今日から私も
「「私たちは救助隊として未来を助けることを誓います。」」
声が響く、歌のように滑らかにその宣言は響く、
「「たとえそれが、地の奥底でも、光が届かない水の中であっても、足がつかない天の果てでも」」
今日、私たちは新しい人生へと踏み出す。
「「凍えても、焼かれても、息が出来なくても」」
人々を助ける救助隊として、
「「命を助けることを誓います。」」
「その誓い、破ることなかれ」
そうして光が消えた。
荘厳な建物、薄い肌色の壁に、屋根の中央にはダンジョン救助隊のシンボルである、星と杖と鎌のエンブレムが掲げられている。それに並ぶように各国の国旗がある。
私は今日から、ここで働く。
よしっと、頬を軽く両手で叩き、職員用の入り口から、建物の中に入る。
入ってすぐにある、入退場用の魔道具に自分の《魔証》を当て、中に入る。
階段を上り、中央会議室の向かい側にあるその扉の前に立つ、扉には【ダンジョン救助隊第1隊】の名札がついている。
深呼吸をする。ゆっくりと落ち着くように。
覚悟を決め、扉をノックする。まだ、心臓は音を立てているけれど、夢はこの扉の向こうにあるから。
「どうぞ」
中から女性の声が聞こえる。
「失礼します。」
入ると中には7名、救助隊の制服に身を包んだ人たちがいる。
「今日からお世話になります。ダンジョン救助隊第1隊に配属されました。ユナです。
ご迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願いします。」I
少し早口になってしまって、その勢いのまま頭を下げる。少し、頬が赤くなっていることを自覚しつつ、顔をゆっくり上げる。
「ユナだね、話は聞いているよ。ダンジョン救助隊第1隊にようこそ。隊長のカラムです。宜しくお願いします。」
黒い髪に黄色の肌、黄金の瞳で私の目をまっすぐ見るその男は、
「《慰めのカラム》」
その言葉を聞くと笑って、
「そう、そのカラムだよ。」
「あっ、私、ごめんなさい。」
とっさにつぶやいてしまったことを謝る。
「かまわないよ。よくあることだから。さあ、副隊長挨拶して。」
そういわれた、鬼人族の女性は1歩踏み出し、腰に手を当てる。
「あたしはドージ、ダンジョン救助隊第1隊の副隊長だ。ドージ姉、姉貴好きに呼んでいいよ。」
褐色の肌に黒い瞳、鬼人族特有の角はおでこの上あたりから1本生えており、白色の髪は腰辺りまである。
「よろしくお願いします。ドージさん。」
「はははっ、硬いねぇ。まあ、呼び方はおいおいね。ほらっ、次はアミダあいさ・・・」
ジリリリリと備え付けられていたベルがけたたましくなる。部屋の中に一気に緊張感が増す。
音が鳴ると同時にカラムは傍にあった受話器を取り、スピーカーのスイッチを押す。
「こちら、ダンジョン救助隊第1隊隊長カラムです。」
「こちら、司令室です。第1隊に救助活動を要請します。」
「了解。」
その言葉とともに、一斉に隊員たちが準備を始める。
「カルタ、水の準備はできてるな。」
「大丈夫です。飲料用、医療用両方あります。」
「マレ」
「医療用具揃ってまーす。」
(私も準備しなくちゃ)。その手際の良さに気を取られかけるが、自分の準備も始める。
「ユナ」
呼ばれた瞬間ドージから物を投げられる。
「あんたの制服だ。今回は上から着な。」
「はい」
ダンジョン救助隊の制服を袋から出し、急いで着る。靴も中に入っていたので、履き替える。荷物はこの部屋に入ったときに誰も座ってなかった机があったので、そこに置く。
体調よし、武器よしと研修時代に習った順に準備を行う。応急手当の道具は、
「はい、これあなたの分。」
先程、マレと呼ばれていた、赤髪で横を刈り上げている女性から道具を渡される。
「ありがとうございます。」
渡された道具を確認し、数が間違っていないことを確かめる。
(テストで暗記させられたから、大丈夫。研修中に持たせてもらった物とも変りはない。)
「確認いいな、行くぞ」。
いつの間にか扉の前にいたカラムのその声に
「「「「「「はい」」」」」」
勢いよく返事をする。