第四十九話 風よ吹け! 孔明、祈る! そして…赤壁、燃ゆ!
時は冬! 長江流域では、通常、北西からの風が吹く季節。
呉軍の総司令官・周瑜が計画する「火計」を成功させるには、逆方向、つまり東南からの風が、絶対に必要だった!
東南の風が吹かなければ、火を放っても、逆に自分たちの船が燃えてしまう!
周瑜は、毎日、空を見上げて、ヤキモキしていた。
(((風…風よ…! なぜ、東南の風が吹かんのだ…! このままでは、火計は使えん…!)))
焦りとプレッシャーで、周瑜はついに病に倒れてしまった!
「ぐはっ…! 頭が…!」
呉軍の陣営に、重苦しい空気が漂う。
「都督(周瑜のこと)が、病に…!?」
「風が吹かねば、我々に勝ち目はないのか…?」
周瑜の病状を見舞いに来た、諸葛亮孔明。
孔明「(周瑜の脈を取りながら)ふむ…都督の病は、身体の不調にあらず。これは…心の病ですな」
周瑜「(ギクッ!)…なにを言うか!」
孔明「(ニヤリ)都督…あなたは、**『東南の風』**が吹かぬことに、心を痛めておられるのでしょう?」
「!!!」周瑜、図星を突かれて、言葉を失う!
(((こ、こいつ…なぜ、私の心を読めるのだ!? まるで、神か!?)))
孔明は、扇子で口元を隠し、自信満々に告げる!
孔明「都督、ご安心めされよ。この諸葛亮、未熟ながら、**天文を読み、風を呼ぶ術**を、心得ております」
「な、なんだと!? 風を呼ぶ!?」周瑜、信じられないという顔!
孔明「はい。南屏山に**『七星壇』**という祭壇を築き、そこで私が三日三晩、祈祷を行えば、必ずや、三日三晩、東南の大風を吹かせてご覧にいれましょう!」
「ほ、本当か!? 孔明先生!」周瑜、藁にもすがる思い!
孔明「ただし、その代わり…私が風を呼んだ後は、すぐに私を迎えに来る船を用意していただきたい。都督のことですから、私が風を呼べると知ったら、きっと私を始末しようとするでしょうからな?」
ちゃっかり、自分の逃げ道も確保! 抜け目ない!
周瑜「(ドキッ! …図星だ…)わ、わかった! 約束しよう!」
(内心:風さえ吹けば、後でこいつを始末すればいい…)
こうして、孔明は、周瑜の許可を得て、南屏山に七星壇を築き、祈祷の準備を始めた!
祭壇の上で、道士のような服を着て、剣を手に、天に向かって祈りを捧げる孔明! その姿は、神秘的で、まるで仙人のよう!
周りの兵士たちも、「本当に風が吹くのか…?」と、半信半疑で見守る。
そして、祈祷を始めて、三日目の夜…。
空は、静まり返っていた。風は、まだ吹かない…。
周瑜は、ヤキモキしながら、空を見上げる。
(((孔明め…やはり、ハッタリだったのか…!?)))
その時!!!
ザワ…ザワワワ…!
旗が、東南に向かって、なびき始めた!!!
風だ! 間違いなく、東南の風だ!!!
しかも、その風は、みるみるうちに強くなり、ゴーゴーと音を立てて吹き荒れる!
「「「おおおおおおおお!!!!!」」」
呉軍の陣営から、割れんばかりの歓声が上がる!
「風が吹いたぞ!」
「東南の風だ!」
「孔明様、万歳!」
周瑜「(驚愕!)本当に…本当に、風を呼びおった…! あの男…やはり、人ではない…! 神か、悪魔か…!?」
周瑜は、孔明の計り知れない力に、恐怖すら覚えた!
(((やはり、生かしてはおけぬ!!!)))
周瑜は、部下に命じる!
「今すぐ、南屏山へ行き、孔明を斬れ!」
しかし! 孔明は、一枚上手だった!
風が吹き始めた瞬間、彼はすでに七星壇を降り、魯粛が手配していた小舟に飛び乗り、長江を下って、劉備軍の元へと逃れていたのだ!
孔明を出迎えたのは、趙雲!
孔明「子龍殿、ご苦労。さあ、夏口へ戻りましょう」
趙雲「はっ!」
周瑜の追手は、孔明の影すら見つけることができなかった…。
さあ! 東南の風は吹いた! 役者は揃った!
いよいよ、「赤壁の戦い」、最終局面! 火計の開始だ!
周瑜は、病も吹き飛んだかのように、檄を飛ばす!
「全軍! 出撃準備! 今こそ、曹操の百万の大軍を、焼き尽くす時ぞ!」
まず、動いたのは、老将・黄蓋!
黄蓋は、「偽りの降伏」を装い、大量の枯れ草や硫黄、油などを満載した、十数艘の**「火船」**を率いて、曹操軍の水軍基地へと向かう!
船足の速い「走舸」と呼ばれる船だ!
黄蓋の船団が近づいてくるのを見た、曹操軍の兵士たち。
「おお! 黄蓋将軍が来たぞ!」
「降伏だ! 降伏だ!」
何の疑いもなく、彼らを迎え入れようとする!
曹操も、船の上から、その様子を満足げに眺めていた。
「(ニヤリ)ふふふ…黄蓋め、ようやく来たか…」
黄蓋の船団が、曹操軍の連結された大船団に、十分に近づいた、その瞬間!!!
黄蓋「(目を見開き)今だ! 火を放てーーー!!!」
黄蓋の合図と共に、火船に積まれた燃えやすい物に、一斉に火が放たれた!
そして、強烈な東南の風に煽られ、火船は、猛スピードで、曹操軍の大船団へと突っ込んでいく!!!
ゴオオオオオオオオオ!!!
ドカーーーーン!!! バリバリバリーーーッ!!!
火船が、次々と曹操軍の船に激突!
船は、鎖で繋がれているため、逃げられない!
火は、あっという間に、船から船へと燃え移り、巨大な船団全体が、紅蓮の炎に包まれた!!!
「ぎゃあああああ!!!」
「火事だー! 燃えるー!」
「助けてくれー!」
曹操軍の兵士たち、阿鼻叫喚! 地獄絵図!
燃え盛る船の上で、焼け死ぬ者、長江に飛び込んで溺れ死ぬ者…!
水上戦に不慣れな北方の兵士たちは、なすすべもない!
さらに!
「「「今だ! 総攻撃ーーー!!!」」」
周瑜率いる、呉軍の本隊が、燃え盛る曹操軍に、総攻撃を仕掛けた!
周瑜、黄蓋、韓当、甘寧、凌統…呉の猛将たちが、水を得た魚のように、大暴れ!
曹操軍の兵士たちを、次々と討ち取っていく!
陸上の陣営にいた曹操も、対岸が火の海になっているのを見て、ようやく自分が騙されていたことに気づいた!
曹操「(顔面蒼白)…し、しまった! 火計か! 周瑜め! 黄蓋め! そして、孔明め! このワシを、謀りおったな!!!」
時すでに遅し!
曹操は、命からがら、わずかな手勢と共に、陸路で北方へと敗走を開始!
百万(と言われた)の大軍は、ほぼ壊滅状態…。
曹操にとって、人生最大の大敗北!!!
赤壁の戦いは、孫劉連合軍の、劇的な大勝利に終わった!
少数で、大軍を打ち破った、歴史に残る大海戦!
孔明の奇策、周瑜の指揮、黄蓋の覚悟、そして兵士たちの奮闘が、奇跡を呼び起こしたのだ!
しかし! 敗走する曹操を、孔明が見逃すはずがない!
孔明は、曹操の逃走路を読み切り、さらなる罠を仕掛けていた!
関羽、張飛、趙雲が、それぞれの持ち場で、曹操を待ち構える!
果たして、曹操は、無事に許都へ逃げ帰ることができるのか!?
そして、この赤壁の大勝利は、天下の情勢を、どう変えていくのか!?
(続く!)
第五十話 孔明トラップ発動! 華容道、涙の選択! 関羽、義に死す(かと思った)!
次回をお楽しみに。




