呼び出し
俺が今いるのは駅前の喫茶店。いる理由はこれからの所用の為の腹ごしらえと待ち合わせだ。
ちなみに桜は警察に出頭しに行った。………、間違えた。警察に男を連れて行ってもらった。もちろん暴れない様に梱包した上でだ。
そんな訳で腹ごしらえの為目の前の料理を腹に突っ込んでいると携帯が鳴った。液晶を見ると待ち合わせの相手からだった。俺は通話ボタンを押した。
「ん…。ふう…。あ、悪い、着いたか?あぁ、じゃあそこから喫茶店が見えるだろ?そこの窓際の席にいるから。」
そう言って相手の返事を確認して携帯を切った。そして再び料理を口に運び出した。
「おう、真。なんか美味そうなもん食ってるじゃないか。」
そんな事をいいながら俺の前の空いてる席に座ったのは
嵐だった。
「いいだろう。それより頼んだ物持って来たか?」
「ああ。だけどなんで急にコレを持ってこいなんて行ったんだ?優さんに散々聞かれたんだぜ?」
嵐は鞄から袋に入ったある物を出してテーブルの上に置いた。
「理由は今から使うから。電話で伝えなかったのはお前がゆ~ちゃんに言う可能性があったから。」
袋を受け取って中身を確認する。うん、大丈夫だ。ちゃんと入ってる。
「なんだ?優さんに知られたくない事なのか?」
「まぁな。嵐。ついでにもう一つ頼んでいいか。」
俺は袋をテーブルから下ろして嵐をジッと見た。
「真面目な話っぽいな。…いいぜ。俺でよけりゃ力を貸すぜ。」
内容も言ってないのにそんな返事をする嵐。美点なのか汚点なのかは判断が付きにくい所だ。
「嵐、ありがとな。やっぱりお前なら俺の背中を預けられるな。」
実を言うと電話をするときに少し迷ったんだ。嵐に電話するかゆ~ちゃんに電話するか。
結局は嵐を選んだんだけどそれには理由がちゃんとあって、1つは『金色夜叉』って名前が関わってるから。
そんでもう1つはどっちなら背中を預けられるかだ。これがゆ~ちゃんだと『お互いのフォロー』じゃなく『ゆ~ちゃんのフォロー』になりそうな気がするんだ。
一方の嵐は不本意ながら付き合いも長いし散々二人で無茶してきたから遺憾ながら連携力もある。
だから一瞬迷って嵐に電話をしたんだ。
「なんだ?やっぱり荒事なのか?」
俺は鞄から一枚の写真を出して机の上に置いた。
「おぉ!可愛い娘ばっかじゃねえかよ。なんだ?こっちの友達か?」
なんでコイツは写真だけでこんなに興奮してるんだろう?まぁこんだけ興奮してるならヤル気も出るだろう。
俺は写真の一部分…一文字さんの顔を指差す。
「この娘なんだけど…。」
「この娘か?なんかクールな感じがする娘だな。んでこの娘がどうしたんだ?」
「連れてかれた。俺の目の前でな…。んで、嵐。お前にその為に力を貸して欲しいんだ。」
「いいぜ。お前のダチなんだろ?だったら力を貸すさ。」
やっぱ話を持ちかけたの嵐でよかったな。ゆ~ちゃんだと何を要求されてたかわからないからな。
「んで、真。この娘がどこに連れて行かれたかわかってんのか?」
「あぁ。仲間の一人が快く答えてくれたよ。」
嵐、なんでそんな『ご愁傷様』みたいな顔をしてんだ?
「なぁ、真。ホントに快くなのか?」
「ああ。物が無かったから何もできなかったしな。」
「って物があったらヤル気だったのかよ!」
「そりゃあな。話してくれなかったらやってただろうな。桜も止めなかったし。」
まぁ止めたとしても状況が状況だったからやってたかも知れないけどな。
さて、食う物も食ったし、嵐からブツは受け取ったし。
「取りあえず行くか。嵐、準備はいいか?」
「あんまりよくは無いけどそれどころじゃないんだろ?」
「勿論。」
嵐からもらった袋を手に持って席なら離れる。後ろで嵐も立ち上がったのがわかった。
さて、救出に行きますか。