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転校前


『桂木さんの日常』の続編です。あいかわらず駄文ですがよろしくお願いします。



『日曜日の13時に生徒会室に来てください。』


これが担任であり姉のゆ〜ちゃんが伝え忘れていて電車内でメールで伝えて来た事だ。


時間的に考えても駅から直接行かなければならないのは確実だ。


教師として絶対にやる気がないのは確実だ。


…ホントは荷物整理してから事務手続きしに行きたかったんだけどな…。


ってそもそも制服のある学校に私服で入っていいんか?制服衣類と一緒に梱包して送っちまったぞ。…う〜ん……。まぁいいか。学園生活開始前から遅刻はシャレにならないだろうしな。


さてさて…地図を片手に宝華学園には着いたけど…事務室はどこだ?


まわりを見ても案内板は無しか。って事は誰かに聞かなきゃだよな…。日曜の昼時に誰かいるかが問題だな…。


やっぱ日曜だから誰も歩いて無いしな。さて、どうしたものかな…。


「お〜い。」


こうなりゃ勘で探すっきゃないか?時間に間に合えばいいんだけど。


「聞こえてる〜?」


とりあえずは校舎に入ってからだな。どう考えても外に事務室があるとは思えないし。


「無視しないで〜!」


ぬおっ!なんだ!いきなり叫ばれたぞ!キョロキョロと探すと後ろに人が一人…。


「あ、やっと気付いてもらえた。」


…なんでこの人は金属バットを振り上げてるのか気にはなるところだ。


「えっと桂木さんですか?」


俺の名前を知ってるって事は宝華の人か?多分そうだよな。これでストーカーとか言ったらビビるけど。


「はい、そうですけど…。あなたは?」


一応それらしい言葉使いをしないとな。スッゲー面倒だけど…


「あ、失礼しました。私は宝華学園生徒会の甲野【こうの】と言います。桂木さんをお迎えにあがりました。」


生徒会の人か。つまり生徒会の人は金属バットを常備してるという事か。奥が深いな。


「ご親切にありがとうございます。」


「いえ、では生徒会室にご案内しますので着いて来て下さい。」


俺を先導する様に歩く甲野さん。金属バットをカラカラいわせながら引きずってんのが若干気になるけど俺は後ろに着いて行った。


そしてある事に驚いた。


涼しいんですけど!校舎に冷房とか入ってるし!ヤバいって!


「質問していいですか?」


「はい、なんでしょう。」


甲野さんは足を止めて俺の方を向いた。


「校舎に冷房があるんですか?」


「ええ。当然じゃないですか。」


イヤイヤイヤイヤ!当然じゃないから!精々教室までだから!


驚く俺を気にせず甲野さんは再び歩き出した。お嬢様学校ってのは冗談じゃないらしいな。そもそも廊下に絨毯がひいてある段階でおかしいとは思ってたけど…


暫く歩くと甲野さんの足が止まった。金属バットを傘立てに置いてまた俺の方を見た。


「ここが生徒会室です。では入りましょう。」


甲野さんに続いて俺は生徒会室に入った。そこで俺は再び驚かされた。


「いいから通せ!」


「無理。」


なんていうか闘ってた。一人の武器はデッキブラシ。もう一人は箒。そんな中に入って来た俺。


「無理じゃない!必要経費だったのよ!」


「ならデザートは必要無いはず。」


デッキブラシと箒を打ち合いながら舌戦を繰り広げる二人。中にいる人は……達観した目で見てるな。つまりいつもの事なんだな…。


「二人とも止めてください。」


甲野さんが止めるも二人の動きは激しさをますだけだった。


「そんな器が小さいから胸も小さいのよ!」


あ、箒の方の動きが止まった。しかも室内の人が退避しだした。みんな扉の方に…。


「桜…あなたは私を怒らせたわ。」


箒を持っていた人が顔を上げた。ギラリと両目を輝かせてデッキブラシを持っている人を睨んだ。


って怖いって!ヤバいオーラ発してるから。


「やばっ…。」


デッキブラシの人が一歩下がる。どうやら箒の人にとって胸の話は禁句らしい。確かに大きく無いな。多分、舞といい勝負なんじゃないかな?


「あぁ…。こうなった幸さんを止められるの会長だけなのに…。」


甲野さんは室内に居た人達を見る。みんな首を横に振ってる。


「会長は職員室に…。」


誰かが小さな声でそう呟いた。甲野さんはため息をついて項垂れた。


「いいわ。あんたとは決着【ケリ】をつけたかったのよ。」


デッキブラシを持っていた人は柄を握りしめて構えた。やる気だぞ、おい!


「甲野さん…。止めたらいいのですか?」


俺は小さな声で隣にいる甲野さんに尋ねた。甲野さんは二人から目を離さず頷いた。


「多少手荒くなっても?」


甲野さんは再び頷いた。


俺はそれを見て一歩前に出た。鞄は下ろして足元に置いて右手に近くにあった書類だと思われる紙の束を手にとった。


「あ、桂木さん…。」

後ろから甲野さんの声が聞こえた。俺は開いてる左手をヒラヒラと軽く振って返した。


そんな事をしていると二人が動いた。


「殺す。」


「やってみろや!」


お互いが得物を振り上げた。俺はその二人の間に向かって右手に持ってた紙束を投げた。


紙はバラバラになりながら二人の間に舞った。


「あんだ、こりゃ!」


「くっ。」


二人の視界が紙でいっぱいになる。その紙の中に俺は飛び込んだ。


飛び込んだ勢いで回り右の肘を箒の人の側頭部に叩きこむ。


手応え抜群だ。俺は肘に感触を得たまま振り抜きそのまま体を回す。そして左足を跳ね上げて逆回し蹴りの形で踵をデッキブラシの人の顎先に向ける。ブラシの人はブラシの柄で防いできたがおかまいなしに振り抜く。バキッって音の後に人体に当たる感触が足に伝わる。


そして慣性でクルッと一回転して俺は動きを止めた。


紙が舞散る中、箒の人は膝をカクンと落とし座る様に倒れる。一方デッキブラシの人は折れたブラシを持ったまま壁に当たり倒れた。


やり過ぎた…かな?


チラッと見るとみんな呆然としてる。


やり過ぎたっぽいな。ってよりやり過ぎたよ…。形的には代表なんだよな、俺。


『霞ヶ崎学園の代表生徒。転校前日に宝華学園生徒の2人に暴行。』


こりゃなかなかスリリングな見出しだな。ハッハッハ…ハハハハハ…。ハァ…。


パチ…パチ…パチ…。


なんだ?幻聴か?手を叩く音が聞こえる。しかもこれは余裕のある大人な拍手だな。


パチ…パチ…パチ。


また聞こえた。って事は幻聴じゃないのか?俺は音の発信源の方を見た。


そこには確かに手を叩いてる人がいた。この人は一体だれだ?


「あ、会長。戻られたのですか?」


会長!?うわっ!生徒会長の前で殴り倒してたのかよ。


…平和な学園生活は消えそうだな…。下手すると転校前に強制送還だな…

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