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太陽の向こう側  作者: しのはらかぐや
第1章 結成
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二十一話 トウカの踊り


パーティは和やかな時を刻んでいた。

たてのりはゼーローゼの領土に住む貴族たちの機嫌をとりつつ酒を勧め、アルアスルは先のモンスター退治の話を少々大袈裟に話して聴衆を沸かせている。

タスクと莉音は豪勢な料理を片っ端から摘んでは感嘆の声を漏らし、トウカはツェントルム随一の踊り子として若い娘たちに取り囲まれていた。


「トウカさん、本当にお綺麗」


「お会いできるなんて光栄ですわ」


「まるでエルフの王族のような淡い緑の瞳じゃありませんか…それに透けるようなペリドットの髪、白い肌…本当に伝説の処女雪のエルフそのままのお姿ですわ」


普段聞きなれた酒場の男たちからのものとは毛色の違う、教養のある賛辞にトウカは戸惑った。


「あ、はは…ありがとう…」


麗しき令嬢たちの憧れの眼差しに耐えられずトウカは目線を逸らす。

令嬢たちの春に歌う小鳥の可憐な声色は脳味噌をくすぐる違和感があった。

黄色い声に気が付いた莉音は宝石のように飾られた果物に伸ばしかけた手を止めて振り返る。つられてタスクも振り返った。

令嬢に囲まれているのがよく見える橄欖石(かんらんせき)の天使だとわかって莉音は口を引き結んだ。

天使の加護は皆が等しく受けるべきだ。また、トウカは街随一の踊り子であり注目を集めるのも当然のことである。


「ん?トウカちゃん、やっぱすごいなぁ。なんや満更でもなさそうなんが面白いけど」


「…他の子ばっか構って…満更でもない…」


小さな体躯から唸るように発された言葉はアルアスルの笑い声にかき消されて誰にも聞こえはしなかった。


「ほんでな、俺らのパーティに同行して活躍してくれたんがあのツェントルムの一等星、トウカちゃんやねん!」


アルコールに踊らされたアルアスルが役者がかった大袈裟な仕草でトウカを指差した。

屋敷で勉強と交流会ばかりの退屈な日々をおくる貴族たちにとってアルアスルの話は刺激的で面白く、ほとんどの人々が聞き入ってたため会場中の視線がトウカに集まることとなった。


「美しい方がいらっしゃるとは思ったが、彼女が…」


「噂通りの美しさだ」


「見にいったことがあるが、舞台からおりても伝説のエルフそのままだな」


人々がトウカの姿を見て口々に感嘆の声を上げる。

一部の令嬢だけでなく会場全体に注目され賛辞を向けられたトウカは踊り子として名誉なことだとはにかむ。

そして、酒が入って気分も上がったトウカは大きく息を吐くと夜の蝶の顔となった。


「紳士淑女の皆々様、本日はこのような盛大なパーティを開催いただきましたこと厚く御礼申し上げます。ツェントルムのギルド、シュテルンツェルトの踊り子トウカと申します」


「ほ~、なんかトウカちゃんスイッチ入ってるな」


タスクが自分と莉音の口にステーキを詰め込みながらトウカの様子を見守る。


「このトウカが、皆様の酒宴に華を添えさせていただきたいと存じます」


深々と一礼をしたトウカは広間の中央へと足を進め、舞踊の構えをとった。

部屋の隅で弦楽器を奏でていたアンサンブルが曲調を変え、トウカが踊るといわれている民族調の調べを流す。

トウカの爪先はそろりと半円を描き、ヒールを鳴らして軽やかに跳躍する。エルフの正装である羽衣をひらひらと翻す姿は流石に伝説と謳われる風格だ。

一振りするごとに柔肌の輝きは増し、ひとつステップを踏むごとにその白い肌は光を放つ。


「相変わらず、すごいチャームのバフ…」


急にはっきりと見えるようになったトウカを見て莉音がボソリと呟く。

その背後でゼーローゼは目を細めて執事の耳打ちを聞いていた。

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