元獣の巨体に怯えていた。


アヤカの顔はまだ、青ざめたままだ。


「本来、"次元獣"とは単独で行動する事がほとんどなんだ」


俺が次元獣の行動について話を聞いた、ジェーヌの顔は再び緊張が走っていた。


「ねぇ、ゼロス。もしあの、"次元獣"って、()()()()()とかでなら、倒せる可能性はない?」


ジェーヌの問いに、俺は一瞬、眉をひそめる。


「その()()()()とか言うのは相当、凄い魔法の様な響きだが…仮にもし、それで"次元獣"を倒せるなら、是非とも見てみたい所だ。だが…俺の考えで言うなら、恐らく…無理だろうな」

「それは何故?」


ジェーヌは俺の問に質問を返す。


「俺が知っている限り、"次元獣"の中にはエネルギーを吸収する厄介な"次元獣"もいるからだ。もし、凶暴次元獣パラデラスではない、別のそれもエネルギーを吸収する"次元獣"だった場合、ソイツに特大級魔法をくらわせてみろ。逆にソイツが大喜びするだけだ」

「へぇーそんな"次元獣"もいるのね。まぁ、今の私とアヤカじゃあ、()()()()()なんて、習得するのはまだまだ先になるでしょうし。」

ジェーヌは難しそうな顔で顎に手を当てる。


「でも、どのみち、パラデラス(あれ)をどうにかするしかないわ。それに――」


ジェーヌは何故か、俺の方にまっすぐ見つめてきた。


「…?」


ジッと見つめてくる、ジェーヌに対し、俺は首を傾げた。


「ふぅ…とにかく、あの巨大生物…いいえ、"次元獣"をここからどうにか、離さないと」

「でもどうやって…!」


ジェーヌが腕を組み考え始める。


その横で顔を青ざめながら、あわあわするアヤカ。


こうして見ると不思議な関係のある二人だなと、内心俺は二人を見て、そう思った。


「どうにかするって言っても、どうやって?あの、巨大生物、"次元獣"…って、言うの?、結界にずっと張り付いてるんだよ!」


アヤカはほとんど叫ぶように言った。


彼女の顔は恐怖で引きつり、額には冷や汗が滲んでいる。


「それに、この結界魔法だって、いつまでもつか、わからないんだから、早くなんとかしないと!」


ジェーヌはアヤカの焦りに構わず、腕を組みながらジッと、窓の外から"次元獣"パラデラスの様子を伺う。


「うるさいわね、わかってるわ、そんな事!だから、考えてるんでしょう!」


アヤカはジェーヌの態度にさらに焦りを募らせる。


「考えてるって、そんな悠長な事を言ってられないよ!?」


ジェーヌの冷静さと、アヤカのパニックが対照的で、見ていてなんだか滑稽(こっけい)に思えた。


「――お前…面白いヤツだな」


俺の言葉に、ジェーヌとアヤカがぴたりと動きを止めて二人同時に俺を見てきた。


アヤカはぽかんと口を開け、ジェーヌは頭を抱え呆れた、顔をしている。


「何言ってんのよ、こんな時に…」


ジェーヌが「…ハァ」と溜め息を吐く。


「いや、だって。ジェーヌは冷静沈着に作戦を練ってるのに、アヤカは顔を真っ青にして必死に反論してる。まるであれだ、漫才コンビをしているみたいだ」


アヤカは一瞬きょとんとした後、顔を真っ赤にして叫んだ。


「な、なななな、何が漫才コンビですか!人が真剣に話してるのにふざけないで下さい!」


ジェーヌは小さく吹き出し、アヤカの抗議に「うるさいわね、もう…」と返す。


俺はそんな二人を見て内心、不思議と楽しんでしまっている、自分がいる事に気づいた。












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