プロローグ
お兄様は言いました。
「テオドールは国1番の獣騎士だった」
だった……今は違うのかしら?
「テオドールは魂の友である彼のグリフォンを失った。だからもう、グリフォンの背に乗って空を駆ける獣騎士になれない」
「お兄様、魂の友とはなんですか?」
「おまえは魂と友というそれぞれの言葉の意味を知っているだろう? その二つの言葉が重なった時、どんな意味を持つか考えてごらん。そして答えがでたらテオドールが失ったものが何か分かるだろう」
グリフォンは頭と前足が鷹で体が獅子の聖獣。その聖獣と魂の友になる、それはどんな感じかしら。
そうしてそれを失うとはどんな気持ちなのかしら。
「テオドールのグリフォンはどうしていなくなってしまったの?」
「それはね、私を守って死んだのだよ。だから私はとても悲しい。テオドールは心の中に閉じこもって、冷たくなった友の亡骸をずっと見ている。彼の心も冷えてやがて死んでしまうだろう。テオドールをその冷たい場所から出してやることはできないが、せめて少しでも、ほんの少しでもいいから彼の心が温まることが起きればいいなと願っている」
「ミレナよ、もしおまえも兄さんと同じ気持ちになったなら、どうかテオドールを温めてやっておくれ」
「それでは、大切な話をするからよくお聞き。テオドールとミレナを王太子の守りとしておいていく。2人でマルコスの命を守りなさい。テオドールは護衛騎士として体を守る。ミレナは寄り添う者として心を守る。命は体と心でできている。私の息子の命を二人で守るのだ、いいね」
「はい、お兄様」
「迎える準備ができたとき、おまえたち2人でマルコスを私の所へ連れてきておくれ。その時は、二人は夫婦として旅をしておいで、テオドールが父、ミレナが母、マルコスが息子だ。3人仲良くするのだよ」
「はい分かりましたお兄様」
「では私は3人を待っている」
お兄様はグリフォンの背に乗って王都へ去った。