荷物持ち
嵐と食料を買った俺は手ぶらで平然と歩いてるわけだが
「なぁ、真。」
さ~て皆はどこにいるかなぁ~~。
「おい、真。聞こえてるんだろ?」
なんかチラチラ見てる人の視線を追っていくと見覚えのおる人が固まって座ってるな。こりゃわかりやすい。
「真様。無視しないで私の現状を見ていてだけないでしょうか?」
「なんだよ。しつこいナンパは警察に連行されるぞ?」
嵐がうるさいので渋々振り返ると、大量の飲み物と食べ物を持った嵐が慎重に歩きながら居るわけだが、別に平常通りじゃないか。
「お前の現状を見た結果特に異常はないと判断できるんだが。」
「この状態に異常がないと思うならヤバいとおもうぞ。」
まったく、たかだか6人分の食事を持った状態で泣き事なんて情けないなぁ。
「その程度で弱音吐いてたら女性陣にいいところ見せられないぞ?」
「って言ったけどまだまだ余裕だな。なんならもっと買ってもいいくらいだ。」
なんでこんなにこいつは扱いやすいんだろうな、こいつは。買ってもいいけど巴達の席もすぐそこだし、買っても持て余すからいいか。
「余裕ならぐだぐだ言わずに運べ。馬車馬のようにな。」
「それはどうかと思うぞ。………」
まったくやかましいやつだな。こういう時は素直に静かに持っておけば俺が誰かにこっそり言う事もないってのに。
さて、周りの視線の先、おそらく巴達がいる所が近付いてきたわけだが。
「なんだか、人集りがあるように見えるのは気のせいか?」
「気のせいじゃないと思うぞ。現に俺にも見えてるからな。」
どうやら俺だけじゃなくて嵐にも見えてるなら幻とか気のせいじゃないな。
「おっかしいな。こういう所なら家族とかカップルとか少なくとも声をかけられない状態でくると思ったんだけどな。」
まぁ、周り囲ってるのが全員男って段階で巴達だなにをされてるのかはわかりやすいな。恐らくナンパだろう。後は、かなり低い確率で巴以外の誰かの生き別れの兄弟がいてそれと偶然遭遇したかだ。
「お前は興味ないかもしれないけど、こういうところは女の子だけでくる場合もあるから中に入りさえすれば声かける相手さがしやすいぞ?」
なるほどね。確かに声かけて上手く行けばそのままここで遊んでればいいんだからそういう意味では楽なのか?
「ちなみに嵐。お前の戦績は?」
「クラスのやつと何度かやったけど入場料の無駄使いをした。あと、一緒に行ったやつが巴に言って散々からかわれた。」
勝ち星は一度も上げてないみたいだな。まぁ、嵐が成功したところは今まで一度も見たことも聞いたこともないけどな。それでも行くのは凄いと思うけど。
「これって見てない振りして逃げちゃダメなんだろうな。」
「ダメだろうな。会長あたりが校内放送で暴露するかもしれないし、巴にはちくちく言われそうだし。」
「桜も生徒会だからなんかしらしてきそうだな。椿はなんかわからん権力を駆使しそうだ。」
そうなった時の事は想像したくないな。一応平和に過ごそうとしてる身としては。嵐の方は日常的な事だから気にならんけど。
「言っとくけど、俺は両手塞がってるからな?」
珍しく先手を打って来やがった。確かに嵐の両手は塞がってるのは事実だ。そしてこの食料を俺が持つという選択肢はない。多分受け取った瞬間になにかしら落とすのが目に見えてる。
………落としたらまた嵐の金で買えばいいんじゃないか?
「なんか悪巧みしてるけど、これをもう一度買い直すのは勘弁だぞ?第一それだけの金は俺にはない!」
そんな事に自信をもたれても困るんだが。でも、これをもう一度買いに行くのは正直面倒だから却下だ。
となると、暴れる事態になったら俺が対処しなきゃいけないのか?こんなところで暴れる馬鹿がいるとは思えないけど。
とりあえずは到着した訳だが、かなり面倒だ。逃げられず、かといっておさめに行くのも気がすすまない。
「いいだろ?女の子だけじゃなくてこういう所は男と一緒に遊ぶから楽しいんじゃん。」
「だから連れがもうすぐ来るって言ってるでしょ?」
「そんなのは放っておいて俺たちと行こうぜ。」
断ってるのは巴だな。てっきり桜あたりかも思ったんだけどな。
ってよく見たら椿が桜を抑えてるな。口も抑えてるって事はなにか暴言吐いて暴れそうな所を頑張って抑えてるって感じか?
麗さんは我関せずって感じでなんか違う所みてるし。なんて言うか流石だなぁ。
「嵐、俺達そんなもんあつかいされてるぞ?」
「俺達ってか今の状態だと俺だけなんじゃねえか?」
…………確かに。そんなもん扱いされる嵐か。別にいつもとなんら変わらないんじゃねえか?
「なんだかお前が変な事を考えてるのはわかるんだけど、それがわかる俺がなんかイヤだ。」
「なんだかんだ長い付き合いだからな。」
のんびり嵐と話してる訳だけど別に巴達から目を離してるわけじゃないぞ?
あ、巴と目があった。