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お誘い

う~~………腹減った~~。


結局昼休み潰れてし…。こりゃどっかで買い食いしないと寮の晩飯まで持たないな…。


ただここら辺に何があるのかわからん。相談できるのは一人。でも流石に授業中に後ろ向く訳にもいかねえよな。寝てるヤツすら居ないんだし…。


こうなったらノートを切って…


『腹減った。どっか買い食い出来るとこねえか?』


よし、これを後ろのヤツに。よっと…。多分机に乗っかっただろう。


トントン…


後ろから紙が来た。早いな。


『私も同意見。今日の放課後は生徒会ないし一緒に行く?』


よっしゃ!話がわかるな!俺は後ろに向かって指で丸を作って見せた。


さて、後30分。なんとか耐えるか。








「じゃあみんな気をつけて帰ってね~。」


姫ちゃんからの連絡事項も特に無くHRは直ぐに終わった。


「じゃ~、ごっきげんよ~。」


『ご機嫌よう。』


姫ちゃんの後にほとんどの生徒が続く。俺はもちろん言ってない。誰が言うもんか。


礼を終えると俺はグルンと後ろを向く。


「桜、行くぞ。」


俺は小声で言った。声を大きくすると周りに聞こえるからな。


「ん、ちょっと待って。」


何!待つのか?もうお腹と背中がこんにちはしそうなんだ。


「椿。今日これからなんか予定ある?」


つばき…?あぁ、俺の隣のドリルお嬢様か!


「急になんですか?特にこれと言った予定はありませんけど。」


おう、放課後になってもお嬢様はナイスドリルだぜ!ありゃ絶対に刺さるな。


「これから真とお茶するんだけど一緒にどう?」


ドリルお嬢様も一緒にか?


「楽しそうですわね。私もご一緒致しますわ。」


そう言うとドリルさんは携帯を取り出した。


「爺?迎えを遅らせて頂戴。ええ、こちらから連絡致します。」


爺だと?爺ってあれか?執事的な感じのあれなのか?


「なぁ桜。爺って何者だ?」


「今、真が考えてるので間違ってないと思う。」


んじゃこのドリルはホントにお嬢様なんじゃないか?


「桜さん。それでどちらに行かれるのですか?」


「いつもの所でいいんじゃない?」


「そうですわね。」


いつもの所ってどこじゃ~い!


「真。行くよ。」


二人は鞄を持ってスタスタ歩いて行く。


そんで廊下に出た瞬間耳を貫く悲鳴に包まれた。


ドドドドドッって効果音と共に囲まれる桜。いやいや、凄い人気ですこと。


「あっ。」


危なっ!桜の取り巻きの一人がドリルお嬢様にぶつかった。倒れそうになるお嬢様の腰に手を回して支える。


「大丈夫ですか?」


「あ、えぇ、大丈夫ですわ。ありがとうございます。」


ドリルお嬢様は俺の肩に手を置いて態勢を治した。


「全く。これだけ人が多いと誰がぶつかったのかもわかりませんわね。」


うん。こりゃあきらかに通行の邪魔だ。廊下の横幅をほぼ埋めている。


「桜さん。下でお待ちしてますから早くいらしてくださいね。」


「なっ!椿!待って!」


声は聞こえど桜の顔は見えず。芸能人クラスの囲まれ方だな。


「では先に降りて待っていましょう。10分程で桜も降りてくると思いますますから。」


う~ん。慣れていらっしゃる。じゃなけりゃあの状況を10分とは言えないだろう。


俺とドリルお嬢様は喧騒に背を向けて歩き出した。俺は後ろをチラッと見た。


『ああはなりたくないな。』そう思った。桜がなんか言ってる気がするけどその声は取り巻きの声に消されて途切れ途切れにしかきこえなかった。


という訳で俺とドリルお嬢様は校門の所で桜を待ってる。ただ俺とドリルお嬢様に会話は無い。それは何故かと言うと…


「椿様~。」


「今日もお美しいです。」


「キャ~~~!」


ってな感じになってるからだ。はい、ドリルお嬢様は校門から校舎に続く道の途中で囲まれてます。


ドリルお嬢様は慣れているのかかけられる言葉に丁寧な対応をしてる。


俺はそんな状況を見ながら校門の柱によりかかってる。


あのお嬢様も人気あるんだな。囲んでる人数は桜にひけを取らないくらいだ。


まぁ慣れてる見たいにだし救助はいらないだろう。たとえ救助が必要でも俺の空腹度合いは限界に近い。


「あぁ…腹減ったな…。」


そういえばこの学園に来てわかった事なんだけどこの宝華学園は人気の学校らしい。校門の外には同年代くらいの他校の男子生徒がスッゲーいる。


男子生徒達はどうやらナンパ目当てらしい。宝華学園の生徒と付き合うのは男にとっての最高のステータスらしい。そんな事を言ってるのを聞いた気がする。


今も校門の外を見れば花やらプレゼントやらを持った男達がわんさか居る。


因みに俺は声をかけられた事は今の所無い。ただ視線はスッゲー感じる。全く意味がわからん。


「お、相変わらず囲まれてるな。」


そんな事考えてたら隣から声がかかった。


「アレはいつもなのか?」


隣には取り巻きから解放された桜が立っていた。


「いつもね。椿はいいところのお嬢さんだからね。」


ふ~ん。なかなか大変なんだな。


「そういえば桜は外の連中に声かけられたりするのか?」


俺はチラッと外を見ながら桜に尋ねた。


「ぼちぼちね。面倒でしょうがないけど。」


「中でも外でも大人気だな。」


笑いながら桜をからかう様にそう言った。


「冗談。外のは『宝華学園の生徒』ならだれでもいいのよ。」


…わからん。そんな考えになる理由が全然わからん。


「真だって声かけられるんじゃないの?」


「いや、見られてるのはわかんだけど声はかけられないな。」


桜は俺を上から下へとジロジロ見る。


「あ~、なるほど。そうかもね…。」


ジロジロ見た結果何かに納得したらしい。


「何一人で納得してんだよ。」


「別に。ただ無自覚は怖いって思ってたのよ。」


…言いたい事がさっばりわからない。なんなんだ一体…。


「あ、椿も来たね。」


あ、ホントだ。集団の視線を背中に浴びながらドリルお嬢様が歩いて来る。


「まったく。毎日毎日よく飽きないものですわ。」


若干お疲れ気味だ。それでもドリルは螺旋を描きながら鋭角に尖ってる。


やっぱどう見ても刺さるよな。おおぅ…


「桂木さん。手を変に動かして如何なさいまして?」


如何なさいましてもなにもな…。これ言ってもいいのか?喋り方を気をつけるなら行動も注意しなきゃだよな…。でもな…。


「なんとなく今の真の考え私はわかる気がする。私は実行したけどね。」


同士が居た!しかも実行済みだと?


「一体なんのことですの?気になりますわ。」


うずうず…。うずうず…。あぁ!気になったら止まらねえ!


「椿。あんたの髪にさわりたいんだと思う。特にその巻いてる所に。」


YES!その通りです!


「私の髪に?そうですね…。桂木さんが触らせてくれるならよろしいですよ。」


「好きなだけ。」


こんなん即答に決まってんだろ。俺の髪なん触られても困らないし!


恐る恐るドリルに触れる。……や、柔らけぇ!てっきり金属的な固さを持ってるとばっかり思ってたぞ!


スッゲーふわふわだ。なんか触ってんの楽しいんだけど!


「では桂木さん。失礼致しますわ。」


ドリルお嬢様が俺の髪を触ってきた。


「…信じられない位サラサラですわ。なにかケアしてますの?」


「いえ、なにもしてませんけど。」


そもそも髪ってケアするものなのか?ってか俺の中でケアってたらレスラーしか思い浮かばないんだけど…。


「何、なにもしないでこの髪?ズルいな。」


ってなんか一人増えた!


「桜。何を…?」


「いいでしょ。減る物じゃないんだし。」


そりゃまぁ…。減ったとしても触られて髪が数本減るくらいだと思うけどさ。


「でも同じ金髪でも真と椿で違うのね。」


「そうですわね。桂木さんのは濃い目の金ですからね。」


俺のは金髪じゃなくて明るい茶色なの!誰も同意してくれないけどな。


「「キャ~~~!」」


な、なんなんだ!いきなり!


声のした方を見るとたくさんの宝華の生徒がいた。なに?何事?


「そういえば校門だったの忘れてたわ。」


「私も迂濶にも忘れておりした。」


これはアレか?『憧れの桜とドリルお嬢様が!』的なアレか?


「椿、真。逃げるわよ。」


「ええ。」


はぁ?逃げるっておい!ちょっとまってって…ぎゃ~~~~!抜ける!肩が抜ける!引っ張んなって!


なんだか訳のわからん状況で俺は桜とドリルお嬢様に手を引かれ校門から走り出した。


「ここまで…来れば…大丈夫…そうね…。」


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ。」


「腕痛い…。」


軽く肩を回すけど…外れてないな。腕の骨も異常なさそうだ。桜はえらい力で握るしドリルお嬢様はぶん回すし、…外れるかと思ったぞ。


俺は息を整えてる桜と両手を膝に付いて肩で息をしてるドリルお嬢様をみて自販機まで行ってお茶を2本とコーヒーを買って来る。


「よろしければどうぞ。」


コーヒーを口に運びながらお茶を二人に渡す。


桜はお茶を受け取ると中身を一気に飲んだ。そりゃもう凄い勢いで。ボトルが『ベコッボコッ!』って音がしてた位だ。


一方ドリルお嬢様は俺達に背中を向けてお茶を飲んでる。うん、お嬢様っぽい。


一方の桜は…やっぱこいつをお嬢様って属するのはサギっぽいんじゃないか?


「そういえばどこのお店に行くんですか?」


俺はここら辺はホントにわからないぞ。走った道は覚えててもどこに居るかはわからないからな。


「ああ、そこよ。」


桜の指差した先にあるのは落ち着いた店構えの所だ。…期待は出来そうだ。これで中がウフフアハハだったらドン引きするけどな。


「椿、大丈夫?」


「大丈夫です…。ただ早く…座りたいですわ。」


お嬢様はまだ息を整えるきれてないのか。


「そうね。じゃあ入りましょう。」


先導する。その後ろにドリルお嬢様。そんで俺と続いて中に入って行った。


内装も外観と同じく落ち着いた感じの感じだった。…よかった。キャハハウフフな感じじゃなくて。


空いてる席に座ると店員さんがお冷やとメニューを持って来た。


三人でメニューを見て俺はカルボナーラとコーヒー。桜はホットケーキとアイスティー、ドリルお嬢様はホットティーを注文した。


「それで、桜。私もご一緒した理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


ん?このお嬢様は一体何を言ってんだ?チラッと桜を見ると『あちゃ~』見たいな顔してるけど…。


「やっぱ椿にはバレバレね。ねえ、お嬢様は約束を破る様な不義理な事をしないよね?」


流れが全くわからん。とりあえず桜がなんか話すのに俺は居てもいいのか?


「もちろんですわ。それとも桜には私が約束を破る様に見えますこと?」


「だよね。よかったよかった。なぁ、真?」


って俺~~!?こいつは何を企んでやがるんだ?


「あら、桂木さんの事でしたの?私はてっきり桜の思い人の事かと思っておりましたわ。」


「そ、それは今は関係無い!」


思い人?へぇ…桜に好きな人いるんだ?


「桜のその思い人は私も気になります。」


「ま、真まで!こら、椿!そもそもあの人のはお互いに共闘って話でしょ!」


「ええ。ですから桜がこっそり抜け駆けしたのでは無いかとヒヤヒヤしましたわ。本当にあの方の件では無いのですね?」


「だから違うって!今回は真の件よ!」


詰め寄るお嬢様も中々怖いな…。これはこれでアレだけどそれ以上に桜だな。顔真っ赤にして慌ててるし。スゲーおもしれー。


「わかりました。桜を信じますわ。それで桂木さんの話とは?」


おぉ、そうだった。なんか俺の話だったんだ。桜はなんの話をする気なんだ?


「そうよ、真の話よ。実は椿にちょっと協力してほしいのよ。」


水を飲んで落ち着いた桜は前に乗り出しながらそう言った。


「協力…ですか?」


「そう。生徒会の一部しか知らない件なんだけど。」


ああ、なんとなく桜が何を言おうとしてるかわかった気がする。確かにお隣さんもなら楽になるな。


「私でお力になれるのでしたら…。ただ私に得はありまして?」


「椿、ちょっと耳を貸して。」


なんか二人で耳打ちをし出したぞ。


『………鈍くて……ないの。』


『まさか………………ございませんこと?』


『…………感じ………よ。』


『…………ですわ。』


二人で話されると俺はあぶれるんだよな。…カルボナーラまだかなぁ…。


『だから…………。』


『……………ようですわ。』


なんか二人共俺をチラチラ見てっけど…。う~、てもちぶたさだな…。


「桂木さん。」


「は、はい?」


なんだ秘密のお話は終わったのか?ちょっとビックリしたぞ。


「桂木さんのお話がなんなのか存じませんがお力になりますわ。」


「あ、ありがとうございます。」


なんか目をキラキラさせてスゲーヤル気だよ。桜は一体何を言ったんだ。


「それじゃあ真。生徒会で話したみたいにお願いね。」


つまりここからはこのお嬢様にたいしてもいつも通りでいいって事だよな。


「ああ。わかった。」


お嬢様は俺の返事を聞いて肩をピクッと動かした。


「今までは丁寧に喋って来たけどこれが俺の本来の話し方って事。」


ジーッと俺を見るお嬢様。すると突然サッと目を逸らした。


「こ、これは強烈ですわね…。」


ん?なんか言ったか?いまいち聞き取れ無かったけど。


「なんかね、一応は代表だからってお行儀よくしてたらしいのよ。」


「そうでしたか…。つまりはこの件を他の方に言わなければよろしいのかしら?」


「まぁそうらしい。なんか周りが騒ぐからって言ってたけど。」


そりゃオホホホでハハ~ンなお嬢様の中じゃ目立つんだろうけど…


「わかりました。誰にも口外しない事を約束しますわ。」


「わるいな。でも隣のアンタも協力してくれるなら心強い。成績もいいみたいだから色々相談させてもらうよ。」


このお嬢様はその手の授業の時に頼りになりそうだな。礼儀作法とかしっかりしてそうだし。


「なによ。授業だったら私にも聞きなさいよ。」


なんか横で桜から抗議の声が上がってんだけど…。


「いやいや、桜が礼儀作法とかちゃんと出来てるとは思えねぇんだよ。」


「確かに桜はいつもギリギリですわね。」


笑いだす俺とドリルお嬢様。桜はなんか膨れてる。


「あ、桂木さん。桜だけ名前で呼んでるのはなんですので私も名前で呼んで頂けます?私も名前でお呼びさせてもらいますので。」


名前!?このお嬢様の名前はなんてんだ?桜がさっきから呼んでたとは思うけど全然覚えてねえぞ!ここは勝負所だ。俺!頑張って思い出せ!


「…ドリル?」


はい、思い出せませんでした。その結果ずっと思ってた名前が出ました。


「誰がドリルですこと!」


はい、すいません。当然そんな名前じゃないですよね。


因みに桜が横で爆笑してます。目に涙浮かべながら腹抱えてます。


「しっかり覚えてくださいませ。椿ですわ。」


そうそう、椿。さっきから桜が呼んでたのはそんなんだった。


「じゃあ椿。よろしくな。」


「それでよろしいのです。改めてよろしくお願いしますわ、真。」


まぁ、こんな感じで協力者がもう一人増えた訳だ。


補足ながら出てきた食い物は満足のできる味だった。

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