歓迎会【4】
今、控室は大混乱につつまれている。混乱の原因は来客の3人。そしてその周りにいるたくさんのメイドさん。
そんな中居る意味のわからない人物が1名。…まぁ俺なんだけど。
「真~。壁なんか見てないでこっち見たら~。」
「まこっちゃんダメだよ!」
「真くん。もう少し待っていて下さい。」
壁を見てる理由は至極簡単で着替えてるからなんだけどな。さすがに見れないよな…。
そんな訳で俺は壁をジーッと眺めてる。ハッキリ言って退屈だ。話相手でもいれば別なんだけどドリルは会場に戻ったし、桜はこっちに顔を出してもいない。多分まだ囲まれてんだろう。そんでメイドさん達は忙しそうで話かけられない。つまりはどうしようも無いって事だ。
さっき暇すぎて
「先に行ってる。」
って声をかけたら
「待ってなきゃ殴る。そんで蹴る。」
っていうありがたいお言葉を頂いてしまって逃げられない。う~…暇だ~。
「あ、桂木さん?」
ん?みんな忙しいのかと思ったら声をかける人が。丁度いいや。この人と話してよう。
「はい?」
俺は声のした方、後ろを向いた。
「「キャーーーー!」」
や、やべっ!着替えてたんだった!こいつはうっかりだ!
俺は速攻で元の姿勢に戻る。
「真、見損なったわ。」
ゆ~ちゃんまで!からかいとは言え散々俺にこっち見ろって言ってた癖に!
「あ…、ごめんなさい。」
声をかけた人は謝りながら後ろから横に移動してきた。
「いえ…、下がるんで前に来てもらえますか?」
現在、俺と壁の間に人が入れる隙間はない。俺は自分で言った通り3歩程下がりスペースを作る。そうしたらお願いした通り俺と壁の間にメイドさんが入ってきた。…あれ?この人って…
「さっきホールであったよな?」
「はい。よくおわかりになりましたね。」
そりゃあのホールの中で俺に声をかけた数少ない人だからな。後の人は声かけてくれなかったし…。
「みんな俺を見てるだけで声をかけてくれなかったから。」
アレは意外と傷付いたな。おそらく「たいした事ないヤツ。」とか「桜とドリルに近付き過ぎ。」とか言われてんだろうけどな。そういう事はコソコソ言わないでハッキリ言ってもらいたいもんだな。
「それは話かけられなかったんだと思いますけど…。」
「ん?なんか言ったか?」
なんかモゴモゴと言ってたけど聞き取れなかった。
「いえ、なんでもありません。それより桂木さんも着替えませんか?」
そう言うメイドさんの手には一着の服。おぉ、そうだ。そういえばもう一着あるんだった。
「そうだな。あっちの3人もまだ時間かかりそうだし俺も着替えるかな。」
メイドさんから服を受け取りながら俺はそう言った。さて…着替えるにあたり問題があるんだけど…
「もしよかったら着替えるの手伝ってもらえますか?この服どう脱いだらいいか全然わからないんで…。」
これはしょうがないと思う。着た時はメイドさん達が着せたからな。しかも俺はいままでこんな服着たことないし。
「ええ。構いませんよ。」
メイドさんは俺がそう言うってわかってたんだろう。軽く笑いながらあっさり了承してくれた。
「私達がこの服に合うような姿にしてあげますから。」
いつの間にかメイドさんが増えてる。しかもみんな笑顔だ。その笑顔が若干怖い…。無事にいられるよな…。
「お、お手柔らかに…。」
「妥協はしませんよ。」
ヤル気十分だ。多分凄い事になるだろう。…着替えるなんていわなけりゃよかったのかな…。
メイドさんは俺の手をガシッと掴んだ。よ、予想以上に力強いぞ。って痛い痛い…。逃げないからそんな強く掴まないで…。