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お顔拝借

時間の流れと慣れは恐ろしいもので、最近では周りから相手にされないのも慣れて来た今日この頃。


俺は朝から悩みに悩んでいた。きっかけは朝、教室に入って席に着くなり後ろの席からかけられた一言。


「真。放課後ちょっと顔貸して。」


残念ながら俺の顔は『正義のパン男』みたいに外せないって言おうとして後ろを見たら顔がマジだったもんだから


「ウィ、マドモアゼル。」


としか返せなかった。ヤバいって。ふざけられる眼光じゃ無いって!


そこからまぁ当然のごとく授業には集中出来ない。出来る訳がない。


頭の中は『なんで桜はあんなマジなんだ?』とか『俺なんかやらかしたか?』とか『腹減った(昼休み前)』とか『パトラッシュ…なんだか疲れたよ(昼休み後)』とか授業がまったく頭に入らなかった。


「真。離れ茶室に。」


桜にそう言われたのは帰りのHRが終わった時だ。ちなみに離れ茶室ってのは来客をガチでおもてなしする茶室だったかな?


「き、拒否権は…」

「いいから。」


「今日、よう」

「用事が無いのはわかってるから。」


「お腹へっ」

「減ってるならちょっと我慢して。」


す、全てが読まれてる!


「行かせて頂きます。」


「私は準備してから行くから。先に行ってて。」


準備?な、なんの準備だよ!アレか?救急車的なものか?それとも俺の遺書を偽造したりか?救急車なんか生ぬるいと!霊柩車だと言いたいのか!?


「なんで小刻みに震えてるのよ。それじゃあ茶室で待っててね。」


「あ、あぁ。」


俺は恐怖を振り払いながら足を茶室に向けた。気がおもいなぁ…






という訳で茶室だ。普通はここで『和』を知って心を落ち着かせるもんなんだろうけど…


「落ち着かねぇな…。」


壁に寄りかかって片膝を立てて座ってボーっと天井を眺めてる俺。茶室じゃ正座じゃないかってのは無しだ。礼儀作法なんか知るか。


しかし手持ち無沙汰だ。どうすっかな…。霊柩車が来る前に遺書でも書いて置くか?


な~んて考えてたら茶室の障子が音も無く開いた。


「桜?居まして?」


入って来たのは椿だった。…あのドリルなら障子にプスプスって穴開けられるんだろうな。


「真。私と障子を交互に見てどうなさいましたの?」


「ん~?いや、障子じゃなくて襖でも貫けるんじゃないかってな。」


だって鋭角にいくから貫通力高そうだし。貫通力+回転でそりゃ~凄いパワーを発揮しそうだ。


「これは髪の毛なんですからそんな事出来ませんわよ!」


と本人は言ってるけど実際はどうだか怪しいもんだな。


「それよりもこんな所にどうしたんだ?」


「桜に呼ばれたのです。そう言う真はいかがなさいましたの?」


「俺も桜に呼ばれたんだよ。」


椿もか。・・・・見届け人か?ってシャレにならねぇぞ!アイツは確実に殺る気だぞ!


「真?いきなり震えだしたりしてどうしましたの?」


「な、なんでも無い。ただちょっと寒いだけだ。」


とか言いつつ冷や汗が背中をツーっと伝ってるけど。


「そうかしら?私はそんな寒く感じませんけど。」


座ってジーッと俺を見る椿。そんなに見られてたら逃げられないだろうが。逃げたらドリルヘアーが伸びてうねって俺を捕まえそうな気がするし。


「それはそうと、真。その座り方はよろしくありませんわよ。」


「別に他に誰も居ないんだから気にすんなって。」


「気になりますわ。下着が見えてましてよ!」


ん~?ああ、そりゃあ前から見てたら見えるか。


「いいじゃん。減るもんじゃ無いしよ。」


なんでわざわざそんなの気にするかね?見られてる本人は一切気にして無いのに。


「私の神経がすり減りますわ。」


おぉ!なかなか上手い事言うじゃないか。


「あ、丁度二人とも来てたんだ。」


そんなやり取りの中茶室に入って来たのは…ってか一人しか居ないんだけどな。


「桜。話があるっていかがなさいましたの?」


まぁ、呼び出した本人なわけだ。


「まぁ、ちょっとね。ただ私としてはそこで身構えてる真の方が気になるんだけど。」


「…真、なにしてますの?」


何ってそりゃぁ身構えるだろ!どんなタイミングで殺られるかわからないんだから。


「別になんでも無い。それより呼び出した相手を待たせるのはどうかと思うぞ。」


これはアレだな。かの有名な剣豪、宮本武蔵の『Ganryu-iland Operation』略してG.Oなのか?待たせてイライラした所を斬り捨て御免!みたいな。


大丈夫。対処法はバッチリだ。鞘だ。鞘を手放さなければいいんだ。鞘を捨てると


『小次郎、敗れたり~!』


って言われるからな。って誰が小次郎だぁ!それよりそもそも鞘ってなんだ!俺は刀なんて持ってないぞ!


「ちょっと、真。なんかブツブツ言い出してどうしたのよ?」


んなにぃ?声に出てたのか?


「いや、なんでも無い。気にしないでくれ、武蔵。」


「誰が武蔵よ!誰が!」


「悪い、間違えた。んで、呼び出して置いてなんで遅れたんだ?」


「ちょっと準備してたのよ…。」


準備?刀を研いだりとかか?そりゃますますヤバいじゃないか。


「来たのでしたらその準備は出来たのでしょう?それで話とはなんですの?」


なんでこのドリルお嬢様は冷静なんだ?今から俺が斬られるかも知れないのに。


「うん…ちょっと待ってね…。」


大きく吸って…吐いて…。大きく吸って…吐いて…。


その様子は明らかに深呼吸だな。


吸って…吐いて。吸って…吐いて…。


「ヒッヒッフ~。ヒッヒッフ~。」


吸って、吸って、吐いて~。吸って、吸って、吐いて~。


「ってこれは違うでしょ!真、何やらせんのよ!」


「いや~、ついなんとなく…。」


怒られちった。…なんか深呼吸してるヤツを見るとこの悪戯をしたくなるんだよなぁ。


「とにかく用件を言え。事と次第によっては俺はそれなりの対応するから。」


例えば…刀を振り上げたら逃げるとか、銃を取り出したら逃げるとか。あとは…まぁ…逃げるとか。


「よ、用件はこれよ!」


叫びながら繰り出されたのは…袈裟斬りチョップだと?


考える前に体がしっかり反応していた。桜の右の袈裟斬りチョップに対して俺は右腕でガード!


そして茶室に響き渡る鈍い音。


「な~にしやがってんだコンチキショー!」


しかしこれが刀だったら持ってかれてたな…。


「真、随分と鈍い音がしましたけど大丈夫ですの?」


だいじょばない。腕の芯が地味に痛い。


「こ、これは違うのよ!これはそういうアレじゃなくて!」


そういうアレじゃ無かったらどういうアレで攻撃をしてくるんだろうか?


「コレよ!コレを見せたかったのよ!」


コレ?俺が見たのはチョップの速さと芯にズシンとくるダメージだけだぞ?


「コレとは桜が手に持っている物の事ですの?」


手に持ってる?凶器か?素手だと思って油断してたぜ。


「とにかく、二人ともコレを見て。」


何故かチョップをしながら桜が見せてきたのは…写真だな。馬鹿なヤツがドアップでピースしてる。


「アレ?これって前に見せて貰った写真か?」


確か桜と買い物に行った時に桜のお姉さんが見せて来たんだよな。


「さ、桜!それを真に見せてどうするつもりですの?」


…なんでドリルなお嬢様が慌ててるかがわからないけど…。


「椿、いいから。コレの事は真に聞くのが早いのよ。」


「それは…どういう意味ですの?」


「それはこういう事よ。」


桜は俺と椿に見えるようにさらに写真を出した。


その写真はつい先日の生徒会での査問会の時に出された俺と嵐の写真だ。


……でもさ、桜が好きなんは嵐だよな?俺のは関係無くね?


「まず、真。あんたに言うわ。私と椿はこの写真に写ってる人が……その…、す、す、好き…なのよ…。」


顔を真っ赤にしながらそう言う桜。同じくボンって音と共に頭から蒸気を発して真っ赤になってるドリル椿。


そしてそんななかなんで俺は二人が嵐の事を好きだと言う告白を受けてんだろう?イジメ?


「さらに、真。この人はアナタと赤井さんで間違いないのね?」


桜が指さしたのは査問会の時の写真。…このタイミングで出されてもな…。椿はその事知らないんだし…。


「答える前に…、椿。お前は口は堅いか?秘密は守れる人間か?」


「言っていい事と駄目な事の区別くらい付いてましてよ。」


なんだか解らんが凄い自信を持ってるな。お嬢様方は色々な話を聞いたりして大変なんかな?


「じゃあ、その言葉を信じる。桜が持ってる写真は嵐と男だった時の俺だ。」


「ど、どういう事ですの?」


「どういうもなにも俺は前まで男だったんだ。別に手術をしたとかじゃなくて事故で体が女に変わったんだよ。」


目を見開いて俺をジーッと見る椿。まぁ、その反応は当然だよな。


「で、でも真は女ですわよね?」


「今の体はな。なんなら脱いで確かめてみるか?」


首をブンブンと振ってるけど表情は疑惑の顔だ。


「椿、問題は真が男か女かじゃないの。私的な問題はコレが真って事なのよ。」


桜が指差すのは男の俺の写真。はて?何が問題なんだ?


「椿、この件に関してはお互い抜け駆けは無しって決めたわよね?」


「え、えぇ。そう決めたわね。だからアナタは私にも写真をくれたわ。」


椿が出したのも馬鹿がドアップでピースしてる写真だ。


「なんだ?お前ら二人して嵐の事好きだったのか?」


「違うのよ。確かに私達はこの写真に写ってる人が……好き…なんだけど…。」


また深呼吸をする桜。なんだ?そんなに息苦しいのか?


「その写真に写ってるのもう一人いるでしょ!」


ビシッと指を突きつける桜。って近い近い!目に刺さるだろうが!


んで、写真にもう一人?さてさて、話からすると俺が関係してそうな感じだけど…


「嵐しか写って無い気がするけど…。」


写真を手に取って見ても見えるのは写真一面に写ってるピースしてる嵐だけだけどな…。他にはなんも写ってないぞ。


「あんたの手の下よ。」


おぉ!持つ手で隠れてたのか!どれどれ……


「こりゃ…俺か?」


写ってたのは背中越しに振り向いてる男。背中には大きく『霞ヶ崎』って書いてあるな。うちの空手部に茶髪はいないからこれはほぼ間違い無く俺だな。


「確かにこの茶髪は俺だけど…って…あれ?」


さっきの話だと…これには桜と椿の好きなヤツが…


「わかったでしょ!私はアンタの事が好きなのよ!文句ある!?」


「桜、抜け駆けは無しでしてよ。私もまだ頭が混乱していますけど…この殿方が真でしたら…………。真、私はアナタが好きですわ!」


ちょ…ちょっと待ってくれ!俺が全く理解出来ないんだけど!



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