●マサカド
シーモフサルト城の大結界の前に立つハルトとオオガミ
「しかし頑強な結界だな。このまま封印してしまえばいいんじゃないか」
「大切な仲間の命で作り上げた結界だ。加えておれの魔力が常に注がれ続けて簡単に解けないようにできているが、なにごとも終わりがある。しかし、今マサカドを倒しておかないと未来はない」
むくつけいしむつかるのろい
解呪
城の結界がはじけ飛んだ。
「行くかハルト」
「ちょっと待て」
ひさかたのあまにつどえし
かげほしくずの
とがかぎりあるみちふりそぶれ
流星
空から無数の隕石が城に降り注いだ。跡形もなく崩れ去るシーモフサルト城。
「まったく、化け物だな。なんて極大呪文だ」
あきれるオオガミに
「このくらいでやられるようなやつじゃないだろう。城にいる魔族を掃除しただけだ」
ハルトはアイテムボックスから一振りの剣とからくり人形と取り出した。
「なんだその木製の人形は?」
「コピーロボットだよ。鼻は黒くないが」
「こぴーろぼっと?鼻が黒い?」
オオガミにはわからない冗談だ。
ハルトが人形と頭を突き合わせると動き出し剣を取った。
「オーディンの馬と呼ばれるユグドラシルの木で作られた木偶だ。俺の能力をコピーして、俺が念じるままに動くからくり人形だ。かなり強いぞ」
ハルトは人形に陰陽の仮面を取り付けた。
「御大将のお出ましだ」
オオガミが声を上げた。
城の残骸が空に向かい噴き出す場所があった。
「オオガミ、剣を見せろ」
オオガミ、人形そしてハルトが剣を並べた。
電離
「これは?」
「プラズマブレードだ。剣の切れ味を高めた。これでやつの鎧も紙のように切り裂けるはずだ」
光る剣をオオガミが振り回すとブォーン、ブォーンと音を立てた。
「前にお前がマサカドに切られたとき、やつの剣にも同じ魔術がかかっていた。これで互角だ」
瓦礫に紛れて飛び出したマサカドがハルトに切りかかった。
折れたクラウドソードで受けるや否や、後ろからオオガミが切りかかった。マサカドは振り返りもせず、後ろ手に盾で受けそして、まるで無重力空間にいるがごとく飛び退く。
そこへからくりが走り近づき剣を交える。ハルトも駆け寄った。二人がかりで切りつける。シンクロする二人の剣技、四本の腕があるがごとく襲い掛かっていく。
マサカドは盾と剣で防ぐが兜を真っ二つに割られた。こらえきれずに後ろに飛び退くマサカド、待ち受けたオオガミが一撃を放つ。鎧に食い込むオオガミの剣だがその腕目がけてマサカドの一太刀が襲った。
オオガミの両腕は切り落とされたが鎧を砕いた。マサカドは砕けた鎧を捨て去り盾と剣を構えなおした。
その後ろからオオガミが二の腕だけで羽交い絞めをした。
「ハルト今だ!!」
あまびこの
おとをまゐらすわりなしの
さがなしものにさながらうす
雷撃
雷撃がマサカドとオオガミに降り注いだ。
反射
マサカドの盾が鏡と化した。そして雷撃がハルトに直撃をした。
「ハルト!!!」
叫ぶオオガミの背後からからくりがオオガミごとマサカドを貫いた。
口から血を吹きだすマサカド、からくりは突き刺したままの剣を捨て去り。オオガミの剣を取りマサカドの正面から一刀に振り下ろした。袈裟懸けに刃は心臓を振りぬけた。
オオガミはマサカドの躯を払いのけハルトの元へ駆け寄った。
そこには目を見開きピクリとも動かないハルトがいた。