贈り物
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……今日も今日とて意味のわからない授業が多い…。テーブルマナーなんか一切知らねえぞ!美味しく食べれりゃそれでいいじゃねぇか。
プシュ~~。とか排気しながら机に突っ伏してぇ…。そもそも普通教科も確実に一度は差されるから嫌だ。
そんな愚痴を頭で思い浮かべながら脳内でストレス発散とばかりに嵐をボコボコにしながら教科書を片付ける。
『桂木 真さん。桂木 真さん。生徒会室まで来て下さい。』
またですか?なんだか毎日呼ばれてる気がするな。…そして今日も昼飯を食えないんだろうか…。はぁ…行くか…。
コンコン…
「失礼します。」
何事も無く生徒会室にやってきた俺はノックして中に入る。
中に居たのは会長と会計の人。そんでもって甲野さん。
「お呼びして申し訳ありません。そちらにおかけ下さい。」
会長が指した先には椅子があった。じゃあ遠慮なく…。
俺が椅子に座ると生徒会室のドアが開いた。
「悪い。すこし遅れた。」
やって来たのは副会長さん。……そうそう、水無月さん。
「揃った所で話を始めましょう。甲野さん、準備を。」
甲野さんはカーテンを閉めてスクリーンを下げて部屋の電気を消した。…なんの話だ?それ以上に俺はなんで呼ばれたんだ?
「まずはこれを見て下さい。」
スクリーンにうつしだされたのは数枚の写真だ。
…なるほど。写真みれば俺が呼ばれた意味が少しは理解できるな。
なんてったって映ってるのは俺だからな。ってちょっと待った!
俺は慌てて立ち上がりプロジェクターの光を遮った。
「桂木さん。突然どうしました?」
どうしたもこうしたも無いわ!なんでわざわざ体育祭の写真まで!仮装とか猫セットとかさ!
「…この写真はよろしく無いです…。」
「では飛ばしますから座って下さい。」
…なんだかその微笑みに黒さを感じるのは気のせいだろうか。…気のせいだよな…?
俺は深呼吸をしながら座ってた椅子に座る。
ガシッ!
ん…?俺の肩に手を置くのはどちら様かな?右を見ると水無月さん。左は会計の方。あの…笑顔の裏に黒いのが見えます。
「聖。抑えるから続きよろしく。」
「二人で止める。」
「お任せ下さい。」
なんなんだよ!いつの間にそんな合図だしたんだよ!
スクリーンに再び映し出される写真。
「わ~~~~~!」
仮装の写真だ。しかもヒラヒラしてる所からなんか白いの見えてる。
「離してください!」
「誰が離すか。」
ぬぉ~!立ち上がれねぇ!ヤバいって!恥死するって!
「この写真は霞ヶ崎学園の教師の方からお預かりしました。」
ゆ~ちゃん!間違いなくアンタだろ!こんなん確認するまでもねえ!
「甲野さん。次を。」
会長の指示の元、次々と写真が映し出される。時間にして5分位。……悶死しそう…。
「写真は以上です。」
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
俺は机に突っ伏した。それでようやく肩から手が離された。
「メッチャ疲れた。」
「暑い。」
俺の肩を掴んでた二人は自分の席に戻ったみたいだ。
「桂木さん。あと、数名の方から伝言をお預かりしてます。」
会長は懐からボイスレコーダーを出して再生を始めた。
『真~。写真は気に入った?精々頑張りなさいよ。こっちは気楽に稼がせてもらってるから。』
やっぱり予想通り写真はアンタか!って待て!アンタはまた売ってるのか!売ってんだな?
『桂木さん。我が校の代表として頑張って下さい。あきらも応援してますので。』
あ~…麗さん。なんか真面目な挨拶が非常に嬉しいです。
『…ネタ待ってる…。』
この伝言は必要か?俺はネタを持ち込んだ覚えはねえ!周りが俺をネタにしてんだ!
『まこっちゃん。ちゃんとやってる?こっちはまこっちゃんが居なくて少し静かかな?体には十分気を付けてね。』
巴か。俺は今、実姉のせいでボロボロだ。そんでなんで俺が居ないと静かになるんだ…。
『真。頑張ってお嬢様しろよ。』
うっさい。実際にいたら今の鬱憤を全部晴らしてやるのに。
伝言はこれで終わりらしい。会長はボイスレコーダーを懐にしまった。
「桂木さんにお伺いしたい事があるのですが。」
「はい。なんでしょう?」
会長はいつもの笑顔を浮かべながら俺を見てる。
「桂木さんの担任の先生と少しお話をしたのですが、こちらでの桂木さんの様子を話したら…。」
あぁ…なるほど。なんとなく予想できる気がするな。
「笑ってましたか?」
「はい。それは楽しそうに。なにか思い当たる節があるのですか?」
やっぱり…。ゆ~ちゃん…アンタは人の苦労を爆笑で済ませないでくれよ。
「思い当たる事はあります。私の担任はお互いの事をよく知ってますから。」
ん~…。やっぱ色々と言った方がいいのかな?
「よろしければお話頂けますか?」
別によろしいんだけど。数日の苦労が水泡に喫するだけだし。
「まず、担任は私の姉です。なのでお互いをよく知ってる訳です。」
「同姓愛かと思った。」
そこ!会計の!変な事言うな!俺は間違っても男を恋愛対象としてなんか見ないぞ!
…あれ?俺は今女だから…。ある意味同姓愛者なのか?いや、根っこは男だからそれは普通な訳で…。ヤバい…頭がこんがらがって来たぞ?
「桂木さん、如何なさいました?」
おおぅ!危ない危ない。メビウスの輪クラスの無限ループに陥るところだったぜ。
「すいません。大丈夫ですよ。」
変な考えは止めよう。頭を軽く振って思考を飛ばす。
「続きですけど笑っていた理由は…。」
笑うよな…。俺だって毎日虫酸を走らせながら生活してんだからな。
「私の喋り方だと思います。」
俺は4人を見る。みんな意味がわからないって顔してんな。
「喋り方が変ってことなの?私は別にそうは思わないけどな?」
あ、水無月さんが思考を取り戻したらしい。
「桂木さん。よろしければ普通に話してみて頂けますか?」
うわっ!皆が俺を凝視してる!やめて!穴が空くから!
ってなんで喋るだけで変な緊張してんだ?
…よし、腹をくくろう。
「…わかった。普段通りに喋らせてもらう。」
…んで、さっきからずっと気になってたんだけど。
「扉の陰にいるヤツ。出て来るなら今の内だぞ?」
ガタガタガタン…
「に、にゃ~ん…。」
随分ベタだな、おい。
生徒会室内の全員の視線が扉の方に向く。
「俺が大人しくしてるうちに出てこい。じゃないと後悔させるぞ?」
「わかったわよ~。出てけばいいんでしょ~。」
扉を開けて出てきたのは……確か放送部かなんかの人だな。名前は知らんけど。
「せっかくの~特ダネなのに~。」
手にはハンディタイプのカメラ。本当にたいした嗅覚だな。
「録るなら本人の許可を取ってからやるこったな。中身は没収するからな。」
放送部の人は大人しくテープを俺に差し出した。
本来いた四人は俺をジーッと見てる。
「そんな珍しいもんを見る様な目で見んの止めてくれ。」
四人はサッと目を反らした。
「桂木さん。それがいつもの喋り方なのか。」
「あぁ、そうだ。こんな口調のヤツが丁寧に話してっからゆ~ちゃんは笑ったんだろうな。」
さっきもそうだったけど思考停止したときの回復は水無月さんが一番早いな。
「じゃあ今までなんで喋り方を変えてたのさ?」
「そりゃ一応は代表って形で来てるからな。良く見せようって思うのが普通だろ?」
「確かにね…。」
水無月さんは納得したみたいだな。後の3人はっと…
「厄介ね。」
「そうですね。少々問題ですね。」
会計の人と会長が小声で話してる。バッチリ聞こえてるけどな。
「多分、悲鳴が上がるのは間違いですよ。」
甲野さん。悲鳴ってのはなんでだ?
「先日の撮影で桂木さんはどの程度映っていますか?」
「ん~と、顔は映ってないよ~。ただ後ろ~から映ってるのとか~髪が~映ってるのはあるね~。」
会長、会計の人、甲野さんはなんか悩んでるみたいだ。
「桂木さんほどの髪の生徒は…。」
「長さはともかく色で該当するのは0。」
「つまり見る人が見れば判るって事ですよね。」
なんだ?なんの話だ?全く意味がわからんぞ?
「桂木さん。他の生徒達に囲まれても構いませんか?」
「面倒な事はご免被りたいな。一応は平和な学園生活を目指してんで。」
3人はお互いにお互いの顔をみだした。
「普段からこの喋りで居られたら…。」
「無理。」
「そうなりますと…。」
3人はこそこそと話し合いをしてる。
「ま、真。」
ん?誰だ?って考えるまでもないか。3人は話してるし放送部の人もちょこちょこ参加してんだし。
「ん?なんだ?ってよりあそこの会話に参加しないでいいのか?」
「あぁ、私は頭脳担当じゃないから。」
アッハッハと笑う水無月さん。案外いい性格してるよな。
「なるほど。んで何の用だ?」
「ただ呼んだだけ。どんな反応するかなってさ。」
反応?何を言ってんだ?呼ばれりゃ普通に反応するぞ?
「まぁいいわ。あの話し合いは長引きそうだから。お茶でも飲む?」
「あぁ。もらう。」
水無月さんは立ち上がり冷蔵庫からお茶を出した。…なんで冷蔵庫が普通にあるのかは聞いちゃ行けないんだろうな。
「はい。」
机の上にペットボトルのお茶が置かれる。
「サンキュ。水無月さん。」
水無月はボトルに口を付けて半分位一気にのんだ。飲み物のCM依頼が来そうなほど豪快な飲みっぷりだな。
「プハァ…そう、それなんだけど。」
それ?それって一体どれなんだ?
「水無月さんってのがなんか気になるの。下で呼んでよ。」
下?名前でって事か?水無月さんの下の名前。…………なんだっけ?
「悩んでるね。桜よ。水無月 桜。」
フムフム、水無月 桜か。ちゃんと覚えておこう。
「わかった。ありがとな、桜。」
お礼を言ってボトルを開けてお茶を飲む。
「そう、それでいいのよ。」
これでいいらしい。水無月…桜は俺に笑顔を向けてる。…初めて見たかも知れないな。
「なにそんなジーッと見てるのよ。」
「いや、笑ってる所初めて見たなって思って。」
「そりゃ自己紹介をする前に蹴り倒した相手だからね。」
そりゃそうだな。そうだったな…。挨拶も無しに蹴り倒してんだよな。
「その件はすまなかったな。」
「いいわよ。悪いのは真が来るってわかってながら私と幸が悪いんだから。」
「ゆき…?………あぁ会計の人か。」
俺はいまだ話し合い中の3人の内の1人を見た。
「そうよ。…あ、向こう終わったみたい。」
みな…、桜は空になったボトルをゴミ箱に投げて自分の席に座った。
「桂木さん、お待たせしました。」
「いや、別に構わないけど。」
3人…いや、放送部の人込みで4人か。俺の方を見てる。
「桂木さん。今後も可能な限り今まで通りに生活して頂けますか?」
「今まで通りってのは?」
「喋り方なんですけど。」
う~ん…。まぁ別に今日ここでバレなけりゃそれで生活するつもりだったから構わないけど…。
「なんか理由あんのか?」
「混乱防止。」
この会計の人…ずっと思ってたんだけど口数少ないよな…。
「ちゃんと説明しますね。この学校は女子校なので当然男性は居ないんですよ。」
ここで『実は少し前まで男でした~。』とか言ったら混乱するんだろうな。面白そうだな。いや、言わないけどな。
「そんな集団なので同姓を崇拝する人も居るんです。」
あぁ、桜みたいな感じか。俺がチラッと見ると『何よ。』見たいな表情をしてる。
「桂木さんが考えてる通りです。桜さん見たいに囲まれるんです。」
あれは面倒な感じだよな。スッゲー声上がってたし…。
「桂木さんは今注目度も高いですし、見た目も抜群です。あの映像の通り騒がれてる桜さんを倒してます。その上にあの口調ではなされると…。」
あぁなるほど。言いたい事はよくわかった。ようはそういう事か。
「俺も崇拝の対象になるってことか。」
「そうです。しかも相当な。」
めんどくせ~~。非常にめんどくせ~。
「そういった訳です。放送部にはかんこう令をひきます。」
そっちからもれる事は無いと…。
「確かに面倒な事は嫌いだからな。わかった。」
これは同意しない理由は無いしな。
俺がそう言うと3人はホッとため息をついた。別に普通に喋ってもそんな騒ぎになるとは思えないんだけど。
「クラスには私が居るし。我慢できなかったらくればいいよ。」
確かに桜は後ろの席だし、話やすいな。
「そうだな。桜、その時は頼むな。」
「ええ、頼まれたわ。」
胸を叩く桜。なんか変に自信満々だ。何に対して自信を持ってるのか全くわからないけど…。