衝突
あぁ…なんでこんなはなしを…
さて、桜からの視線を浴びまくった授業がめでたく終わった訳だ。
まあ、なんて言うか首筋がすっげームズムズした。後ろから常に視線感じてたからな。
これから大説明会か。…まあ、なんとかなるかな?一応手は打ったし。
「真。行こう。」
後ろから肩に手を置かれる。これが誰かは考えなくてもわかるな。
「はいよ。行きますか。」
声をかけてきた桜に連れられるように席を立つ。
「あら、真。生徒会に呼ばれてますの?」
「ああ。ちょっとした野暮用でな。」
「そうなんですの。それにしても真はよく生徒会に呼ばれてましてね。」
むぐぅ…。よく見てるな。確かに呼ばれる回数は多いけどさ。
「俺はホントは生徒会とかに呼ばれる事の無い平和な生活がいいんだけどな。」
「あら、そうでしたの?」
「そうなの。地味ぃに平和に目立たないで生活したいわけ。」
こら、ドリル…じゃなくて椿!なんでそこで目を逸らす!なんだ、俺には平和な生活を送る権利が無いってのか!?
「真。それは無理よ。」
桜!お前までなにを言うんだ!
「二人は何を根拠にそんな事を言うんだ?」
二人はお互いの顔を見た後に今度は俺の顔を見て再びお互いの顔を見た。
「何でと言われましても…。」
「ねえ…。」
二人だけで納得してんじゃねぇ~よ!全くわからないな。
「ったく…。桜、行くぞ。」
なんだか俺のわからない事を話してる事多いよな。この二人もそうだし、一文字さんとかあと桜のお姉さんとかさ…。
おそらくハブられるのがわかったから俺は桜を置いて先に教室を出る事にした。
ドンッ
「キャッ!」
あ、ヤベッ!
廊下に出たら中を見てた人にぶつかった。
ぶつかって転びそうな人を俺は慌てて支えた。その結果その人…多分桜か椿のファンの生徒は転ばずに支えられた。
ただ支える為に腰に手を回したのはまずったかもしれない。俺嫌われてるからな…。
「ごめんなさい。怪我は無い?」
目の前の女生徒は俺の顔を一瞬見た後下を向いてしまった。
こりゃ顔を見たくないってやつか…。参ったな…。
「どこか怪我でもなさいましたか?」
いつまで経ってもこの口調はなれないな。自分でいいながら背筋に冷たいものが走って歯が浮きそうだぜ。
「はっ、はい!大丈夫です!すいませんでした!」
やっと俺の言葉に反応した女の子は俺に向かって頭を下げると走って行ってしまった。
う~ん…顔が真っ赤だったな。そんなに怒りたくなるほど嫌だったか。会話を自分から切ってどっか行っちゃうくらいだし…。
「あら~。随分とわかりやすい反応してたわね~。」
いつの間に来たのか桜と椿が俺の後ろにいた。
「そうだ…そうですね。ここまで嫌われてるとは…。」
やっぱ大人気の桜や椿の近くにいるのが悪いんかな?それとも得体の知れないやつが生徒会室に出入りしてるからな?
「ま、真。それ本気で言ってますの?」
「本気も何も目も合わせられなかったですし、顔を真っ赤にして怒ってましたし。」
これを嫌われてるって以外にどう解釈しろってんだ?
「(桜、これは重症なのではございませんこと?)」
「(うん…。まさか今のをそうとるとは思わなかった。)」
また二人でなんか話始めたぞ。ひょっとしてファンの子を傷付けたからそれの恨み返しの相談じゃないだろうな…。
これは何かされないうちに逃げとくべきかな。
「桜、先に行きますよ。椿、また明日。」
という訳でとっとと退散しよう。なによりも普通に話ができる状況に行きたい。寒気がする上に舌を噛みそうだ。
「あ、真。待ちなさいよ。椿、待たね。」
「ええ、真に桜。また明日。ごきげんよう。」
俺を追って来る桜と帰る為にに反対に向かった椿。
さて、生徒会室に行きますか。
―・―・―
一人の女生徒が廊下を進んでいた。その後ろには数名の女生徒が後を追うように歩いていた。
やがて先を歩いていた女生徒は立ち止まり壁に手をついた。
後を追っていた女生徒も追いつき立ち止まった。
「ちょっと、大丈夫?」
「いきなり行くから驚いたわよ。」
「で、どうだったのよ。真様の腕の中は。」
追っていた女生徒が口々に質問を投げかける。質問されている女生徒は頬…いや、耳まで真っ赤にして目を輝かせていた。
「ま、真様は…暖かくて…柔らかくて…いい香りがして…はぅ…。」
ブシャーーーーー!
廊下に赤い花が咲いた瞬間だった。
「え、衛生兵!衛生兵を!」
「違うわ!110番よ!」
「それも違うわ!まず保健室よ!」
鼻から血を出しながら恍惚の表情を浮かべる生徒とその周りで慌てる生徒。そして何事かと見に来る生徒。
廊下は騒然としていた…