第十七話 呆気ない終わり
タスクの目線の先で、モンスターの死後の灰が風もないのにさらさらと移動している。
「なぁ、これ…」
莉音を除いたメンバーもそれに気が付いた。
「たてのり、今日は莉音を連れて先に宿に戻ってろ。俺らはこれ追いかけてくるから」
タスクがエレジーの尻を押す。
たてのりは何か言いたげに口を開いたが、乗せられたガウの毛に埋もれて寝こける莉音を一瞥して大人しく踵を返した。
「気を付けろよ。何かあれば信号で呼んでくれ」
「わかった」
言い残してたてのりはエレジーに跨り、ガウに着いてくるよう声を掛けると宿の方へ走っていった。
「じゃあ、あたしらはこの灰を追うか」
人が歩くくらいの速度で移動する遺灰を指さすトウカが先陣をきる。
アルアスルとタスクは頷いてトウカに続いた。
ツェントルムの西門から出て数十分距離を歩いたところには豊かな自然が広がっている。
この辺りはもちろんゼーローゼの所有地であり、その一族が管理も任されている土地だ。
「いやとんでもなく暗いな…」
同意を求めるようにタスクは隣を見て、闇に浮く金の瞳が黒に侵されている様子にため息をついた。
「えぇな、ネコは…」
前を進むトウカもこれといって闇夜に足を取られることもない。随分暗さには慣れているようだった。
「え?明かり必要なの俺だけ?うそやろ…」
ぶつくさ言いながら凝った装飾のランプを取り出して火をつける。
アルアスルの瞳が一気に金色に戻った。
ゼーローゼの管理下にあるはずの山は灯りすらなく不気味な寒さと底知れない暗さだった。
植物は荒れて好き放題生え、下級の虫型モンスターがザワザワと走り蠢く音が微かに聞こえる。
「なーんか結構奥まで来たな。あ、灰…」
山に入ってからさらにしばらく歩き、木しかなかった景色に開けた場所が現れた。
灰は急に速度を上げて吸い込まれるようにその場所へ流れていく。
大きく開けた場所の中心には気の切り株があった。
灰はそこへ呑み込まれて跡形もなく消える。
「魔法陣あるか?」
「あ、これ…」
切り株の周囲をまわって地面を見ていたアルアスルはトウカの声で切り株本体に目を移す。
切り株には小さな記号とも文字ともつかないものがびっしりと刻まれ浮き上がっていた。
「うわ…気持ちわる。この切り株自体が魔法陣か。えーっと、この模様みたいなの破壊したら効果無くなるよな?」
アルアスルは言いながら尻尾でパタパタと文字を払い落とす。
文字にはヒビが入り切り株から呆気なく剥がれ落ちた。
「こんなんでええんか…?」
あまりの呆気なさにタスクが不安な顔をする。
トウカは切り株に手をかざして頷いた。
「うん、もう魔力は感じないね。そもそもランクDだよ。毎回夜で場所が違うというのが厄介だっただけで」
「あぁそうか…運悪くモンスターが最強やったからすっかり忘れてたわ」
疲れた様子でアルアスルが尻尾を振る。
タスクも眠そうに欠伸した。
「そしたら明日はシュテルンツェルトに報告行って、ゼーローゼから金ふんだくらなあかんな!」
「とりあえず戻って寝よう。莉音とたてのりが心配だしね」
3人は顔を見合わせて笑った。




