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拉致と尋問

「たくさんの情報ありがとね。これはお礼よ。」


そういって渡された缶コーヒーを一気に飲み干して空になった缶をゴミ箱にぶちこみ桜に指を一本突き立てる。


このジェスチャーが現す事は至極簡単だ。つまりは『one more』。短時間で話をし過ぎて喉が渇いちまった。


「しょうがないわね。まあいいわ。有益な情報ばっかりだったし。」


自販機に硬貨をいれもう一度同じボタンを押すとガタンという音と共に取り出し口にコーヒーが出てくる。それを取った桜はそのコーヒーを俺に投げてきた。


「おっと…。」


驚きながらそれをキャッチして一口飲む。


「ブッ!」


そして瞬間で噴いた。


「甘ぇ!」


そう、渡されたコーヒーは尋常じゃなく甘いコーヒーだった。


ぬぉぉぉぉ…。甘さが脳髄を駆け上がる…。そして甘さが歯にズキューンと来やがる。


「ちょっと!いきなりなんなのよ!汚いじゃないの!」


「うっさい!ブラックの後にこんな甘いコーヒーを寄越すな!不意打ちもいい所だ!」


「あ、ゴメン。押し間違えてたわ。」


ホントに間違えたんだろうな?これが故意だったら許さないぞ。


「まぁいいじゃないの。それより次はどこに行く?」


どこに行くって言ってもな…。別に行きたい所があるわけじゃないし…。あくまで目的は探索な訳だし。


「任せる。桜がよく行く所でいい。」


「私のよく行く所?う~ん…、いいわ。じゃあ付いて着て。」


クルリと背を向けて歩き出した桜。俺は言われた通りその後ろに付いて行った。







「ここを抜ければ本屋があるんだけど。」


大きな通りを歩いてた桜が止まりビルの間の道を指差す。なんて言うかTHE路地って感じの道だ。


「なんか人が絡まれてたり倒れたりしそうな道だな。」


「いやいや。確かにそんな感じだけど今まで一度も見た事無いわよ。」


そっか。そうだよな。そんな事がそうそうあるわけないよな。


「・・・・・!」


…………。


「桜。なんか言ったか?」


「私は何も。真じゃないの?」


首を横に振って桜の発言を否定する。あぁ、つまりコレはアレなのか…?


「フラグ立っちゃったって事か?」


ちゃんと聞いてみれば声はこの路地の先から聞こえてる。いや、わかっちゃぁいたんだ。ただそれを現実と認めたく無かっただけで…。


「取りあえず言って見るか?」


「そうね。ここ通らないと本屋行けないし。」


いや、本屋は別にな…。何してんのか興味があるっていうか好奇心というか…。どっちも意味は同じだな。


「ほら、行くよ。」


気付いたら路地に入ってる桜。お前、意外とヤル気十分なんじゃねぇか。


そんな桜に続いて路地に入って歩くと声が少しづつちゃんと聞こえるようになって来た。


『…ら。いいだ…。』


『…………。』


『そ…事言わないでさ。』


『…………。』


男の声が複数聞こえるけど相手の声は聞こえないな。なんか会話をしてるっぽいけど。


さらに近付くにつれて段々と声が聞こえてきた。


『ちょっと位いいだろ?』


『嫌。』


『いいじゃん。楽しもうぜ~。』


『興味無い。』


素晴らしいまでの一刀両断だな。そんでさっき声が聞こえなかったのはそんな大きな声で話してないからだったのか。


「この声は女の人よね?」


「そうだろうな。少し低音だけど女の声だな。」


どんな娘がどんな奴等に絡まれてるのか俄然興味が出てきたな。


『あんまり手荒な真似はしたくないんだけどな~。』


『何するの?』


なんだか雰囲気が怪しくなってきてるぞ。


「桜。こっそりゆっくり急げ。」


「ゆっくり急ぐってどうやるのよ。」


さぁ?俺が聞きたい位だ。もしやり方を知ってるなら教えてくれ。


『おい!おさえろ!』


『へい!』


向こうから人の動く足音が聞こえる。こりゃマジでヤバくないか?


路地の向こうからは人が動く足音が聞こえて来る。


「桜。とにかく急げ。」


「わかってるわよ!」


前を歩いていた桜も様子に気付いたのか走り出した。俺もその後に続く様に走った。


「居た!」


桜は現場を視界に捉えたみたいだ。俺からは見えないけど…。桜、ちょっと邪魔!


「おい!なんか来やがったぞ!」


「野郎共、逃げるぞ!」


まぁそりゃ見つかるよな。男達は逃げようとしている。


「あ、幸!こら!幸を離しなさいよ!」


幸…?って一文字さんかよ!


桜が態勢を低くしたから前が見える様になった。男が4~5人いるのが見えた。そんでなにかを抱える様に持ってる。距離は相当近い。


「にゃろ!」


俺は靴を片方脱いで男達に向かって投げた。もちろん桜には当たらない様に。緊急事態だ、文句は後で聞く事にする。


「がっ!」


靴は最後尾を走っていた男に当たって男は転けた。


桜は転けた男を飛び越えて集団を追った。


俺は走りながらジャンプして男の背中にフットスタンプを決める。


「ぬぁっ!」


うん、ジャストミート!ただ着地に若干ミスって俺は男の背中から滑り落ちたけど。靴が片方無いからバランスが悪い。


「待ちなさいよ!」


「あいつが居ないぞ!」


「いいから乗れ!追い付かれるぞ!」


そんな声の後に車が走る音が聞こえた。流石に車じゃ桜も無理だろうな…。こりゃこいつを逃がす訳にはいかないな。


俺は男から降りて悶えてる男を見下ろす。


「逃げられたわ。」


予想通り桜は逃げられたみたいだ。まぁ車に追い付けたら人間じゃないからな。


男は桜の声で自分が置いてかれた事に気付いたのか体を反転させて周りをキョロキョロと見出した。


「なんだ、女かよ。お前等、俺が誰だかわかってんのかよ。」


俺達が女だとわかると男は少し冷静になったのか強気になりやがった。


「それは気になる所だな。アンタはどこの誰なんだ?」


これからの事を考えると知っておかなきゃならない事だからな。男を見下ろしたまま俺は尋ねた。


「あ、桜。俺の靴持って来て。」


こいつから目を離す訳には行かないから桜に頼む。足が汚れるしバランスが悪いのは何かと不都合だ。


「女が調子に乗ってんじゃねえぞ!」


多分、俺の態度が気にくわないんだろう。男が立ち上がろうとした。


「誰が立っていいって言ったんだよ。」


上体を起こした男の側頭部にローキックを入れる。勿論気絶させない程度の強さで。


男は蹴りをまともにくらって転がって頭を抑えながら痛がってる。


そんな男の上に馬乗りになって再び男を見下ろす。


「質問に答えろ。アンタはどこの誰だ?」


「ち、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」


男は俺を睨み返してくる。…ふぅ。ヤレヤレ…。


「あ、真。靴。」


「おう。サンキュー。」


桜から靴を受け取って履く。勿論その間にも男を逃がす様な真似はしない。


「あと桜、針とペンチ持ってないか?」


「無いけど…。何に使うの?」


桜が若干怯えた顔で俺を見てる。いやいや、桜がそんな怯える必要な無いだろ。


「コイツに赤いマニキュアをしてやってから剥がす。」


俺の下から小さな悲鳴が聞こえた。コイツはなんだかわかったのか?それとも剥がすってのに反応したのかな?


「じ、冗談だろ?」


「本気だ。本当ならテメエみたいな奴の叫び声なんか聞きたく無いんだけどな。」


「そんな事お前が出来る訳ないだろ!」


強がってるけど俺にははっきりわかるぞ。アンタが小刻みに震えてんのがさ。


「だったら試してみるか?出来るか出来ないか?」


俺はニッコリと笑いながら男に聞いた。桜が後で言ってたんだけどこの時の俺はかなり怖かったらしい。桜はあまりの怖さに3歩位下がったらしい。


「は、話す!話すから勘弁してくれ!」


男は目に涙を溜めて…ってより少し流しながら鼻声で懇願して来た。


「じゃあ話せ。アンタはどこの誰でなんの後ろ楯があるんだ?」


馬乗りになったまま笑顔で尋ねた。


「お、俺のグループのトップは…








金色夜叉だ。」


……………。


「悪い。もう一度言ってくれ。」


何を言ったのか理解出来なかった。


「トップは金色夜叉なんだよ!俺を離さないと酷い目にあうぞ!」


……。あぁ聞き間違いじゃなかったんだな。コイツ等のトップが………俺?


「何?あの悪名高い金色夜叉なの?」


「ブッ!」


あ、悪名高いのか?俺は悪名高いのか?


「…で、アイツ等はどこに行った?」


「潰れたボーリング場だよ!もういいだろ!離せよ!」


潰れたボーリング場か。まぁ探せばすぐにわかるだろう。


「ありがとよ。」


後はコイツを警察に渡しゃいいな。


俺は馬乗りの態勢のまま左右の掌底を一発づつ顎にいれた。


男はそれをまともにくらい意識を手放した。


「桜。警察呼んでこいつ渡して。」


「真はどうするのよ!」


俺?そんなわかりきった事聞かないでくれないかな?


「ちょっと所用ができちまったからさ。」


俺は携帯を取り出してある人物に電話をし出した。

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