〇瑠璃村再びの異変
縁側では猫じゃらしでハルアキは神獣白虎フースーの眷属黒猫のミケーレと遊んでいた。
オオガミとの修行も今日はお休みだ。大山崎へドーマとオオガミはタウロも連れてスタウトビールの製造をするとかでお出かけだ。
そこへ見知らぬ町人がやってきた。
「あの、タウロさんという方はこちらでよろしいでしょうか」
「すみませんちょっと留守をしているんですが何か御用ですか?」
「瑠璃村で都へいくと言ったらこの手紙を預かってきたのですが、代わりに受け取ってもらえますか」
と言って紙切れを一枚差し出してきた。
「じゃあ、お渡ししましたので私はこれで」
そう言って去って行ってしまった。
そこにタマモが来てハルアキから手紙を奪い取ってしまた。
「だめだよ。人の手紙を勝手に読んじゃ」
「いいじゃない。封筒に入っていないんだから、急用だったらいけないでしょ」
聞く耳を持たずに読んでいる。
「あら、ミーノちゃんってタウちゃんのお友達よね。その子からよ。なになに、あら大変、ハルちゃんも読んでみて」
手紙を戻してきた。
元気にやってるだかタウロ、おらは元気にピッツアを毎日作っているだ。
さっそくだが、瑠璃村の近くで異変が起きてるだ。今は何も被害は出ていないがおらは心配だ。
あの山賊のアジトの後に妙な塔ができただ。
調べに来てくれないだか。
ミーノ
「これは一大事だよ。タウロとドーマさんに知らせなきゃ」
「私たちで調べない」
タマモの悪い癖だ。何でもすぐに首を突っ込んでくる。
「フーちゃん!お出かけしよう」
フースーを呼んでいる。この二人はすぐに暴走してしまう。この間も危ない目にあったばかりなのに、でも僕には止められない。
「わかったよ僕も行くよ。ピコーナ、この手紙をタウロに届けて戻ってきてね。先に瑠璃村まで向かうけど追ってこれるよね」
「父、伝書鳩だねピコ。あとで追いかけるピコ」
手紙を持って飛んで行ってしまった。
「タマモなんだにゃ。何か面白いことがあるのにゃ」
タマモが説明をした。
「面白そうなのにゃ!探検にゃ」
飛び跳ねている。
なんだか頭痛がしてきた。僕にコントロールできるかな。
「ハルちゃん瑠璃村まで案内してよ」
「案内してにゃ」
「にゃーん」
「ミケちゃんまで、わかりました。早く準備して」
三人と一匹は瑠璃村へと向かった。
瑠璃村への道半ばでピコーナが追いついてきた。
「父、タウロに手紙渡してすぐに戻ったピコ」
「ドーマさん何か言ってた」
「会わなかったピコ、工場の中にいたピコ」
「タウちゃんが話すでしょ。早く行こうよお腹減っちゃったよ。ピッツアがあるんでしょ」
食い気の方に意識が行ってるな。
瑠璃村温泉郷へようこそ。
看板が見えてきた。
真っ先にミーノの店、”石窯タウロ焼き屋”へ向かった。
「ミーノさーん」
厨房からミーノが現れた。
「これは坊ちゃま、こんなに早く来てくれるとは、タウロは」
「もう少し後で来ると思うけど、紹介しておくね。タマモさんとフースーさん」
「あら、タウちゃんの色違いじゃない。タマモよ。よろしくね」
「フースーにゃ、何か食べさせて、ペコペコにゃ」
「これはようこそ瑠璃村へ、すぐにピッツアを焼くだで待ってくんろ」
「もう、二人とも先に話聞かなくっちゃ」
ピッツアを作るミーノのところへいった。
「ねえ、詳しい話聞かせてミーノさん」
忙しく手を動かしながら
「三日ほど前だで、地鳴りがして何事かと思い辺りを調べたら見つけただ。真っ黒な五重塔が山賊のいた砦跡にできていただ。今は何も起こってないだがタウロのところの法師様にご連絡をと思っただ」
木べらで石窯にピッツアを入れるミーノ
「僕たちが調べるから安心してね」
「ありがとうだ。頼んだ」
皿を三枚器用に持ち店のテーブルへ運んだ。
「お嬢さん方お待たせだ」
「うわ、美味しそう。なんか飲み物ある」
「白葡萄酒があるだ」
「それ瓶ごと持ってきてね」
二人は酒盛りを始めてしまった。ちょうどいいかも一人で下見に行こう。二切れほどピッツアを食べると
「僕が一人で見に行くからここでゆっくり食べててね」
「待つにゃ、ミケーレ、お手伝いするのにゃ」
「にゃーん」
ミケーレが付いてきた。猫の手も借りたいというが本当に役に立つのかな。
ハルアキは山賊の砦跡にピコーナとミケーレと共に向かっていった。
「おっ導魔坊のお嬢さん、奇遇だな」
ツキノワが石窯タウロ焼き屋へ入ってきた。
「ツキノワのおっちゃん、どうしてここへ?」
「温泉に浸かりに来たんだよ。ここの湯はいい」
「フーちゃん、食べ終わったらお風呂に行こうか」
すっかり目的を忘れてしまっている。
「あれ、ほかにもいるのか」
テーブルの上の様子を見てツキワノが問うた。
「ハルちゃんが調査に行っちゃたんだけど知り合いだったよね」
「あそこへ行ったのか。ゆっくり一緒に呑みたいがちょっと先に風呂に行ってくる」
ツキノワも村を出ていった。




