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百合と呼ぶにはあまり残酷だ  作者: 空現実
第二章 聖シエール魔法学院課外学習編
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第23話 バレないための嘘

☆☆☆噂?


寮へ辿り着くと入り口にカノンが立っていた。


「カノン様御機嫌よう」「カノン先輩御機嫌よう」


「ああ、二人共御機嫌よう。こうして話すのは研究施設の一件以来だね」


僕達三人は研究施設の件で共和国軍に呼び出された。そして、各自が状況を報告。しかし僕以外の二人はパニックに陥っていたため、僕の供述だけがまともに使われたらしい。


その時、危険な場所での冷静な分析に対して疑いの目を向けられたが『将来は魔法研究師を目指しています』と答えたら納得してくれた。


今後は疑われれば魔法研究師を後ろ盾にしていこうと思ったほどである。魔法研究師超便利!


「ナイティー君とアルティー君は意識を取り戻して復学するよ」


明日夢病からの復帰か、運が良かったのだな。


「お二人は無事だったのですね……本当によかったです」


「そうだねティアちゃん。最初見た時は何の事件かと思いましたよ……」


「そうだね、でも、公表はされていないけど、恐らく地下にあった研究施設が原因だ。あれ以降『明日夢の黄昏』を見る人はいなくなったし」


「これで怖い噂を聞かなくて済みますね……ほんと怖かった……」


すると、カノンの顔色が変わる。


「いや、そうとも言えないのだよ。これは……生徒間で広がる噂なのだけど……君達には特別に話そう……極秘なことだ。決して他言無用でお願いしたい……」


「「噂?」」


一体どんな噂だというのだろうか、何か魔法関連の物なら……それに極秘ということなら……


「みんなのロマン……は、破廉恥本だ!」


「はははははは……破廉恥本!?」「はぁ……」


がっかりした。よし帰ろう。


「そう。どうやらその本には――」


「僕は先に部屋へ戻っていますね……」


あとはオリビーとカノンに任せればいいだろう。男なのだし、そっちの方がいい。僕がいればオリビーが気まずくなるのだろうし……


「おや、ティエラリア君は興味ないのかい……? そこまで貫かなくてもいいのに、見たいだろう? 女性のあられもない姿が美しく記されているのだよ! 興味がないなんてまるで女の子みたいじゃないか……な~んてね」


……はっ!? 男は皆そういうモノに興味があるのだ。だったら僕が無関心を貫けば、当然疑問を持たれることになる。


「あ、あわわわ……い、いやティアちゃんは……」


僕は性欲のないことから、女性であるとバレてしまう可能性が出るのだ。ただでさえオリビーにバレたんだ。


もうこれ以上はまずい。疑われることも避けなければならない……そうなれば僕の取る行動と言えば……男を演じることだ。つまり……


「……おっぱいは大きいのですか?」


「え、ティアちゃん何を」


オリビーそんな顔で見ないでくれ仕方ないんだ……これは……


「……その本。おっぱいは大きいのかと聞いているのです……」


くそ……思ってもいないことを屈辱だ! ……だが仕方ないんだ。


「なんだ。ティエラリア君は大きいのが好きか。本性を現したね……周りに対する君への期待が性欲を抑制していたのだろう。しかし、大きいのが好きか……分かるよ。かくなる私も大きいのが好きでね。オリビエ君はどうだい?」


「あ、あ、あ、あ! 私は……(チラッチラッ)」


オリビーは僕がいるから焦っているのだ。何度も手を閉じたり開いたりしている。胸の感触を思い出しているのだな。


とりあえず微笑んでおこう。


「えっと……これぐらいの手に馴染むぐらいのサイズがとても良くて……」


……こっちが恥ずかしくなってきた。何度も僕の胸元を見るなよ視線が怖い!


「……も、もしかして……オリビエくん……君は……」


するとカノンが何かに気付いたようだ……まさか、オリビーの目線は胸にある。そして手を閉じたり開いたり。それは胸の感触を知る者にしか分からないことだ。


この学院に居て胸を揉んだことがあるのはおかしい……その矛盾に突き詰められれば僕が女性である可能性が浮かび上がってしまう!


「む、胸を揉んだことがあるのかい……?」


「そ……それは……違くて……あ、はわわわわ!」


オリビーは嘘が下手だ。このままでは僕の正体が!


「毎晩オリビーちゃんはきたるべき日のために胸を揉む訓練をしています。その名残が出てきたのだと……」


「なるほど、そうだったのか……かなり練習したのだね。まるで本物を揉んだことあるような手つきだったから驚いたよ。妄想でそこまで発展するなんてオリビエ君もなかなかやるね~~」


オリビーがどんどんむっつりに仕立て上げられていく。思いのほか楽しい。


「オリビーちゃんはむっつりですので、勘弁してほしいです。死んでしまいますから」


「むむむむむっつりじゃないよ!」


「ははは……さすがカップルだ。よく互いのことを分かっている」


すると、カノンは僕達に謎の紙を渡す。暗号で書かれているが、僕達のとは違うものらしい。読み取るのは苦労するな……


「これは一体?」


オリビーがカノンに聞くと……


「秘密の場所への招待状だ。夜に寮にて……詳細はその場所で伝えよう」


「へぇ……まるでスパイみたいですね……」


冷静を保て、スパイであることまではバレていないはずだ。


「誰にも知られてはいけないよ……それが、その場所に行く方法だ……溜まっているのだろう?」


それだけ言うとカノンはその場を去ってい行く。


「一体何が行われているんでしょうか」


「う~ん。でもすごいことだね……後ティアちゃん。私むっつりじゃないからね」


「……胸元見ていましたよね。バレバレですよ……」


「……ごめん」


「大丈夫です」


その後気まずい空気が続いた。

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