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百合と呼ぶにはあまり残酷だ  作者: 空現実
第二章 聖シエール魔法学院課外学習編
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第26話 エーネスト跡地へ

☆☆☆お見送り


寮から出て学院へ辿り着くと。正門付近にラーリアとロムリスが待っていた。


「おーっほっほっほ。御機嫌ようですわ! ティアさんオリビーさん」


ロムリスも頭を下げる。


「「御機嫌よう」」


僕達も挨拶を返す。


「お二人共事前の注意事項は確認しまして? お二人のことだから大丈夫だとは思いますが……」


「お気遣いありがとうございます。ラーリア様」


「……あちらに軍の方がいらしています。と言っても私の部下ですから二人に高圧的な態度はとらせません……チラリ」


ロムリスは戦場帰りであり軍にも所属している。恐らく僕達の護衛もかねてのことだろう。直属の部下なだけあって精鋭であると見た。


しかし、そんなことアピールしても何にもならないのでは?


「す、すごい……ロムリス先輩……」


オリビーには凄いことだったらしい。


「ふふふ……」


ロムリスも少し嬉しそうな顔を浮かべている。


「それでは向かいましょうか、軍の魔動車まどうしゃがお待ちですわ」


『魔動車』というのは遠距離移動手段として用いられている乗り物だ。運転には魔力制御が得意でなければならないため、免許の取得は大変だと聞くが……共和国軍であれば問題はないだろう。


「私魔動車乗るの初めてだ……ティアちゃんも?」


「初めてですよ……」


もちろん魔動車は一般人が乗ることなどない高級品だ。だけど僕は『組織』に所属していたため任務で乗ったことがる。一応運転もできる。(無免許であるが)


「ティア様~~~」


するとモブキヤラは早朝にもかかわらず僕達を見送りに来た。後ろには恐らく僕のファンクラブ会員であろう生徒達もいる。


「御機嫌よう皆様……これはえっと……」


「ティア様成分補給です。課外学習が始まってしまえば補給できなくなりますので……それと本日分のファンレターです」


今日は課外学習もあってか数枚程度だ。これなら荷物にならないだろう。


「ありがとうございます。皆さま♪」


僕は皆に作り笑いの笑顔を浮かべると。


「「「ティア様~~~きゃぁぁぁぁ」」」


「こ、これでティア様成分補給できました! お気をつけてください皆様~~~」


皆に見送られ僕達は魔動車がある場所へ歩いていく。


「しかしティアさんは本当にモテますわ。去年は……わたてくしにもこのぐらいファンがいたはずです……皆どこに行ってしまったのですわ……」


「恐らくティエラリア様が全部持って行ったのでしょう。ラリー様ではティエラリア様の美しさに敵いませんので、身の程を弁えてくださいラリー様」


「ですわ!? ロム何ってことを!」


本当に何を言ってるんだ一応従者だろう。


「ラーリア様の方がお美しいですよ、僕は金髪の髪憧れますから凄く綺麗です」


「私もティアさんの黒髪が美しく感じています。本当に素晴らしいですわ!」


僕がフォローするとラーリアは髪をくるくるいじっていた。照れているようだ。


「――私の銀髪はどうですか? 銀も良いです。金よりも……」


「ロ、ロムリス様の髪もとてもお美しく、華麗ですよ」


何という言わされた感!


「あーティエラリア様の黒髪食べたい……栄養あるだろうなぁ……一本くれませんか?」


本当に何を言っているんだ。髪を食べるなんてこと……ありえないだろう。


「絶対にダメです。あげさせませんよ! 抜けた髪を拾うのもだめですから!」


「ケチですねオリビエ様……」


「さ、流石にそれは困ります……お許しくださいロムリス様……」


☆☆☆魔動車へ


髪の話をしながら魔動車の元へ向かうと、周りに共和国の軍服を纏った軍人が三人。


長い髪に整った顔立ちをしているが皆男の娘である。


軍人達はロムリスに対し敬礼をすると、ロムリスも答礼する。


「「「ロムリス隊長!」」」


ロムリスの部下だろう。かなり統率が取れている。


「止してください。ティエラリア様の前で私が嫌な上官に見えるではないですか。私は部下をねぎらうとても良い人です」


「「「え?」」」


ロムリスの部下たちは硬直していた。


「で、ですが、ロムリス隊長は……っぐぁっ……なぜっ」


何か言おうとした部下をロムリスは一瞬で黙らせた。かなりのスピードだったな。


「良いですか……話を合わせてください」


聞こえてるぞ……ロムリス……


「「「っひぃ! ロムリス隊長は裏表のない素敵な人です!」」」


「っふ……ふふふ……よろしくお願いしますよ……皆さん……チラチラリ……」


今の行動でロムリスが共和国軍内でどのような人間か大体理解できた。


それは『白銀の帰還者』の異名を持つだけあって恐れられているのだ。あと、完全に言わせてるし……


そうすると、部下達に魔動車の中へ案内される。中は流石共和国軍と思う快適さがあった。


オリビーは僕の隣に座ると、目をきらめかせていた。


「す、すごい……こんな風なんだ魔動車って……うわぁ……広い」


「おーっほっほっほ! 共和国が誇る魔動車ですわ! かっこいいでしょう! 快適でしょう! 美しいしょう!」


「動きますから座ってくださいラリー様。皆様も揺れますのでご注意を」


「失礼しましたわ……」


ラーリアが黙ると、ロムリスが僕の方を向いた。


「私は同じ魔動車を専用で持っています。ティエラリア様もしよろしければ助手席でご一緒にデートなど……」


だからなんでさっきから僕のこと口説いてるのこの人……


「ロムリス先輩も静かにしてください。勝手に私のティアちゃんを口説かないでくださいよ!」


オリビーのになったつもりはないよ僕は……


こうして魔動車は動き出しエーネスト跡地へと向かった。

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