かいそう
なんだかすみません…。
こ、この空気は…俺はどうしたらいいんだよ…。
「二人ともちょっと待て。俺に少し時間をくれ。」
クルッと反転して二人に背中を向けて壁を眺める。…壁は染みも無く真っ白だ。
って違うだろ!!
現状を理解しろ!
桜と椿は同じ人が好きだった、そんでどうやら桜と椿は俺の事が好きらしい…。
…や、やばい…。突然の事態に頭がついていかない…。
「な、なぁ。二人に聞きたいんだけど…。なんで俺なんだ?」
そもそも俺が二人に会ったのはここに来たからなんだから…よくわからん。
「そ、それは、私と椿がアナタに助けてもらったからよ…。」
「俺が二人を?いつの話だ?」
「覚えてませんの?写真を撮った大会ででしてよ。私は桜の応援に行ってましたの。」
大会…。確かあの大会は…
「覚えて無いなら話してあげるわ。あれは大会の閉会式の後よ…。」
閉会式…。確か俺の大会の結果は全引き分けだったな…。勝つ気無かったからな。
「真。あんた閉会式の後に会場の裏に来たわよね?」
裏に…?あぁ。ゆ~ちゃんに呼び出されたんだっけ。『なんで勝たないんだ!』って…
「私達二人も会場の裏に居たのよ。」
「桜の名前を出されて私が呼び出されたのが始まりですけどね。」
なんだと?じゃああの地獄の光景を二人に見られたのか?
「椿を呼び出した理由は私に負けた子が彼氏とかを使って私を痛めつける為だったのよ。」
なんだそりゃ?クソみたいな連中だな。
「椿が捕らわれてるって聞いて私は行くしか無かったから裏に行ったわ。」
「疑いもせずに行った私も愚かでしたわ。」
しかしその話に俺がどう関わってくるんだ?
「それで会場の裏に私が行ったら椿が捕まってて私は男達に囲まれたのよ。」
ヤバいな~。そいつらマジで最低だな。
「そんな時に一人の男の方が上から降りてきたのですわ。」
「その男の人は金髪で手にバッグを持ってたの。」
ん…?なんだかちょっと思い出してきたかも…。
「その人は椿を捕まえていた人を一撃で眠らせたのよ。」
確かゆ~ちゃんから逃げるのに二階から飛び降りたら下に人が居たんだよな…。
「そしてその男性は私に鞄を預けましたわ。」
踏んだ人に謝ろうと思って鞄を持ち替えたら握り損ねて誰かの所に行ったような…。
「それでその人は私の所に来ると私を椿の方に逃がしたの。」
踏んだ人がピクリともしないからお友達っぽい人に声をかけようと近付いたらいきなり殴りかかって来たから思わず避けながら近くに居た人を押した記憶はあるな。
「それから私達二人は呆然と見とれてましたわ。その人は相手の攻撃をかすらせる事なく、むしろ同士討ちをさそうように動きだしたのですから。」
あんだけ人数多いのに一人を囲んでれば避けるだけで他の誰かに当たるんだよね。
「迂闊にも私も動けなかったわ。試合の疲れと椿が無事だったっていう安心感で力が抜けちゃて…。」
「それが暫く続くと相手の男の方々の人数が減って行きましたわ。」
「うん。それで不利を悟ったみたいで男達は逃げて行ったの。」
それは多分上の階から俺を見つけたゆ~ちゃんが凄い殺気を放ってたからだと思うな。
「で、私達がお礼を言おうとしたら…。」
「もう居なかったのですわ。」
そりゃ命の危機が迫ってたからな。ゆ~ちゃんから逃げなきゃいけなかったし。
「それで後日に私の姉さんが撮った写真を見てその人の学校を知ったのよ。」
これだけデカデカと背中に学校名書いてあるからな。そもそも学校名しか書いてないし。
「つまり、私達は助けてもらった人に一目惚れしたのよ!」
「今の話に出てきたのはアナタで間違いございませんこと?」
「ま、まぁ…。話に出てきたのは多分俺で間違いないと思う…。」
話の内容と俺の記憶で若干の差違はあるけど…。俺の記憶では事故だし…。
「それで?真、アンタの返事は?」
「返事って…。それは今言わなきゃ駄目なのか?」
いきなり告白されて『さあ!』ってのはキツいな。
「そうよ。私なのかそれとも椿なのか!返事を聞かせて!」
や、ヤバいぞ…。こんなマジな空気は俺には耐えらんねえぞ…。
桜と椿は二人して耳まで真っ赤になって俯いてるし。
「ち、ちょっと待ってくれ…。俺に5…いや、3分時間をくれ。」
「そ、そうですわね。急に言われましても答えにくいですわよね。」
「うん、待つ。…因みに私も椿も覚悟は出来てるから…。」
「ええ。同じ方を好きになって二人が幸せになれるはずありませんから。」
そこまで考えてんのかよ…。なんて二人だ。
俺は二人を前にしてじっくり考えた。こんな事今まで無かったからそれはもうじっくりと…。
考えた結果…俺は答えを出した。
「よし、俺の答えを言うぞ。いいか?」
「ええ。」
「いいですわ。」
一つ…二つ…深呼吸をして気持ちを落ち着かせる…。
「二人の気持ちに対する答えは…………