歓迎会【3】
3人からの視線が痛い…。3人共視線が同じ事を物語っている。
『あなたは誰ですか?』
呼んで置いてそれはないんじゃないかな?
「呼ばれたから来たんだけどさ。」
3人は俺の顔を見たまま固まった。そして同時に口を開いた。
「真?」
「まこっちゃん?」
「真さん?」
なんで3人はこんなに驚いてんだ?
「そうだ。姫ちゃんに俺を呼ぶように言ったんだろ?」
まぁおかげであの居づらい空間から逃げれたんだけどな。
「それで俺が誰だか3人が理解した所でもう一回聞くけど何をしにきたんだ?ゆ~ちゃん、巴、麗さん。」
そう、目の前にいる3人は霞ヶ崎学園での担任であり我が姉のゆ~ちゃんとガキの頃からの付き合いの巴。そして霞ヶ崎学園の生徒会長の麗さんだ。
「いや~真。化けたわね。」
「うん。まこっちゃんだってわからなかった。」
「それにそのドレスもとてもお似合いですよ。」
3人が各々の感想を同タイミングで述べる。えぇ~い!俺は聖徳太子じゃ無いんだ!一気に言われても聞き取れないぞ!
「まずは質問に答えてくれ。ここに来た理由はなんだ?」
そんな質問をするとゆ~ちゃんが鞄から封筒を3つ出した。
「ここの生徒会長から招待状をもらったのよ。よろしければって3枚ね。」
招待状?それじゃ立派なお客様なんじゃないか。
「私はついでに母さんに頼まれた写真を撮りにきたのよ。」
「私はこちらの生徒会長とお話をしに参りました。」
「私はまこっちゃんが心配で…。」
ふむふむ…3人ともなんらかの理由もあってなんだな。
「しかしよく嵐が来たがらなかったな。」
女子校内に入る絶好のチャンスだってのに珍しいもんだ。
「……………。」
な、なんだ!巴と麗さんが俺から目を逸らしたぞ!そしてゆ~ちゃんがメッチャ笑ってる!
「嵐くんは行きたいなんて『言わなかった』わよ。」
その笑顔がすっごい怖いです。嵐になんかあったのか?
「あ、嵐は…。」
「最後まで勇敢でした…。」
嵐~~!星になったのか~~~!空を見上げると星になった嵐が…………あ、太陽しか見えないや。まぁ来たとしても殴って追い出すけどな。あんなのが来たら恥だしな。
「んで嵐は捨てて置いて構わないけど、3人共中に入るのか?」
親指を立ててクイクイっと後ろを指差す。後ろには歓迎会を絶賛開催中のホール。
「入るけどあんたみたいな服じゃないとダメなの。」
「どうやら面倒な事にそうらしい。あとゆ~ちゃん、普通に煙草をくわえないでくれ。当然の様に禁煙だ。」
禁煙にしてるのは俺じゃないんだ。『チッ』とか舌打ちしながら睨まないでくれ。マジで怖いから。
「私達そんな服持ってないよ。」
そりゃそうだろうな。普通に生活してる分にはこんな布みたいなのは必要ないからな。
「中にヤバい量あったから大丈夫だと思う。一応確認してみるけど。」
携帯をポーチから取り出して電話をかける。さて、まだ囲まれてるか?だとしたらまた面倒なんだけど。
そんな心配は杞憂だったみたいだ。4回目のコールで相手は電話にでた。
『もしもし、真。今どちらにいらっしゃいますの?』
「外だけど?」
なんかちょびっと怒ってないか?おっかしいな~。
『あなた。今日の立場わかってまして?あなたは主役なのでしてよ。』
「悪い悪い。ただ、ほら。俺に客が来たからさ。姫ちゃんから聞いてないのか?」
『姫宮先生でしたらケーキを大量に抱えて幸せそうに食べてますわ。』
な、なんてこった…。伝言を伝えずにケーキの誘惑に負けたか…。
『とりあえずいまからそちらに行きますわ。』
「わかった。出てすぐの樹の所にいるから。」
ピッ…
携帯を切りしまうと俺は大きく息をついた。…姫ちゃん…、予想以上だぜ…。
「ま、まこっちゃん?どうしたの?」
そんな俺を見てか巴が心配そうに俺に声をかけてきた。
「いや…、まさか伝言をミスるとは思わなくてな。」
「そりゃ誰かの付き添いで来た子供に頼むからでしょ?あんな子供が真を連れてきただけで上出来なのよ。」
ゆ~ちゃん…、言いたい事はよくわかる。だけど一つ間違ってるんだ。
「ゆ~ちゃん、あのチビッコはここでの俺の担任だ。」
3人は静かになり俺をジーッと見てくる。…あんたらの気持ちはよ~くわかる。
「それはビックリかなにか?さすがにあんなわかりやすいのには引っ掛からないから。」
ハハハハ…って笑ってるゆ~ちゃん。アンタの反応は俺と全く俺と一緒だ。
「ビックリでもなんでもないらしい。遺憾ながらホントに教師らしいんだ。」
「ち、ちょっと!あんなの経歴詐称でしょ!文〇省はなにを考えてんのよ!」
あぁ…やっぱり俺とこの人は血が繋がってんだな。リアクションがホントに同じだ。
「〇部省の考えなんか知るか!俺の話で信用出来ないなら今からくるヤツにも聞いてみりゃいいだろ。同じクラスのヤツだから。」
「そうね。そうさせてもらうわ。」
これで矛先は今からくるドリルお嬢様に向いたな。後は頼んだぞ。




