プロローグ 聖シエール魔法学院潜入任務
☆☆☆暗号を読み取れ
僕が持つ手紙にはこう書かれている。
『こんばんはどこにもいない親愛なる皆さんへ! やはり世界は平和であるべきだと思わないかい? 憎しみで殺し合うのは間違っているよ! うさぎがぴょんぴょん跳ねていたり、花が綺麗に咲いていたり。綺麗な物たちをどうして人々は守っていかないのだろうか? 世界はどうしようもなく間違っているんだ。みんなで笑い合えばいいじゃないか!』
僕はクソみたいな綺麗ごとが掛かれた紙をびりびりに破いて捨てた。
ここに書かれている文字列に大した意味はなく。これは『僕達』の間で『暗号』として扱われている。読み取ってみると……
「――コードネーム『折り紙』貴殿の任務は性別を偽って『グランバイア共和国』にある『聖シエール魔法学院』へ潜入することだ。入学の手続きはもう済んである。明日行われる入学式から貴殿は新入生として、その学院で過ごしてもらうことになる」
僕はある『組織』に所属して、その場所では『折り紙』の名で通っている。いわゆるスパイ活動をしていた。
「いいか『折り紙』貴殿の性別は絶対にバレてはならない。恐らくこれが貴殿にとって最大の任務となるだろう。詳しい任務の内容については潜入成功後に報告する。健闘を祈っているぞ」
そう記されている。
『聖シエール魔法学院』
その名の通り、魔法を極めるための学院だ。魔法の才能に恵まれた貴族生徒達が集まり、日々魔法の鍛錬に精を尽くしている。
しかし、そんな優秀な生徒ですら卒業できるのは一握りだ。
僕は明日から『グランバイア共和国』の『聖シエール魔法学院』生徒として振舞わなければならない。届いた制服を確認するとブラウスやスカートはどれも一級の素材が使われている。
僕は迷わず聖シエール魔法学院の制服を着ると鏡で確認する。
「これで……大丈夫だろうか……」
肩まで伸びた黒い髪。小柄で華奢な肉体。中性的な顔立ち。体格はいくらでも誤魔化すことが出来る。
「えへ……よろしくお願いします! 皆さま!」
鏡に向かって気持ちの悪い作り笑顔を浮かべた。嘘で笑うことは得意だ。これなら正体がバレたりすることはないだろう。多分。
僕は明日から聖シエール魔法学院の生徒だ……
僕は明日から聖シエール魔法学院の生徒だ……
何度も連呼し続けた。