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偽者

ボーリング場の中はシーンとしてる。…いや、奥からなんか聞こえて来てる。


「連中は奥みたいだな。」


「そうだな。あんだけ嵐が騒いだから入ってすぐにお出迎えかと思った。」


さて、ホントなら慎重に行きたいところだけどそんな事してたら手遅れになっちまうな。


「おい、真。見取図があるぞ。」


あ、ホントだ。暗いけど一応は見えるな。


「ふむ、奥に行く道は2つあるのか。こりゃ好都合だな。」


問題は普通に行くか少し遠回りになる道を行くかだな。


「真は真っ直ぐ行け。俺が遠回りするからよ。」


「理由は?」


「後から行った方が目立つから。」


うん。取りあえず脛に蹴りを一発入れておこうか。


「いてっ!冗談だって冗談!そんなに心配なら早く行きたいだろ!それに少ししか変わらないからそんな遅れねえし!」


そうならそうと普通に言えばいいんだよ。変な事を言うから余計なダメージを負うんだ。


「ならそうさせて貰う。遅れんなよ。」


「おう。じゃあまた後でな。」


お互いに決めた方のルートに向かって走る。警戒?そんなもんする必要無い。仲間が反対から来るのわかってんだから会うのは全員殴っていいやつだ。


まぁ、ある意味嵐も殴っていいやつに分類されるけど。


距離はそんな無い。100m位だし。途中でトイレの前で一人と会ったけど取りあえず殴った。勿論嵐じゃなかったぞ。


そんなこんなでレーンの並んでる所に出た。こ、これは…


「うわ~、いかにもだな~。」


ボロボロのレーンにそこら中に転がってるピン。そして並んでるけど明らかに数が足りないボール。


「あぁ?なんだテメェ?」


そんな感じで見てたら男と目が合った。くわえ煙草で片手に缶ビール。


ってビールかよ。なかなかやるじゃねぇか。ゆ~ちゃんなんか発泡酒で我慢してるのに。まぁソレを買った金の出先なんてロクな事じゃないんだろうけどな。


「なんだと言われてもな…。……じゃあ宅配便屋って事で。」


「あぁ?舐めてんのか?」


誰がお前なんか舐めるかよ。汚らわしい。


「本気だ。荷物の集荷に来たんだけど。」


「そんなもん頼んでねぇよ。」


男は俺に近付いて来た。くはっ、息がヤニとアルコールで臭いぞ!


「寄るな。喋るな。とっとと連れてった荷物を持って来いよ。そしたらなんもしないで帰るからよ。」


「うっせぇ!そんなん知らなっ!」


俺は男の腹に膝を入れた。不意打ちに反応出来ずまともに喰らった男は上体を屈ませる。そんな男の頭を右手で掴んで床に叩きつける。


「喋んなって言ったろ。息が臭いんだよ。」


男には聞こえて無いだろう。なんか顔を床に付けたままピクピクしてるし。


さて、視線を再び場内にもどすと…あ、人がスゲー溜まってる場所がある。


あ、その向こうからなんか走ってくる。


「ライダァー卍キーーーック!」


人の集まりに向かって放たれたライダー卍キックは綺麗に決まって数人を吹き飛ばした。そんで卍キックをしたヤツは背中で着地して俺の方に滑って来た。


…うん、取りあえず踏んで置こう。


「お前は!考え!無しに!そんな事!するんじゃ!ねぇ!」


「真っ!おさえろ!痛い!マジで!悪かった!すまん!」


まぁ予想は付いてたとは思うけど今俺がケチョンケチョンに踏み潰してるのは馬鹿(嵐)だ。


「一文字さんに当たったらどうするんだよ!」


「大丈夫。確認したはずだから。多分…おそらく…。」


こいつは…。なんとなくで蹴りやがったな。まぁ当たってないからいいようなもののさ…。


「お、お前等…なんなんだ。」


あ、そういえばこの馬鹿のせいですっかり忘れてた。


「桂木さん…?」


なんてこった。一文字さんまで目を丸くしてるじゃねえかよ。


「あ、悪い悪い。そこにいる娘返してもらうから。」


未だに呆然としてる一文字さんを指差しながらそう言う俺。


「そんな事言われてそうですかって返す訳無いだろ!」


まぁそうだろうな。俺も聞いてみただけだし。


「それじゃあさ、そっちの代表者と戦って勝ったら返してくれないか?」


多分、これが一番楽だ。相手の人数が結構多いから(嵐が少し減らしたけど)面倒だしな。


俺がそんな提案をするとなんか一人が前に出てきた。身長は嵐よりあるな。190位かな?横幅も結構…いや、だいぶあるな。そんでいかにも悪そうな顔で髪は金髪。ただし根本は黒い。


……こいつがアレだったらイヤだなぁ…。


「姉ちゃん、なかなか面白いじゃねえか。いいぜ、その案に乗ってやるよ。」


そんな返事をするって事はこいつは上の人間なんだよな…。しかもプリンとはいえ金髪。


「こっちの代表は『金色夜叉』のこの俺自ら相手してやる。そっちは倒れてる兄ちゃんが相手か?」


やっぱりコイツかよ…。こんなヤツが金色夜叉を名乗ってるのか…。


「真。ひょっとして俺を呼んだ理由って…これだからか?」


いつの間にか立ち上がった嵐が小さな声で俺に囁いて来た。


「そうかそうか、へぇ~。これが金色夜叉か。」


そんな俺にしか聞こえないような声で言うんじゃねえよ!俺の偽物がこんななのかよ…。


「…相手は俺だよ。」


ようやく復活できた俺は自称『金色夜叉』に向かってそういった。


「姉ちゃんが相手か?女だからって遠慮しないぜ?」


何が楽しいのか笑い出してるし…。なんかスゲームカつく。


「ひょっとして嬢ちゃんは知らないのか?『金色夜叉』って名前をさ?」


…なんだろう。イライラするな、こいつ。


「知ってるよ。だからアンタの相手が俺なんだよ。そんで『鬼』の相手はコイツがするよ。」


嵐の頭を軽く叩く。なんでって肩震わせてやがるから。


「ホントに知ってるみたいだな。おい!出てこい!」


自称『金色夜叉』が声をかけると一人の男が出てきた。


黒い短髪に明らかに日サロで焼いた黒い肌。身長は嵐と同じ位だな。


「そこの兄ちゃんが相手か?まぁいい、この『黒鬼』が相手になってやる。」


「ブッ!」


……思わず吹き出しちったよ。『黒鬼』だって『黒鬼』!


「嵐、『黒鬼』様が相手してくれるってさ。」


嵐は呆然としてる。なんとも楽しい事に超間抜けな顔してるし。


「なぁ…真。『黒』だったっけ?」


「さぁ?あちらがそう言ってるんだからそうなんじゃないのか?」


「真、これも知ってたのか?」


「いや、これは知らなかった。」


「おい!なにコソコソ話してやがんだ?」


俺と嵐がヒソヒソと話をしてるのが気にくわないのか自称『金色夜叉』が怒鳴り声を上げた。


「いや、色々とな。それより無事を確認したいから一文字さんと話をさせてくれよ。」


「そんな事言って連れて逃げんじゃないだろうな?」


「心配ならしっかり見てりゃいいだろ?それともその目にはまってんのは飾りのビー玉か?」


俺は返事を待たずに一文字さんの方に歩いて行く。後ろには嵐が着いて来てる。


「一文字さん。大丈夫か?」


パッと見た感じ殴られた跡は無さそうだ。多少髪が乱れてるのは暴れたからだろう。


「なんで?」


ボソリと小さな声で一文字さんは呟いた。これは『なんで来たの?』って事か?


「俺達は友達なんだろ?だったらダチの危機には出来る事をするのが普通だろ?」


「でも、あれは…。」


「記念の写真もあるんだ。そうだろ?」


撮った写真はしっかりプリントアウトされて俺、桜、椿、一文字さんがそれぞれ持ってる。


「だけど…。」


「ダメダメ、こうなったら真は何を言ってもきかないぜ。」


横からひょっこり顔を出した嵐が口をはさんで来た。


「あなたは?」


「赤井 嵐。真に呼ばれて捕らわれのお嬢様を助けに来た助っ人だ。」


嵐…、この状況でそんなに目をキラキラ輝かせるのはヤメロ。お前が悪役みたいだ。


「助っ人?でも二人じゃ…。」


一文字は微かに震えてる。冷静を装おってるけど怖いんだろうな。まぁ普通の反応だよな。


「大丈夫だ。『赤鬼』が居ればこんな連中二人で十分だ。」


「そうだな。『偽者』なんかに負けられないしな。」


そうそう。俺等が静かになった途端に名前使って悪さするヤツには負けられないな。しかも間違ってるし…。


「赤鬼?偽者?それはどういう…。」


「そのままの意味だ。偽者は偽者で本物の敵じゃないって事だ。」


「おい!まだか!」


おっと、お相手さんが痺れを切らしたみたいだな。


「桂木さん、まさか…。」


「まぁ無事に帰してやっから少し待っててくれ。」


嵐を見て小さく頷く。嵐も頷き返してきた。


「じゃあ話は帰ったら聞く。」


「あぁ、そうしてくれ。」


一文字さんに背を向けて俺と嵐は元居た場所に戻って行った。


さて、偽者を懲らしめるとするかな。

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