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太陽の向こう側  作者: しのはらかぐや
第1章 結成
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番外編小噺 風呂での一悶着②


タスクはたてのりを廊下にぽいと捨て置くとドアを開けて莉音を中に招いた。

大きなベッドが部屋のほとんどを占め、それ以外には何もない。

タスクが過ごすには少々窮屈そうな部屋ではあったが、物が少なく片付いている。

職人といえばもっと物が多いイメージだったため莉音は意外だという顔をした。


「俺は収納空間があるからな、ものは全部そっちやねん」


「はぁ、なるほどなぁ」


「莉音の部屋は向かいやで」


廊下を挟んだ向こう側でアルアスルが声をかける。

深夜にこれほど騒いで大丈夫なのだろうかと少し心配にもなったが、他のドアは開いているため今はこのメンバーしか泊まっていないのだろう。

アルアスルが部屋に入るのに続いて莉音もそっと中を覗く。確かにタスクの部屋に比べると更にこじんまりとした質素な部屋である。

ベッドはヒューマンであれば一人寝るのにも窮屈そうで、部屋には洗面所も風呂場もない。

引き出しがついた何の機能も果たせなさそうな小さなデスクと硬そうな椅子以外には本当に何もなかった。

しかし掃除は行き届いているようで埃っぽくはなかった。莉音は本当に少ない荷物と杖をベッドのわきに置いた。


「ありがとうなぁ、アルちゃんの部屋とたてのり…さんの部屋はどこ?」


「俺らは莉音の隣やから何かあったら来てな。今日はもう部屋戻るわ、お風呂は一階の左奥やで!」


一通り部屋の様子をチェックして回ったアルアスルはそう言って廊下のたてのりを引きずって隣の部屋に消えていった。


「俺ら……?え?部屋……2人一緒なん…?」


隣でアルアスルがなにやらたってのりに文句を言っている声が聞こえる。

どうして二人が同じ部屋なのかは明日聞くことにして、莉音はひとまずベッドに腰を落ち着けた。何ともなしにデスクの引き出しを開けてみると、この宿の説明や注意事項をまとめた紙が入っていた。

莉音は細かい文字が読めるほどの視力を持ち合わせていない。

全体に霞がかかったように本当に近場のものしか見えないこの不自由な目では、鼻がつくまで近づけて太文字を見るのがやっとだった。


「なになに……おんせんのゆをひいて……回復の効能……温泉!?ここの宿のお風呂は温泉なんかぁ!」


ドワーフ村にも温泉はある。教会で集団で暮らす莉音は教会に付属の大きな共同風呂に入ることがほとんどだったが、たまに入る岩場での温泉はとても気持ちがいいものだった。

大きな街の温泉ならば、こんな小さな宿でももっとすごいものかもしれない。

そうと思えば一気に興味が湧いた。莉音はすぐにクローゼットのタオルを引っ張り出すと、一目散にタスクの部屋へ向かった。


「タスクー!」


「え、何?」


先程別れたばかりの莉音にドアを叩かれタスクは戸惑ったように姿を現す。

帽子を脱いで更に小さく見える莉音のキラキラに輝く目に初めは怖いものをみるようにしていたが、手に持ったタオルを見て合点がいったようだった。


「なんや、風呂か?ここ、部屋はこんなやけど風呂は結構いいで!」


「うん!温泉なんやろ?あて、行きたい!」


「え……?うん、あぁ、階段あかんのか。俺も行くからちょっと待ってな」


なぜ莉音が風呂に行きたいことをわざわざ自分に言いに来たのか意図を図りかねたタスクはすぐ横のそこそこ急な階段を見て微笑む。

そして自分もタオルと替えの服引っ張り出してくると、莉音を担ぎ上げて階段をおり、廊下左奥の方へ進んだ。


「わぁ確かに温泉の匂いやなぁ、濃いわ」


「よいしょっと。じゃあ、またここで待ち合わせな。莉音はあっち側……」


「ん?」


「……え?」


女湯と書かれた暖簾側に莉音をおろし、自分は男湯側に行こうとする袖を掴まれてタスクは困惑する。

それだけでなく、あろうことか莉音はそのまま男湯の方について入ろうという素振りを見せたためタスクは慌てて莉音を抱え上げた。


「まてまて!こっちは男湯や!莉音はあっちやぞ!」


「え……でも……」


莉音は困ったように首を傾げる。


「あては一人ではお風呂は入れへんのよ」


「……は?」


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